殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ホルヘ・リナレス-ワシル・ロマチェンコ「ハイテクの綻び」

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 6ラウンドのダウン。思わず私も画面の向こうで驚いた。ラウンドを重ねるごとに不利になっていく中で、リナレスが打ち込んだ右カウンター。乾坤一擲の一撃とはまさにこの事か。思わず驚いてしまう程のそのカウンターに、「ハイテク」と呼ばれたロマチェンコの弱点を浮き彫りになったことは事実だ。

打たれ弱い」としばしば言われるリナレスは、ファン・カルロス・サルガド戦やアントニオ・デマルコらにその脆さを見せてきた。だからだろう、前日軽量で約61㎏あった体重を当日約69㎏にサイズアップしてきたのは。一方でロマチェンコは大体1.5㎏戻しただけ。それだけ打たれ弱さを警戒し、サイズアップしてきたことでロマチェンコのパワーに耐えうるだけの体に仕上げてきたと言ってもいい。

 恐らくだが、リナレス陣営はショートレンジで戦うことをプランとして、ロマチェンコに打ち負けずに圧力で圧倒する戦いに持ち込もうとしたのだろう。だからこそ、リナレス本人が持っているスピードを最悪殺すようなこととなったとしても。

 結果としてそれは実らなかった。故に作戦は失敗したと結論付けられるわけだが、例えばこれがリナレスよりも遥かに打たれ強い選手であればどうなるか……。そこには注目したいところである。また、リナレスも終盤まで粘った気持ちは評価されるべきだろう。

 

◆「エリア」に踏み込むリスク

 リナレスが6ラウンドにダウンを奪った。これは間違いなく称賛されるべきだったし、事実リナレスの右ストレートは私も驚くほどにハンドスピードと破壊力を感じた物だった。それ以降も一進一退の攻防を繰り広げる事が出来たのは紛れもなく、ロマチェンコの「エリア」に踏み込んだというリスクを負ったからこそだろう。

 だが、小柄なロマチェンコに対してその選択は余りにもリスクがあり過ぎたと言える。事実、リナレスは被弾も多かったし、試合終盤にはカットして出血した目を中心的に攻め込まれるシーンが相次いだ。

 相手の距離で戦うということは、それだけリスクがあり尚且つダメージを負う覚悟をしなければならないと言う事。実際にリナレスは試合終盤になるとジャブが出ずに右ストレートに依存するしかなくなってしまった。それだけロマチェンコの攻撃に消耗してしまった結果だろう。

 もう少しメリハリをつける事は出来たかと思うが……。いや、これがロマチェンコが相手に逃げ回らせないスキルなのかもしれない。リナレスの作戦が間違っていたとは言えないし、単純にプラン以上にロマチェンコが凄かったと言ったところ。踏み込まざるを得なかったのか、それともあえて踏み込んだのか。こちらはどちらも正しいのだろう。

◆ロマチェンコの今後の課題とは?

 ライト級である程度戦えるという事が証明できたうえに、何よりも「ゴールデンボーイ」と呼ばれたエリートボクサー相手に自らの実力を誇示する事には成功した。井岡一翔が持っていた最速3階級制覇記録を塗り替えて、更に成長を加速させていくであろうロマチェンコ。

 そんなロマチェンコも今後は階級の壁にぶつかるかもしれない。今回のリナレスから喫したダウンによって「もしかしたら倒せるかもしれない」という淡い期待感が生まれてしまったのだ。普通に考えればフェザーから階級を上げてきていることを考え、何よりもフレームもライト級の体つきで無い事を考えれば今を逃さない手はないだろう。

 恐らくだが、今回のリナレスと同じような戦い方で挑んでくる選手たちは多くなるはずだ。ロマチェンコを体のパワーを活かす事で押し込み、疲労とダメージを蓄積させたところでカウンターを浴びせるという戦法だ。

 ただし、それには2つの条件がある。まずはカウンターが上手い事。そして、多彩かつ強力な攻めに耐えられるだけのタフさがある事。特に後者はとても大事だ。ロマチェンコの「エリア」に入るリスクを負うには、それ相応の能力が必要なのだから。

◆「イーブン」以上にあった能力差

 リナレスはよく粘った。正直あそこまでやれるとは思わなかった。一方的な展開さえ予測できたほどだ。それだけ彼自身もこの試合に賭けていた物は大きかったのだろう。その気迫、そして見せつけたタフさ。そしていい試合になったという内容について私もとやかく言うつもりはない。本当にリナレスは頑張ったと思う。

 だが、それ以上にやはりロマチェンコは凄かった。採点はドローとリナレス有利、ロマチェンコ有利と三者三様に分かれた訳だが、私はそれ以上にロマチェンコとリナレスの能力差を痛感する事となった。あのまま行っていても最終的にペースダウンしたリナレスがロマチェンコを捕まえきれずに試合を終えていたかもしれない。

 出血箇所への集中攻撃、見せたパンチの多彩さ。試合終盤になってもロマチェンコの頭の中が整理されていた何よりの証拠だ。そして、自分がダウンというトラブルでさえも冷静に対処し、自らの「エリア」にリナレスを踏み込ませてみせた。恐らくは自分がペースダウンする事も想定していたのかもしれない。

 結果として拮抗した試合にはなったが、ロマチェンコが持っていた能力全てを使っての勝利だったと考えると、やはり能力差はスコア以上にあったと考えるのが妥当だろう。これはリナレスを貶めている訳ではなく、そこまで引き出したいい試合だったと言う事でもあるのだ。

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