殴るぞ

色々と思いっきり話します。

賞賛の裏で

 さて、なでしこジャパンの連覇という夢は潰えた昨日の決勝。2-5という大差での敗戦。ライバル国であるアメリカという壁を高く感じる結果となったわけだ。しかし、日本のメディアは挙って彼女たちを賞賛する。「感動をありがとう」。これはしばしば感じていることだが、ぼくはこの言葉が嫌いな人間なのだ。性格がねじ曲がっているからかもしれないが。

 大きな舞台で及ばなかった選手たちに労いの言葉をかけること、確かに大切だ。現に今回のなでしこジャパンも決して順調に勝ち進んだわけではなかった。オーストラリア戦やイングランド戦はいずれも延長戦にもつれ込んでも何一つおかしくない試合であったように、手に汗握る接戦で感動をしなかったわけではない。けれど、どこか批判を恐れているような。敢えてそのような言葉を置くことで、批判的な言葉を言わないようにする牽制的な意味合いにも感じてひどく気味悪く感じてしまったのだった。

 繰り返すが、感動をしなかったわけではないのだ。なでしこの選手たちは何一つ悪くないし、佐々木則夫監督も主要国際大会3大会連続決勝進出させた手腕は賞賛されるべきだろう。自分の記憶の中でも男子のビセンテ・デル・ボスケくらいしか記憶にない域だから、名将と呼ぶにはふさわしいと言える。それでもだ。結論から言えば、アメリカに負けた。厳しいことを言うが、それは現実なのだ。感動をありがとうという言葉で逃げても、その現実を受け止めなければいけない。

 何より、4年前と選手を比較してもメンツに変更がないのは何よりの問題ではないだろうか。ワールドカップ優勝したメンバーである。そうそう変えられないのは事実でもあるが、成熟したチームゆえに新戦力という新しい風が宇津木瑠美くらいしかいなかったのは今後に大きな不安すら感じられる。そして、澤穂希の代表引退。名実ともに代表の顔であり、今回は主に裏方としてチームを支えたレジェンド。彼女の引退が代表に大きな影響を与えることは容易に想像がつく。

 90分フルで見ていたわけではないので、実際の試合がどうだったのか。佐々木監督の采配に問題があったのかまではわからないので論じるつもりはない。サッカーにおいて、立ち上がりでそのような大きな差がついてしまうことは往々にしてあること。大差敗戦をしたからといって守備が崩壊していたなどと論じるのは安易だ。一方で、この敗戦を反省せねばならないことはまた、事実である。

 何度となく、アメリカ代表という絶対王者に敗れてきた日本代表。恐らくはリオデジャネイロでも大きく立ちはだかることだろう。どのようにすれば勝利することができるのか。あと1年しかないこの期間で真剣に考えなければどんどんと時間は過ぎていってしまう。もう時間はないのだ。切り替えてリオに向けて前進する以上に、一度立ち止まって反省を促す勇気が、日本メディアに感じることができない。厳しいことを言うが、これでは未来永劫アメリカに勝利することはできないだろう。

 もっとも、エンターテインメントとしてしか考えていないのであればどうでもいいのだろう。競技性としての疑問を提示しただけなのだから。澤穂希宮間あやらはこの大会を最後に代表から退くかもしれない。そうなった時に、誰がその代わりを担うのか。誰が新しいなでしこの中心選手になるのか。どうすればアメリカに勝てたのか。ここに男女の代表という違いはない。代表だからこそ、真剣に論じて行く必要がある。それくらいのレベルにまで、達しているのだから。