殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ローマン・ゴンサレス、ゲンナジー・ゴロフキン「ナンバーワン野郎たちの共演」

 パウンド・フォー・パウンド。それは階級を飛び越えて「誰が強いのか?」を指し示す指標となっているもの。かつてその王座に君臨していたのは、フロイド・メイウェザー・ジュニアとマニー・パッキャオ。しかし、両者が第一線を退いた現在はその順位そのものも考え直さなくてはならなくなっている。今、ボクシング界はスターを探し求めて、未だ彷徨っているのだ。

 そして現在、二人のボクサーがその名に相応しい活躍を見せている。ニカラグアの怪物、「チョコラティート」ことローマン・アルベルト・ゴンサレス・ルナ選手。日本人には「ロマゴン」の愛称で親しまれている。ミニマム級からフライ級までの3階級を制してカラグア人ボクサーは日本人にも馴染み深い。何度か日本でも防衛戦を行っていることで知られており、かつて絶対的存在感を誇っていた新井田豊さんを倒し、高山勝成選手とのタフなファイトも印象深い。最近では八重樫東選手との激闘も記憶に新しく、軽量級軽視の風潮もあるボクシング界においてはかなりの異彩を放つ現在PFP1位のボクサーだ。

 そしてカザフスタンゴールデンボーイGGGことゲンナジー・ゲンナジービッチ・ゴロフキン選手。GGGもまた、石田順裕さんや淵上誠選手と言った日本でも中量級において屈指の実力者であるボクサーとの対戦経験もあり、日本人のボクシングファンにおいてもなじみの深い選手ではないだろうか。34戦全勝で、そのうちの31試合がKO勝利という破壊力もさることながら、技術の高さも目につく。相手のガードの隙をついてパンチを入れる技術が抜群に良く、また身体の強さと自身の技術的な能力に裏打ちされたプレスの強さも相まって、何もできない状態にさせてしまうのだ。PFPでは現在3位にランクインしている。

 さて、そんな両者は今回の興行において共演することと相成った。1位のロマゴンがセミファイナル、GGGがメインイベント。ロマゴン1位というのにはものすごい違和感を覚えるのだが、あくまでこれもリングマガジン選定のものであるので、何とも言えない。ロマゴンはマックウィリアムズ・アローヨ選手と、GGGは指名挑戦者としてドミニク・ウェイド選手を迎えての防衛戦となった。

 アローヨ選手はアマチュアボクシングでも素晴らしい実績を持っており、プロ格闘技転向後は井岡一翔選手と対戦経験もあるアムナット・ルエンロン選手との対戦経験もあるボクサーである(判定負け)。おそらくは、今後日本でも名前を聞く選手となるかもしれない。アマチュアの選手らしく、基礎がしっかりとしたいいボクサーである。

 一方でウェイド選手はアメリカのケーブルテレビ、SHOWTIMEがプロモートする「ニュー・ジェネレーション」で新進気鋭のボクサーとして注目を集めた26歳の選手。学年で言うとカネロことサウル・アルバレス選手と同い年なので、今後大いに期待の持てるボクサーであることは言うまでもないだろう。

 そんな今回の試合。ロマゴンもGGGも勝利はした。しかし、その内容は余りにも対照的なものとなってしまったことをまず述べておこう。

 ロマゴンはアローヨ選手の堅いガードにとことん苦しめられた。そして何よりもコンディションが悪いように思えた。試合中にドクターチェックを受け、なおかつ円形脱毛症にもかかっていたロマゴンは、よほど調子も悪かったのだろう。いつもと比較しても体重の乗っていないパンチが目立った。それでも技術力で相手を圧倒して判定勝ちにまで持ち込むのだから、大したものではあるのだが。正直に言えば、彼が1位であることに疑問を持たずにはいられないのかなとは思う。「どの選手が一番強いか?」ということの議論は尽きないわけだから、今後にも要注目と言ったところだろうか。

 一方でGGGは圧巻だった。挑戦者のウェイド選手は本当に何もできなかった。自慢のパワーと技術を惜しみなく発揮して2ラウンドKO勝利。その「強すぎる」までの実力ぶりはただただ驚嘆するしかなかったほどだった。次戦は、カネロ対カーン戦でカネロが勝利すれば現実的となってくるだけに、次を早く見たくなってきてしまっている。

 とまあ、このように対照的な結果となってしまった今回。しかし、どんなスポーツにも言えることだが相手との相性やその日の調子によって試合内容とは変わってくるもの。たった一試合だけで判断することはできることではないと考えている。

 それも踏まえたうえで、村田諒太選手はGGGという化物を倒さなければならない。まあ、別に狙わなくてもいいが。現状の彼から言えば、勝率は0%。もっと言えば、今回の挑戦者であるウェイド選手にも勝つことは叶わないだろう。ロンドン五輪で金メダルを獲得した時には期待したものだが、どうしてこうなってしまったのだろうか。

 一方で、井上尚弥選手は今日のロマゴンであるなら十分に勝機はあると思う。実力差を恐れて一階級飛ばして階級を上げたが、どういう階級でも構わないのでぜひ見てみたい対戦カードである。

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