殴るぞ

色々と思いっきり話します。

【EURO2016】フランス-ルーマニア「6.10バズーカ」

 さて、テロなどが発生したことで開催すら危ぶまれたフランス。主力選手であったベンゼマが代表から永久追放され、その他主力選手が負傷離脱が相次いでいる中でも開催国として優勝候補に挙げられている。実際、飛車角落ち感は一切なく、むしろディディエ・デシャンはやりやすささえ覚えているのではないだろうか。

 一方で「東欧のブラジル」と呼ばれていた時期もあるルーマニア。ものすごく強いチームではないが、番狂わせを起こすのが得意な国である。そんな両者の対決はとても対照的で、かつ開幕戦に相応しい熱い試合となったことをまずここに記しておこう。

 結果は2-1でフランスの勝利。しかし、実際に「いいサッカー」をしていたのはフランスではなく、ルーマニアだった。これも、サッカーが分からないところである。

 いいサッカーとは何か?

 しばしば聞かれる「自分たちのサッカー」というワードや「攻撃的なサッカー」というワード。だが果たしてそれは理想なのかどうかという点にある。これはあくまでも他の人からの話を聞いたというだけなのでどこまで本当か定かではないが、ブラジルワールドカップで技術委員が提出したテクニカルレポートの中に「日本に足りないのは戦術理解力」という部分があった。つまり、日本サッカーが進んでいたこの4年間はある種間違った方向へと進んでいたということとも等しいのである。そのサッカーに陥ったとき、立ち返るものは「型」なのである。

 戦術とは「型」で、それをしっかりとチームで遂行できるのはある種「型にハマっている」ということでもある。もちろん、そこには選手個々のアイディアや約束事などがまた発生することでチームにしていくわけであるが。

 ここでは、いいサッカーとはその「約束事が徹底されて」いて、かつそれにより「相手が効果的なプレーをしていない(攻撃では点に直結するプレー、守備ではセカンドボールの回収など)」という2点に絞って定義付けをしたいと思う。

 ルーマニアはどうだったのだろうか。

 守備に目を向けてみる。ルーマニアが敷いたのは中盤がフラットになる4-4-2というフォーメーションだ。これの特徴は正しく守備時に連携が取りやすいという点にあり、かつ選手たちがわかりやすいフォーメーションでもある。ルーマニアは積極的に前線から守備を行うことで、フランスの攻撃を狂わせていた。少なくとも、フランスがセンターバックから攻撃を組み立てるということができずに苦しんだのは、ここに原因があると思う。

 それでもフランスがチャンスを作り出していたのは、個々の選手に差があったからとしか言い様がない。特に前半23分前後のラミからのグラウンダー性のフィードやポグバのフィードなど、意図的に繋がず裏一本で攻撃しようという狙いも見せ、ルーマニアの守備を狂わせようと試みていた。それでもアンゲル・ヨルダネスク率いるルーマニアは、それを拒否し最後の最後まで粘り抜いてみせた。もっともその粘りさえ、バイェによってあっけなく崩されてしまったわけだが。

 攻撃に目を向けてみる。守備の整備された印象と打って変わって、攻撃ではどうしても前線の選手たちの能力に依存していた印象は強い。本来であればある程度形が決められている中でのカウンターが発動するのだろうが、前線の選手たちの能力が、フランスの守備陣と比較して低かったのだろう。もし、ここにアドリアン・ムトゥがいたとしたら、まだ結果は分からなかっただろうが。

 さて、フランスである。思った以上ではないという印象だが、最終的は選手たちの能力で強引に押し切らせたデシャンもすごいと思う。グリーズマンが思った以上に自由に動き回っていたことも要因の一つだが、とにかく形が最後まで良く分からなかったというのが印象に残っている。相手のサイドアタックをエブラとラミは良く抑えていたし、カンテがパスを散らすことで攻撃を始めるという最低限の約束事はあったわけで、そういう点では負ける要素がなかったと言ったほうが正しいのだろう。

 だがそれにしても、攻撃がフリーハンド過ぎた。どう攻めるのか、どこを起点にするのかという部分のディティールは一切なく、ジルーが収めてという形もあまり見られず。それでも何とかなったのはパイェが個人技という不条理かつ究極的な形で押し切らせたからだろう。グリーズマンやジルーと比較しても地味な印象のある彼だが、FKという飛び道具もあり決して能力の低い選手ではないことは確かだ。フランスの攻撃に秩序立ったものを与えられるかどうかは、2戦目以降も注目したい。

 しかし、これ以上ない形での開幕戦ではないだろうか。ルーマニアの堅牢な守備は前評判通りだったし、フランスの個々の能力は流石と唸るしかない。6.10バズーカが鳴り響いたサン・ドニ。初夏の祭典は、7月10日までだ。

Twitterはこちらから。

Facebookページはこちらから。