殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ガレス・ベイル「アポロ」

 ベイルとはアポロである。チョコでもロケットでもない。20年近く前に流行ったあの曲だ。ポルノグラフィティのデビュー曲「アポロ」だ。疾走感のあるメロディとスケール感のある歌詞は未だに彼らの代表曲の一つとして定着している。ガレス・ベイルは正しく疾走感があり、そしてスケールの大きなプレイヤーになりつつある。同郷の先輩、ライアン・ギグスのように。

 そのスケール感の高さはトッテナム時代から突き抜けていた。5年前、友人と入ったHUBでやっていたトッテナムの試合だった。対戦相手を失念してしまって申し訳ないのだが、ビハインドの状況からベイルの活躍であっという間に試合をひっくり返してしまったのだ。たった一人、左サイドで次元が違っていたのを酔った頭の中ではっきりと覚えている。かつてマンチェスター・ユナイテッドで活躍していたクリスティアーノ・ロナウドを思い出させるようなあの存在感。彼はひょっとしたら化けるかも知れない。そう思ったものだった。

 それから1年、アンドレ・ヴィラス=ボアスによってサイドアタッカーだった彼はトップ下へと転向してその才能を覚醒させることとなる。レアル・マドリーに移籍後の活躍は言うまでもないだろう。元々、左サイドバックだったベイルは徐々にポジションを上げて行き、チームの中心選手となった稀有な存在、それがベイルだ。

 ドリブルのスピードと突破力は言うまでもない。特に「よーいドン」での仕掛けはトップクラス。大柄でボディバランスもいいために競り合いにも強いし、とてもいいキックを蹴る。今となっては高評価を受けているベイル。

 しかし、130億を超えると言われたこの移籍には多くの疑問が上がった。理由は、サイドには世界有数のアタッカーであるアンヘル・ディ・マリアがおり、そんな高額な商品を購入する理由があったとは、到底言えなかったからだ。

 しかし、そんな意見さえもベイルは結果という形で批判を黙らせてしまった。ディ・マリアがドリブルのテクニックで見せるならば、ベイルは天性のアタッカー。なんでもできるテクニシャンタイプのディ・マリアは、最終的にインサイドハーフにコンバートされることでカルロ・アンチェロッティの下に仕えることとなる。文字通り、実力でファンを納得させてしまったのだ。

 さて、そんなベイルのルーツはウェールズにある。サッカーのことを知らない人からしてみれば、イングランドは知っていてもウェールズを知らない人が大半だろう。なにせ、ライアン・ギグスが全盛期の時でさえ、ワールドカップはおろかEUROにも出場したことがなく、悲しいかなサッカーの強豪国とは言える状況ではなかった。

 しかし、アーロン・ラムジーなどをはじめとする、有望な若手選手たちの成長は徐々にウェールズを強くしていった。予選でもベイルは大活躍。最終予選での11得点中、7得点はベイルによるもの。チームの活躍を支える大車輪のような働きを見せてくれたわけだ。

 そして、今回のEURO。国際大会初出場同士の対決となったスロバキアを相手に、先制点となるフリーキックを叩き込んだ。そのセンセーショナルな活躍で、チームに勇気を与えたことは言うまでもないだろう。

 さて、ここでアポロに話を戻そう。アポロはポルノの代名詞的曲だ。このEUROで活躍をすれば、ガレス・ベイルを語る上で決して忘れることのできないハイライトとなるだろう。すでにスタートしての風格すら漂い始めているベイル。今大会を「代表作」になるのではないかと、実感している。そう、ポルノのアポロのように。なんでアポロなんだよと思うかもしれないが、完全な思いつきである。

 今大会、すでにスターになりつつあるベイルが更なる高みを目指すために。恐らくはその物語が大きく動き出す時だ、と私は勝手に考えている。初の国際大会で、いつも通りにプレーができるのは、スターがスターである証拠だ。あるいはレアルという特殊な環境によって育てられたか。このクラブには先ほど例に挙げたクリスティアーノ・ロナウドが先輩としてもいる。プロフェッショナルとしても知られる彼の下で慢心をすることは、まずないだろう。ベイルにとって、このクラブほど成長する機会はなかったのではないだろうか。そして、30になるCR7の次を担うのは、紛れもなく彼であろう。

 真偽のほどは分からない。しかし、大スターへの階段を一歩ずつ登るベイルにとって、この大会はよりセンセーショナルな活躍が求められる。みんなに覚えているような、明確でわかりやすい形の結果を。今年はクラブ・ワールドカップが日本で開催される。日本人にもベイルの名前を覚えてもらえるチャンスである。このユーロでどれだけの結果を残すことができるのか。

 ガレス・フランク・ベイル。次世代のスーパースターはこのEUROで伝説を残すことができるだろうか。その挑戦が、今まさに始まろうとしている。

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