殴るぞ

色々と思いっきり話します。

【EURO2016】ベルギー代表から感じた「組織で戦う重要性」

 素晴らしい試合だった。一番応援していたスペイン代表が敗れてからというもの(それ以前からではあるが)、ほぼほぼ流し見になっていたEUROであるが、世界最高峰のサッカーから学ぶことは未だに多い。何よりも興味深いのは、ある種世界でもトップレベルとも言える個の能力を持つベルギーや、若い選手が多くいるイングランドがこうもあっさりと決勝トーナメントで敗退してしまったということだ。

 かと思えば、勝ちきれずにPK戦へともつれ込んで寄り切るポルトガルやグループリーグ敗退でもおかしくなかったイタリアやアイスランドが、ここまで勝ちあがってきているというのもこれもまた興味深い事実である。

 そしてそこから学ぶことができることは一つ。「サッカーはチームスポーツである」ということである。何を今さらと考えている人もいるかもしれない。しかし、これは日本サッカーも決して目を背けてはいけない現実なのだ。

 香川真司岡崎慎司本田圭佑内田篤人長谷部誠清武弘嗣もそうだろう。海外で活躍する選手たちが日本サッカーにも増えてきている。その一方で、宇佐美貴史(すでにドイツ移籍が決まったが)や槙野智章といった海外で目立った活躍ができないまま日本へ帰ってきてしまった選手たちも多くいることはこれもまた事実である。そして、本来ならば個人の能力では最も突出していた代表は2014年ブラジルで手痛い結果を手にしてしまうことなったのだ。

 この差は何なのだろう。個人能力の差だろうか? 一理ある。本田圭佑は決してクリスティアーノ・ロナウドのような能力はないし、岡崎慎司は少なくともズラタン・イブラヒモヴィッチのように何でもできるわけでは無い。しかし、それではアイスランドがなぜ勝てるのかという謎は解けない。

 戦術だろうか? これは間違いなくそうだろう。あるいは指導者の差とも言える。少なくとも岡ちゃんこと岡田武史氏はジョゼ・モウリーニョではないし、西野朗氏やガンバ大阪長谷川健太監督、浦和レッズミハイロ・ペトロヴィッチ監督は決してジョセップ・グァルディオラではない。しかし、代表での拘束時間は限られている。そんな短い時間で複雑怪奇な戦術を仕込めるはずがない。

 だからこそ、代表で求められるのは二つ。一つは「誰を軸にするのか?」ということ。そしてもう一つは「最低限の約束事を決める」ということである。

 2014年の日本代表で当てはめてみよう。当時日本代表は(現在もそうかもしれないが)、本田圭佑香川真司という2大選手が中心にいた。しかし、どちらを中心に据えれば良いのか分からないまま最後の最後までザッケローニ元監督は結論を出すことができなかった。そして、遠藤保仁という日本代表を象徴する司令塔の後継者をどうするのかということもはっきりとさせられなかった。これは大きな敗因である。

 そして、最低限の約束事を決めることもできなかった。いや、実際にはあったのだろうが、果たしてそれをザッケローニが指示した上で決定されたものだったのか、ということだ。正直に言うと左サイドで人数をかけて細かく突破していくというサッカーが、ザックの指示だったとは個人的にはどうしても思えないのだ。むしろ、3-4-3を指示していた時のポジションをしっかりと守ってほしいという徹底して綿密なディティールを踏む姿こそが彼の本当の指示であり、姿だろう。

 本来なら柿谷らを始めとする若手選手たちが本田達に圧力をかけなければいけなかったのだが、めぐり合わせの悪さと根本的な戦術の理解度の低さから彼らは淘汰され、メンバーの固定化という最大の問題を抱えてしまうこととなったわけだった。以上二つが、日本代表のワールドカップ敗退理由である、と定義付けておきたい。多くの意見があるだろうし、知っている方も多いと思うので、これ以上はこの件について語るのは控えよう。

 翻って見てベルギーである。ルカクアザールクルトワ、デ・ブライネ、フェライニ、ナインゴランら世界的にも有名な選手たちをずらりと揃えている。かつてベルギーで伝説的なエースだったヴィルモッツ監督を中心に欧州制覇を狙っていたわけだが、ウェールズという初出場チームにその権利を掻っ攫われることと相成った。

 ウェールズは世界的にも有名な選手であるベイルを中心にまとまっていた。つまりベイルが「中心」だったわけだ。むしろベイルやラムジーという能力の高い選手たちから攻撃がスタートし、守備時は「全員で働くこと」を「約束事」として存在していたわけだ。しかし、ベルギーはその二つがあいまいだったように思える。誰が中心になるのか、約束事は何か。最後の最後まで、それが判然としないままだった。試合途中から見せたハイボールでの放り込みが一番効率的ではっきりとした約束事になったのは皮肉だった。それでもベスト8にまで入ったのは、それすら破壊する個の力が優れていたからに他ならない。

 元々ベルギーというのは複雑な国家であるらしく、地域ごとでの対立が大きい。それを巧みにまとめ、組織立ったチームに仕上げるには、それこそ監督が国中から尊敬されている英雄か、それこそスペシャル・ワンのような有能な指揮官でなければまとまらないだろう。

 ヴィルモッツでなければならなかったのかもしれない。彼の采配が優れていたかどうかは、結果が示している。つまり、一つの代表チームとしてここまで勝ちあがらせるということはできるものの、それ以降はより優秀な手腕を持った指導者に委ねる、ということが妥当ではないかと思える。

 個というソフトウェアを活かすのは戦術や約束事と言ったハードウェアである。もしベルギーにそのハードウェアが揃ったとき。それが改めて国際大会における優勝候補へと名乗りを上げる時になるのではないだろうか。

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