殴るぞ

色々と思いっきり話します。

亀田興毅のスーパーチャンピオンベルト授与から見る、日本に戻ってくる可能性とメリット

 亀田興毅WBA世界バンタム級のスーパー王者に贈られるベルトが授与された。WBA王座を8度防衛したことからの功績と考えていいものであろう。しかし、主にボクシングファンは亀田を嫌う人が多い上に、弟の大毅と対決したリボリオ・ソリス戦での騒動によって冷ややかな目を持っている人物が大半だ。なおかつ、その挑戦者についてもウーゴ・ルイス以外には目立った選手はいない。彼のスタイルからしても、長所を打ち消すスタイルだけにどうしても釈然としない結果となる試合が多い。確かに、彼の試合を見るくらいならば山中慎介井上尚弥の試合を見たほうがはるかに有益かもしれない。エキサイティングで、見ていてわかりやすいのは確かである。

 だが、今回はそのことについて書く気はない。書いていきたいのは「どうして1年経過した今このタイミングでベルトが授与されたのか?」、そして「その目的は?」ということである。なぜ書くのかというとわざわざ1年も経過しているにも関わらず、わざわざ彼らの陣営から「スーパー王者のベルトをよこせ」と要求する理由が見えないからだ。普通であれば、返上するタイミングでなら要求するかもしれない。それならまだわかる。

 しかし、今回はまるっきり1年空いている。追放が正式に決まったからだろうか。それもあるかもしれない。元々WBAと亀田陣営に密約が囁かれているから。正直に言えば、それはあまり関係ないように思える。だとするのなら、河野公平との入札はもっと強制力のあるものとなって良かったはずだからだ。日本人対決を日本の興業でやることができないことにメリットもそれほど感じない。正直言えば、WBAにとっても亀田は「厄介者」でしかないのだ。

 まず目的から行くとしよう。おそらく亀田陣営は興毅の4階級制覇に向けて動き出す可能性が高いということ。スーパー王者である以上、王座返上せずとも世界王者と戦うことができる。これはアンセルモ・モレノがアブネル・マレスと対戦した時にもそうであったからだ。ちなみに負けても、モレノはあくまでも挑戦者という立場なためベルトを失うこともない。尚且つスーパー王者であるというファクトがあるわけだからメリットも陣営としては大きい。現状でスーパーフライ級が考えられるわけだが、世界タイトルから見て現状狙えるのはIBF王者のゾラニ・テテのみだ。WBAの河野は入札すら行われなかったし、WBCのクアドラスはプロモート先が帝拳なのでどちらかが歩み寄らない限りはおそらく無理であろう。WBOのナルバエス井上尚弥に負けるため、もし勝利することがあれば対戦するかもしれない程度の確率だ。そう考えると、テテは負傷明けで防衛戦を組むために、3階級王者と戦うというメリットはかなりあると思う。

 では、なぜこのタイミングだったのだろうか。おそらく、経緯としては弟・和毅のプロモートをアル・ヘイモンと業務提携したことにあると思う。その当時は和毅だけが世界王者のベルトを持っている状況。日本でライセンスがないためにこのままでは防衛戦が組めないという苦肉の策だったのかもしれない。あるいは、元々ゴールデンボーイプロモーションズとの人脈があったから、ヘイモンとの契約に漕ぎ着けることができたのだろうか。いずれにしても彼とプロモート契約を行うことは大きな意味がある。まず確実に、大きな興業で試合を行うことができるからだ。フロイド・メイウェザー・ジュニアやサウル・アルバレスの前座として試合を行うことができれば、名前を売ることができる。トップランクで契約した村田よりもはるかに条件でも優れているはずだ。

 ヘイモンとしては将来有望な和毅とセットで兄弟を売り込みたいと考えているはず。8度防衛した実績と加味してチャンピオンベルトを贈呈するように働きかけたのは、亀田陣営の意向よりもヘイモン氏の意向が強かったのではないかと考えられる。より興業に付加価値をつけたいと考えたのかもしれない。

 そう考えてみると、だ。亀田にとってわざわざ日本に残って試合を行うメリットなどどこにもない。日本では白い目で見られている状況の中で、自分自身3階級を制覇したという実績がある。それも日本人で唯一だ。尚且つ追放されても大きなプロモーターと契約できたのだから、「内容よりも結果」と考えるのであれば十分と言える。和毅がテクニックがしっかりとした面白いボクシングをするのであれば、十分に商品価値はある。そこにセットで入ることができれば、興毅が4階級制覇を達成することができる。ヘイモンとしてもアジアのマーケティングを広げるチャンスともなる。なおかつ軽量級でペイパービューを生み出すこととなれば、売り方次第では日本人でもラスベガスへの道が開かれることとなる。今、ラスベガスでメインを張ることができるのがノニト・ドナイレくらいしかいない。それはトップランクGBPも中重量級以降しか価値がないと踏んでいるからでもある。

 亀田はそこの先駆者となればいい。これは全てぼくの空想ではあるのだが、それほど大きな構想が彼の中にあるのだとしたら。本当に彼らはセルフプロデュースのうまい兄弟だとすら感心してしまう。そして、現に興毅はプロデュースという面で言うのであれば日本人の中でもっとも優れたプロモーターとなりつつあると言える。これは確かなのだ。

 今回のスーパーチャンピオンベルトがそこまで絡んでいるとすれば、実に面白いとは思わないだろうか? いや、思わないのだろう。様々印象が悪い亀田三兄弟。特にボクシング好きは毛嫌いする人が多い。だが、そこで思考停止しないでそこまでわざと勘ぐってみる、調べてみるのはとても面白いことだ。これで、ラスベガスで本当に亀田トレインが見れるとしたら。ぼくはそれでも放映しないであろうエキサイトマッチを馬鹿にすることだろう。そして、ジョー小泉が悔しがる姿もぼくは見てみたい。