豪栄道豪太郎「いや、豪太郎は本名です~天才力士~」
意外にニュースで話題にならないのが、豪栄道の4連勝ではないだろうか。日本人大関の稀勢の里、琴奨菊と比較して話題にならないが、彼も立派な大関の一角である。ましてやアマチュア時代からの超エリートでもある豪栄道豪太郎、本名・澤井豪太郎は大阪の寝屋川で育った「相撲の天才」なのだから。
稀勢の里には白鵬にも負けない馬力と豪快な投げが武器としてある。琴奨菊は彼の代名詞ともなっている「がぶり寄り」無くして語れない。では、豪栄道はどうだろうか。豪栄道は持ち前の相撲センスと大阪人らしい思い切った判断をする力士と言える。その一方でダメなときはとことんダメなふり幅の激しい力士であり、琴奨菊と並んでどうしてもむらっ気の激しい力士であると言える。
しかし、ハマったときには滅法強い力士であることは変わりなく、ここという場面での思い切りの良さは気風の良さを示している。天才肌の超エリートは、ともすればやや淡白にも映り、そういう相撲を取る力士はどうしても好角家の受けは悪くなってしまうのではないだろうか。
何よりも大関に昇進してからというもの、豪栄道の成績はおおよそ大関の力士とは思えないほど低迷していた。当然立場が上になっているのだから、研究されてしまうのは致し方ない。しかし、優勝争いをするどころか勝ち越すのもやっとという体たらくではどうしようもない。昨年の九州場所ではカド番まで行ってしまい、千秋楽でなんとか勝利を拾ったはいいが、豪栄道という力士がここまでの力士として終わってしまうのかなと感じていた次第である。
しかし、元々地元大阪での場所は強い豪栄道。直近5年間での大阪場所はすべて勝ち越しで自己最多の12勝を3度大阪場所で記録しているのだ。今年の春場所は特に調子が良く、稀勢の里や白鵬と並んで優勝争いを繰り広げるなど、大関としての意地を見せつける場所となった。
最後の最後で白鵬のあの変化があったものの、日本人大関がこのように優勝争いに絡んでくるというのは相撲界にとってもポジティブな一面であったはず。それも琴奨菊が日本生まれの力士として10年ぶりとなる、幕内最高優勝を達成したことに刺激を受けたこともあったのかもしれない。
「ガキ大将がそのまま大人になった」と実の母から評された豪栄道にとって、きっと先に優勝されることは許しがたい出来事であったのだろう。現に5月場所もここまでは、勝ちっぱなしの4連勝。まずは中日、それから上位力士陣と取り組んでいく中で一日一日をきっちり取っていけば優勝も見えてくるような気がする。
さて今回の豪栄道だが、どうも体の面では不調が相次いでおり十分な稽古が取れなかったと聞く。全場所でも右太ももの内転筋を痛めたまま出場したこともあり、その太ももが肉離れを起こしてしまったのだ。春巡業は欠場し、稽古総見でもコンディションは良くなかったのかあまり顔を出さなかった。一方で直前の部屋げいこでは精力的な動きを見せており、調子もかなり良くなってきていたようだ。肉離れはクセになりやすいものであるし、十分な注意は必要ではある。それを差し引いても調子が良いとあれば豪栄道にももっと期待を寄せてもいいのではないだろうか。
いつだって人は「まさか」が大好きである。予定調和というものよりも驚きの展開がある方がいい。稀勢の里や琴奨菊に注目が集まっている今、誰からも注目されない豪栄道が大活躍をしたとしたら(もちろん大関なので、完全に無視ということや他の力士よりもスポットライトを浴びることにはなるだろうが)。この5月場所は更に盛り上がる気がするように思えるのだ。なるほど、競馬で倍率の高い馬に賭けたくなるという人の心理が良く分かるというものだ。そう、豪栄道とは大穴なのである。
さて、今回はそのライバルでもある稀勢の里も絶好調。恐らく横綱勢も白鵬という巨大な絶対王者を相手に負けられないという思いが強いはずだ。大盛り上がりを見せた大阪場所のようなハイレベルな争いを見ることができれば、相撲人気はますます盛り上がりを見せていくような気がする。
そしてそのためには稀勢の里や琴奨菊だけではダメなのだ。豪栄道や勢といった力士も続いていかなければならない(ちなみに次回は勢について書きたい。大ファンなのだ)。この夏場所はタフで激しい取り組みが多く見られるかもしれないし、熱い譲り合いが見られるかもしれない。当然ファンとしては前者を見たいわけだ。
そこには稀勢の里にも負けない対立構造とアングルが必要だ。がぶり寄りの琴奨菊。絶対王者・白鵬。公務員横綱・鶴竜。満身創痍の横綱・日馬富士。天才肌の豪栄道と成りあがり力士・勢(入れたくなるほどの大ファンである)。好角家はそれだけ激しい戦いと熱い場所を待ち望んでいるわけだ。中日までは上位陣が戦うことは、まずない。問題はそこからだ。
テレビの前でも、国技館でも。全国が見守る中で。ガチの戦いが、始まる。
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