殴るぞ

色々と思いっきり話します。

大迫勇也は何がハンパないのか

 ハンパないという言葉とともに、鮮烈に残っている選手がいる。大迫勇也その人だ。彼は平山相太がかつて打ち立てた大会最多得点記録を更新し、鳴り物入り鹿島アントラーズに入団。その後も順調にキャリアを積み上げて、昨年のワールドカップでは日本代表にも選出された現状の日本人フォワードの中でトップレベルにいる選手である。

 彼の良さはなんといっても万能なところだ。1トップでも2トップでも機能する戦術的な柔軟性を持ち、ポストプレーをさせれば日本で一番うまい。前田遼一ポストプレーではもっともうまかったが、大迫にもその能力は通ずるところがある。そして、キックの上手さ。大迫はどれをとっても高水準だ。

 だが、本当の彼はもっと違うと思う。彼は点取り屋なのだ。6試合10得点という数字より、より優れた能力。得点数そのものは、確かに大記録ではある。しかし、それだけで本当に大迫の凄さを語ることを誰ができるだろうか。正直に言えば、大迫が戦った大会のレベルは極めて低いと言わざるを得ないほど守備のレベルが低かった。

 大量得点で勝利するチームが多く、むしろ中途半端なポゼッションサッカーで守備組織が成り立たない。むしろちゃんとした守備組織を作って勝ち上がった広島皆実が最後まで残って優勝したことは、何とも言えないところではあった。そんな広島皆実からも2点を奪い、そのうち先制点は大迫によるものであった。あのゴールは今でも鮮烈に覚えている。

 当然、9得点も奪ってきた点取り屋へのマークがきつくなることは当たり前だ。しかし、3人に囲まれた中でシュートコースを見つけ、ゴールを決めてみせたその姿は「点取り屋」そのものであった。三人に囲まれてプレーをするというストレス、ましてや守備に定評のある広島皆実のメンツだ。彼の研ぎ澄まされた感覚は、間違いなく日本代表でも活きる。否、活きて欲しいという気持ちで見ていたのを覚えている。

 今の大迫を見ていると献身的で、アシスト能力を高いその姿はあの柳沢敦を思い出す。彼自身、その献身的なプレーで幾度となくチームを救ってきた。だが、本当の能力は誰よりもエゴイスティックな性格のCFだったのだ。まるで逆。点取り屋としての才能に気がつかないまま引退をしていた。思うと、ファウルを受けた瞬間に素早いリスタートでゴールを奪ってみせた狡猾さは確かに点取り屋としてのそれだったのかもしれない。そうやって柳沢は自らが持っていた才能を違う方向で活かしていき、そしてその才能を正しく扱わないまま引退した。今年のことだ。もちろん、長くトッププロで活躍して日本代表に選ばれた柳沢を決して批判するわけではない。もし柳沢にそれだけの環境があったとしたらどうなっていたのだろう。

 大迫はそんな柳沢を超えるだけの才能を持っている。そして、彼以上の得点感覚も持っている。それを錆びつかせることは、決していいことではない。何より、才能を適切に伸ばすことが最も大事なのではないだろうか。

 大迫は本当の点取り屋なのだ。別にファン・バステンになれとも、ファン・ニステルローイとは言わない。ただ、28となった次のワールドカップでも背番号9をつけているのが大迫であって欲しいのだ。だって大迫はハンパないのだ。3人に囲まれてもゴールを奪ったあの能力は間違いなくハンパない。