殴るぞ

色々と思いっきり話します。

柴崎岳の世界との戦いが始まる

「岳は化物。あいつは天才」。大学時代にゼミで一緒だった友人から教えてもらったことがある。韮崎高校で主将を務めた人物が言うのだから、その通りなのだろうと思っていた。事実、その年の青森山田は強かった。最も面白いサッカーをしていたし、柴崎岳は要所要所で効果的なパスを供給していたのだから。まだ17の高校生がである。現在松本山雅に所属する椎名伸志と組んだボランチは非常に強力で、山梨学院大学付属に勝利を奪われたことすら驚きであった。

 大会終了後に早くもJリーグに内定が決まったことすら、ぼくは驚かなかった。彼のプレーは、確かにJリーガーの中でも飛び抜けていた。早い段階でデビューし、活躍をすることだろうと確信していた。

 だが、意外なことに彼には代表選出経験が少ない。体調不良とスタイルの合わなさ。クラブの方針もあったのかもしれない。国際経験の少なさはゲームメーカーとしてはいささか苦しい。あと、国際大会では遠藤保仁という大きな経験者がいる。それは彼にとって大きな障害として横たわっていた。

 これだけ彼が期待されてしまうのも、日本人選手にゲームの流れを感じ取る能力とそれに見合ったテクニックがないことに起因している。遠藤を除いてしまうと、中村憲剛青山敏弘といった選手がいることはいる。ただ、中村は比較的早い展開を好む選手であり、遠藤のようなゲームメーカーとは違い自分で決めることも好む。青山は青山で遠藤に近い部分があることは認めるが、サンフレッチェ広島という特殊な戦術を組むクラブでは適応しづらい。

 柴崎にはそういう戦術の「クセ」がない。適応能力が有り、代表でも鹿島でも柔軟に対応ができる。だからこそ、誰もが柴崎岳には期待を抱いているのだ。

 ようやく柴崎は初めて主要な国際大会への舞台に立つこととなる。それは誰もが待ちわびた、遠藤保仁の後継者として。その行き先は何処へ向かうのか。アンドレア・ピルロのようなエレガントなファンタジスタになるのか。チャビ・エルナンデスのような決してボールを奪われないパーフェクトなゲームメーカーになるのか。小笠原満男のようなタフなプレーヤーを目指してもいいのかもしれない。いずれにしても、柴崎にはそれだけのポテンシャルがあり、むしろ23にして初めて世界の舞台に立つのはむしろ遅いくらいなように思える。

 もし仮に柴崎が東アジアカップに出場をしていたのなら。遠藤保仁の後継者にこれほどまで悩まされることもなかったのかもしれない。より早くに経験を積むことができなかったことはザッケローニにとっても誤算だったはずだ。

 そして、待ちに待った彼のデビューがいよいよ始まる。既に4試合出場しているとは言え、それらは全てフレンドリーマッチ。だが、その試合のほとんどは遠藤が出続けることになるであろう。そして、彼が出場する時間は本当にわずかな時間かもしれない。だが、今回はそれでもいい。そのやや遅いデビュー戦から、彼の世界との戦いが始まるのだから。