殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ミゲール・コットvsサウル・アルバレス「ゴロフキンへの挑戦状」

 きらびやかなラスベガスのネオンの夜に、次世代のスターを決める戦いが行われる。ミゲール・コット対サウル・アルバレス。世界4階級王者のコットは、マニー・パッキャオフロイド・メイウェザー・ジュニアと激戦を繰り広げられたことでも知られる。

 カネロことアルバレスはメキシコが生んだ超新星で、20歳でWBC世界スーパーウェルター級王者になった怪物である。こちらもフロイド・メイウェザー・ジュニアと対決した経験も持つ。

 まず、この決戦において両者が置かれている状況を整理してみよう。

フロイド・メイウェザー戦、それから

 コットはメイウェザーの試合には敗れた。しかし勇敢さとフィジカル、そしてフェアプレーの精神をもって戦い、拍手を喝采させるに至った。オースティン・トラウトに敗戦して、ミドル級に転向。WBC世界ミドル級王者のセルヒオ・マルチネスからタイトルを奪って4階級制覇を達成した。ガードの堅さと思い切りのいい攻めが特徴で、プエルトリコ系が多いニューヨークでは多くのファンを持つボクサーだ。

 一方、カネロも同じくTBEに敗れたボクサーの一人である。だがそれ以降、評価は芳しくない。0-2とマジョリティ・デシジョンで敗れたその試合は、CJロス女史の頓珍漢なレフェリングが原因で、彼はほとんど何もできなかったのだから。その後ララ戦は完全に敗れていたと言われ、プライベートでは傷害事件で提訴されてしまっている始末。パワフルな連打が武器のメキシカンは、評価が右肩下がりの状態にある。コットには絶対勝利を収めなければならないわけだ。

 しかし、新たなるスター候補2名(コットをスター候補と呼ぶには、書いていて難だがいささかの抵抗が有るのだが)は勝利を収めたところで即座に認定されるわけではない。WBA王者のゲンナジー・ゴロフキンという絶対王者が君臨しているのだ。セルヒオ・マルチネス引退後、ゴロフキンと戦わなければスターと呼ぶことはできない。それがあったのか、コットは待ち料としてゴロフキンに80万ドルを支払い、WBCへのタイトル認定料支払い減額を要求したという。WBCはそれを拒否してコットからタイトルを剥奪した。

 今回は、カネロが勝利したら新王者として認定されるという変則ルールとして行われることとなる。しかし、彼がゴロフキンとの対戦を希望しているわけではない。もし対戦拒否をすると、また一騒動起きることになってしまいそうだを。

■新たな時代を開いたのは誰だ

 その勝者となったのは若きスター、カネロ・アルバレスだった。

 試合はアウトボクシングをするコットと、パワーで押し込むアルバレスの構図になる。フレディ・ローチにトレーナーを変えたコットはマニー・パッキャオのような常に動いて鋭い踏み込みからの攻めを得意とするボクサーを育てることに定評が有る。技術のしっかりとしているコットはまさにうってつけなわけだ。一方で、アルバレスはフレームの大きさを活かしてパンチを的確に入れてくる。技術力のコットとパワーのアルバレスの試合は、序盤こそコットが利していたが、中盤になってくるとアルバレスがパワーでコットを押し込み始める。

 3ラウンドにはコットがパンチをハードヒットされたような顔立ちとなり、アルバレスには余裕さが浮かび始める。それでも終盤はコットが盛り返し始める。ダメージはあったに違いないが、コットもジャブの正確さと軽快な動きでアルバレスを追い詰める。途中から余裕をかましていたはずのアルバレスも徐々に流れを失い始めていたが、何とかパワーで押し切った。最大10点の大差が付いたことだけは予想外だったが、ボクシングでは見る角度によって採点が異なるのはあり得ること。アウトボクシングを嫌う人が採点に入れば、これくらいの差になることもあるスポーツである。

 いずれにしても、アルバレスのアグレッシブかつパワフルさをジャッジが取っていたということだ。そして、若いスターとして彼に大いなる期待を寄せていることが明確に分かる試合でもあった。コットは敗れたことで、今後はどうなるのかにも注目が集まる。中重量級は35歳を越えても一線級でやれないわけではない。それでも踏みとどまることができるのか、注目していきたいところである。

 さて、アルバレス。彼はこれでスター候補として名を残すことに成功した。しかし、その先に待っているのはさらに高い山だ。それこそがゴロフキンであり、今後出てくるであろうライバルたちだ。その実力の高さは誰もが認めているところである。若いメキシカンとしても、ここで自らの強さを誇示していかねばならない時が来ている。25歳となったカネロは、もう子供ではない。トップレベルの選手であるという自覚を持ち、最強の相手と呼ばれる者たちをこれから叩き潰していかなければならない。

 生きるか死ぬかの格闘技の世界はかなり厳しい。だからこそ、負けずに勝ち続けるフロイド・メイウェザー・ジュニアは素晴らしいわけであるし、パッキャオもすごい。そして、アルバレスが負けた数はわずかに1。しかし、その数字とは裏腹にすっきりとしない結果が何とも言えない。だからこそ、ゴロフキンに勝利することは至上命題となっている。

 ひとまず、勝利した。しかし、安心はできない。私は次にゴロフキン戦となることだけを楽しみにしておくこととしたい。