殴るぞ

色々と思いっきり話します。

【EURO2016】ドイツ-ウクライナ「締まらない試合を締めた2人」

 2-0というスコアで、ワールドカップ王者のドイツが主要国際大会2連勝へ向けて好発進をした……、と言いたいところ。しかし、正直な話で言えばウクライナにしつこくサイドを攻められ、あわやという状況になっていたことは間違いなかった。特に前半、ウクライナの猛攻を凌ぐことができたのは、とても重要なものとなった。ジェローム・ボアテングのファインプレーがなければ2-0というスコアは2-2、いや逆転負けしていてもおかしくなかったはずだ。

 しかし後半に入ると、ドイツもネジを巻きなおす。というよりもテンションが高くなっていたウクライナの足が止まり始めてドイツ有利な時間となっていく。その中でもウクライナも追加点を与えまいと懸命に体を張って失点を許さず、カウンターで一矢報いようとする姿勢は感動を覚えたものだった。最終的には試合終了間際にカウンターでメスト・エジルバスティアン・シュバインシュタイガーが攻め上がり、追加点を獲得したことでウクライナの抵抗を無意味なものにしてしまったわけだが。

 さて、表題である。これだけの切って切られての接戦になったのも、ドイツの守備陣がいささか情けなかったことが関連している。ボールを持てば現状、世界最強と言ってもいいのかもしれないが、ボールを持たされてしまうとどうしても脆さを露呈してしまう。そのような弱点を明確に突かれ、なおかつフィリップ・ラームという偉大な主将が欠けたドイツは前述のように、幾度となく危機を迎えていたのだ。

 一方でウクライナもドイツにボールを持たれると、籠って守備をするしか方法がなかった。何度も追加点を奪われる危機を迎えていたのは、ウクライナも同じだったのだ。ともすれば熱い譲り合いにも見えたこの試合を、意外とキッチリ締める試合にしたのはゴールキーパーの力が大きいだろう。

 ドイツ代表のGKはマヌエル・ノイアー。説明不要の現状世界最高と言われるGKだ。反応速度はもちろん、積極的かつ広大な守備範囲を誇り、時にはペナルティーエリアの外に出てセンターバックかと見紛うほどのタックルやスライディングを、相手選手に見舞うこともある。バイエルン・ミュンヘンでも重要な選手として位置づけられ、前回のワールドカップでも活躍は記憶に新しい。

 ウクライナのGKはアンドリー・ピアトフ。母国で活躍している点はノイアーと同様だが、所属クラブのシャフタール・ドネツクでは思うような出場機会を得られていない。2失点したとはいえ、これはドイツを讃えるしかないという得点だった。的確にシュートをはじき出し、ウクライナが反撃の機会を作り上げることに大きく貢献していたのではないだろうか。

 意外にフォーカスされないが、このようにGKの奮闘によってゲームが締まるというのは良くあること。今回もその典型だったと言える。

 ピアトフは元々、ウクライナにあるクラブにUEFAカップのトロフィーを持ち帰ったときの正ゴールキーパー。62試合の経験があるGKなのだから、このようなパフォーマンスを見せることは何ら不思議なことではない。むしろ2失点以外にも多く迎えた決定機を問題なく抑えてみせたのは、さすがと褒め讃えるべきだろう。

 そして、ノイアー。広大な守備範囲を誇るドイツ人守護神は、その能力を今回も遺憾なく発揮してみせた。特にムスタフィがヘッドで返したボールが決定機となった場面では、さながらCBのように相手選手にチャージを見せて決定機を阻止。ただのGKにしてはあまりにも守備範囲が広すぎる彼のおかげで、ドイツは大崩れすることなく踏みとどまれたことは言うまでもない。そして、シュバインシュタイガーのゴールが生まれたのだから。

 激しく緊張感のある試合が続く今大会で、GKが果たす役割が大きくなっているように思える。例えば、スペイン-チェコ戦ではペトル・チェフが好セーブを連発して、緊張感ある試合を作り出したし、イタリア代表もジャンルイジ・ブッフォンという強大な存在が鎮座していることでDFに安定感が生まれていることは言うまでもない。

 ベルギーもティボ・クルトワが好セーブを連発しなければ、大差がついて敗戦していても不思議では無かっただろう。GKとはそれだけ責任が大きく、かつ賞賛と批判を受けやすいポジションであるというわけだ。

 ドイツ-ウクライナ戦もそうだった。一歩間違えれば「事故」になり兼ねなかった試合をきっちりと締めて緊張感ある試合に仕立て上げたのは、ひとえにGKの存在が大きい。私はそう考えている。私たちはかつて、その存在の大きさを痛感した試合がある。1年前の日本-シンガポール戦だ。あれだけのシュートを浴びせたにもかかわらず、とうとう最後までゴールをこじ開けられなかった。本当にGKを讃えるしなかった。

 ハイレベルな緊張感の裏側に。あなたも是非、今度キーパーに注目してみてほしい。きっとそこには面白い秘密が、隠されているのだから。

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