Jリーグに訪れた最大のチャンス
イギリスの大手動画配信企業、パフォーム・グループによる10年2100億円での大型契約が締結された。これを受けて、元々の条件だった1ステージ制の復帰も併せて正式に決定した。今までにない規模の金額がJリーグにやってきたことによって、「本来あるべき姿」に戻ることとなった。
大変喜ばしいことだ。1ステージの方がシンプルだし明確だ。スポーツはシンプルで明快であることが望ましい。世界のトップリーグを見ても、国際的に人気の高いリーグは全て1ステージ制を採用している。あるべき姿でたたずんでいるのだ。
しかし、よく考えてほしい。それにはクラブを引き寄せる明確な資金力とマーケティング力が必要なのである。Jリーグでは各クラブ共に経営が厳しく、地方のクラブになるとJリーグからの分配金のおかげで何とか黒字になっているクラブもあるほどだ。そういう背景があったからこそ、本来の望ましい姿をいったん捨てなければならなかったわけだ。
それを考えると、2ステージ制を2シーズンで終了させることができたのは、パフォーム・グループとの契約を締結したJリーグの努力の賜物ではないだろうか。それを評せずして2ステージ制だったことへの批判はできないだろう。
そして、所詮は金なのかという意見もある。
その通りなのだ。世の中は金である。そして、それを批判することは言語道断である。貨幣経済である以上、それはすべてのことに言える普遍の真理だからだ。お金で買えないものも確かにあるが、ほとんどの物は金で解決ができるのだから。
金もないのに「あるべき姿」もへったくれもない。「あるべき姿」を作るためには、それ相応の金が伴い、それを恒久的に運営していくのにもそれ相応の金が伴うのだ。金がなければ何もできない。もっと言えば、あなたがチケットを購入してクラブを応援しに行くことすらできないのだ。
もし、金があれば。あなたのクラブはさらに広告宣伝活動へ投資を行うことができるかもしれない。海外のビッグネームがあなたのクラブでプレーするかもしれない。あなたのクラブがそのお金で強化されたらどうなるだろうか。魅力的なサッカーを行い、本来あるべきであったサッカーのその理想の姿をしたリーグ戦が、さらに素晴らしいものになると思う。
そして今回、その機会を得ることができたのだ。とても素晴らしいことであるとは思わないのだろうか。
「それでも」と思う人に朗報だ。なんと、もれなく日本代表の強化につながる可能性がある。なぜか。クラブの強化はひいては選手たちの強化とニアリーイコールとなるからだ。ジーコというレジェンドがいた鹿島アントラーズはその良い例だろう。今日に至るまで、彼が残してくれた想いや形が現在に至るまで脈々と受け継がれているではないか。もちろん、大外れしたクラブもあったわけだが。
視点を変えてみよう。もし、マヌエル・ペジェグリーニやルチアーノ・スパレッティのような優れた指導者を招聘することができたらどうだろうか。後々日本代表監督に就任することが決定したとして、日本サッカーのやり方やあり方が分かっているし、無駄なストレスも少なくて済むはずだ。
そして、今回出た「国内組を招集しない問題」にも大きな解決策を提示することが可能と言える。なぜなら、そうやって強化されたクラブは選手たちのためにお金を使うことができるようになる。強化体制がさらに強化されることによって、海外組よりも優れた人材を国内から供給することが可能となるかもしれない。
つまり、簡単に言えばJリーグにもクラブにも大きなチャンスなのである。海外企業から今まででは考えられない規模の金額が投資され、今までにできなかったことができるようになる。それは、Jリーグという20年以上にわたって運営されてきた国内リーグの歴史に対する正当な評価が下されたと評されたと言っても良いのではないだろうか。
繰り返すが、その大型契約を取り付けた人たちはJリーグにかかわる人々である。この大型契約を取り付けた人たちのことをどうして評価しようとしないのだろうか。
何度でも話そう。世の中とは金だ。響きは残酷だが。それにニーズが揃っているなら文句も出ないはずだろう。受け入れ条件も整ったのだから、素晴らしいことではないだろうか。結果論と言えば、結果論にはなるが。
ただし、これがJリーグの根本的な解決になり得るのか? という点については、甚だ疑問だ。途中でパフォーム・グループが倒産するようなことがあればどうするのか。2027年に契約が終わるとき、更新してもらわなければ元も子もない。その時が来るまでに分配金に依存しないでもある程度は大丈夫なほど経営基盤はしっかりしているクラブとなっているのか。
新たなチャンスになる以上、各クラブはどんな挑戦を見せてくれるだろうか。一つの文化となりつつあるJリーグのさらなる成長を、私は期待してみたい。
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