殴るぞ

色々と思いっきり話します。

岡田武史……その男、チャレンジャーにつき

 岡田武史は挑戦者である。なぜだろうか。日本人唯一のワールドカップでの指揮経験があるから? もちろんそれは要素の一つだが、ではなぜそれが生み出されたのだろうか。そこにあるのは「世界と戦って勝利するにはどうしたらいいか?」を考えて、トライアンドエラーを繰り返してきたからという一点に尽きる。現役時代から頭脳派の選手として名を馳せていた彼は、世界と戦うための方法論を懸命に考え努力を続けてきた選手だった。

 指導者としての実績は言うまでもない。日本をフランスワールドカップに導いた人物として。多くの発言で物議を醸し、三浦知良を外して批判されたこと。だが、「カズの時代」が終わり「ヒデの時代」になりつつあった日本代表でそれを体現できたのは、彼しかいなかった。そして、「中村俊輔の時代」から「本田圭佑の時代」まで。日本が世界に勝つための時代を作ろうと尽力した。

 代表監督を退いてからは、初となる海外クラブでの監督を務めた。そして、今年からクラブチームのオーナーとなって日本サッカーを変えようとしている。これだけのことができるのは岡田武史だからにほかならないと思う。メディアやサポーターからのバッシング、戦術批判、果てにはフリーライターから人格まで否定された。必要以上の批判と失望に苛まれても、彼は挑み続けていた。

 ワールドカップでは苦い経験と同時に決勝トーナメント進出という実績も残した。コンサドーレマリノスでは若手育成と名門クラブでの優勝という形も残してきた。初の海外となる中国のクラブでは「プロ意識」という部分から選手に与えてきた。それは日本が海外から見ると「ベスト16という結果を2回残してきた、サッカーの先進国」の一つであると認められてきた証でもある。プロができて20年。これだけ目覚しい成長を遂げてきた国はないという評価は既に多く聞かれる。しかし、それにあぐらをかいているようではアジアの他国に遅れをとることが分かった。それが、今回のアジアカップだった。

 日本サッカーはより成長していかなければいけない。そのためには優れた指導者が急務だ。海外ではなく、日本人でだ。現在の日本サッカーで、若くてなおかつ有能な指導者は皆無と言ってもいい。思い出すのは木山隆之氏くらいで、ある意味でそれが停滞している要因といっても過言ではないだろう。FC今治では「岡田メソッド」を授けていきたいと語っている。それは自身のノウハウもそうだが、指導者の育成ができていないという現状に彼が危機感を抱いているからではないだろうか。

「ひとつの形を作りたい」。彼はそう語った。ある意味これはサッカー界への挑戦でもある。日本サッカーが作ってきた形とはなんなのか。軸は何か。自分たちの形に対してどれだけのものを提示できるのか。日本サッカーのために尽くしてきた彼が、クラブチームのオーナーとして。今度は挑戦状を叩きつけた。だが、その姿が彼にはよく似合う。常に世界との戦いを意識してきた彼が、たどり着いた答えでもあるからだ。さあ、日本サッカーはこの挑戦状をどう受け取るだろうか。新しい挑戦を前に、長くなりそうな戦いの幕が今開こうとしている。