殴るぞ

色々と思いっきり話します。

レスター・シティFCが教えてくれる「お金で買えない価値と勝ち」

 早朝、トッテナム・ホットスパー(以下、スパーズ)対チェルシー戦。スパーズは優勝するためには勝たねばならないわけだったが、チェルシーのホーム・スタンフォードブリッジとの相性は良くなかった。エースのハリー・ケイン選手のゴールなどで2点をリードするが、後半になるとチェルシーも巻き返して同点に。

 途中で私は寝てしまったために(流石にぶっ通しで起きていられるほど、体が頑丈ではなかったわけだが)、スパーズが2点リードしたところで寝てしまったわけだが、見ておけばよかったと後悔してしまうほどの巻き返しっぷり。やはりスポーツとは何が起こるかわからないところにとても大きな魅力がある。

 さて、いくらスパーズの初優勝がかかっているとは言え、わざわざ朝4時まで起きてサッカーを見るほど、私も物好きではない。では、何故見たのかというと、岡崎慎司選手の所属するレスター・シティの初優勝がかかっていたからである。

 近年のプレミア・リーグでは、世界トップレベルの選手たちが高額な移籍金(違約金)と共にグレートブリテン島へと足を踏み入れてきた。マンチェスターにある2クラブを始めとし、チェルシーに育成がメインだったアーセナルでさえそうなっていた。リヴァプールに前述したスパーズもその中に入れても何ら異議はないはずだ。

 岡崎選手の所属するレスターはどうだろうか? 失礼ながら、ジェイミー・バーディ選手はカルロス・テベス選手ではないし、リヤド・マフレズ選手も決してメスト・エジル選手ではない。岡崎選手も決して、エデン・アザール選手のようなドリブルテクニックがあるわけではないのだ。

 更にはクラウディオ・ラニエリ監督も決して評判のいい監督ではなかったことを明記しておかなければならない。直近ではギリシャ代表を率いて、EURO2016の予選を戦っていたが、フェロー諸島代表というお世辞にも強いチームとは言えない代表にまで敗戦するほどの低迷ぶり。もはやキャリアは終わった監督であったといってもいいだろう。

 そんな彼らの大躍進は、ビッグクラブが序盤から低調であったという要因も確かにあった。しかし、攻守において全員がさぼらず(特に守備面で、である)、豊富な運動量と切り替えの早さに裏打ちされたカウンター。パスサッカーがトレンドとなっている現在においても、骨太なチームスタイルを最後まで実行し続けられた結果ではないだろうか。ここは戦術に明るい人、またプレミアリーグを年間通して見続けてきた人が多くいると思うので、その方の分析を拝聴したいところだ。

 この優勝は、これからのプレミアリーグにとってとても興味深いものとなる。多くの方がそう思っておられるだろうが、私もそう考えている。それはなぜか。大枚を叩いて購入した「高額商品」でなくても、トップリーグのサッカーは優勝ができることが証明されたからだ。

 近年でいうと、アトレティコ・マドリーもそうであると言える。ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコにはクリスティアーノ・ロナウド選手も、ネイマール選手もいない。当然、ある程度の補強は行うが、潤沢な資金があるとはお世辞にも言えない。それでも、優勝を争うことができる。サッカーは団体競技で選手だって人間だ。ウイイレのようにいつもうまく行くとは限らない。そのためには補強が必要となるのは当然だろう。しかし、いつだってそれには限界というものが存在している。だからこそ、やたらと選手を購入すればいいというわけではない(ジェフの悪口を言いたいわけでは無い)。

 サッカーは補強の金額で決まるわけでないということを改めて教えてくれる優勝であったという点で、大変意義深いものでは無かったのではないだろうか。これからはサッカーの監督という仕事はよりやりがいのある仕事となるだろう。「ネイマールを獲得できない」ことを勝てない言い訳にはできなくなったのだから。

 そして、岡崎選手。得点こそ目を見張るような結果を残したわけでは無かったが、豊富な運動量で労を惜しまずチェイジングを行い続けた。フィジカルでもテクニックでも長けていた部分のなかった彼が、こうやってプレミアリーグの優勝チームでファーストチョイスの選手として活躍しているのは、とても感慨深い。そして何より我々が予測しきれない部分まで一気に成長を遂げつつあるように思える。

 単なる技術やフィジカルだけでなく、一人のサッカー選手として。彼はどこまでも高いところへと上り詰めようとしているのではないだろうか。高い向上心の塊である彼が慢心をすることは、ないだろう。そんな彼がどこまで行くことができるのか。今からとても楽しみでならない。

 一人の日本人として、岡崎慎司という男をこれからも追い続けていきたい。レスター・シティの優勝を心から祝しながら。