殴るぞ

色々と思いっきり話します。

グランパス新喜劇

 その速報を目にした瞬間、大笑いしてしまった。

 不謹慎なのは分かっている。頑張っている選手たちには失礼であると承知している。それでも、手を叩いて爆笑してしまった。何に爆笑したのか。名古屋グランパスのJ2降格だ。西野朗氏が退任してから招聘された小倉隆史氏は現場が初めて、それをサポートできないスタッフにフロント。6年前のドラガン・ストイコヴィッチ氏が監督を務めていた時と比較してあまりにも歪なチーム構成となっていた。

 どうしてこうなってしまったのかについては多くの人が語っているので、詳しくは言及しない。実績では無く知名度を重視した出向組、シモビッチ以外の頼みの補強が機能しないという現実。ボスコ・ジュロヴスキー氏の就任に闘莉王の復帰があって持ち直した時期もあったが。

 J2降格という名古屋の「喜劇」は何一つ変わらないまま、とうとう現実のものとなってしまったのである。

 しかし、これは何も今年からいきなり始まった傾向ではないということを、多くの人は存じていることと思う。むしろ兆候は2010年のJ1優勝からあったのだ。当時のメンバーはどの選手も脂の乗っている選手ばかり。個の能力では突出しすぎていて、控え選手が出てくる余地もない。そして、その選手たちを中心としてチームは動いていた。

 当然、それで選手たちが元気なうちは良い。それが徐々に通用しなくなってきたら。ピクシーは奮起を促すことはできても、若い選手たちを抜擢させて活躍させる手腕は無かった。当時を知る人からしてみれば、シーズン中の負荷の高い練習をしていなかったことは有名だった。実績ある選手たちで固定され、若く勢いのある選手は控えに甘んじる。そして、ツケは後任監督でもある西野朗氏に丸投げされることとなってしまった。

 西野氏の下では、負荷の高い練習に慣れていない選手たちが相次いで離脱。「緊縮財政」になっていた中で能力の高い選手たちの補強は考えられない状態。結局は闘莉王に依存せざるを得ず、チームを変えることはできなかった。ケガで離脱されてしまっては、いくら若手育成に定評のある監督でもお手上げというものだろう。プランニングがすべて崩れてしまうからだ。

 小倉氏については、正直に言えば想像通りであったわけだし、名古屋としてもそんな新人監督に対して何かしらのサポートはあったのか怪しい。何より、名古屋は下部組織出身で活躍した選手の記憶がない。あるとしたら吉田麻也くらいではないか。結局、即戦力に依存したやり方でチーム内財政が悪化し、強化策が一切機能していなかったということを露呈してしまった。喜劇は最初から起こる下地がそこに存在していた訳である。

 選手たちにも批判の矛先が向いて然るべきだろう。最終的にピッチでプレーするのは選手たちである。例えばヴァンフォーレは選手たちの結束力が鍵となって残留したのだから。果たして一つになっていたのか。

 色々なことが要因となっていたことは否定しないが、闘莉王復帰までこの体たらくであったのは、選手たちもチームになり切れていなかったのではないかと思う。もちろんそれをマネジメントするのが指揮官の役割ではあるが、長年チームを率いてきた楢崎正剛にさえも「みんな楽することを考えずぎ。やりたいことをやればいいわけではない」とメディアを通して苦言を呈される状態が続き、そしてそのまま泥沼化していくしかなくなってしまったのである。

 かつて闘莉王は古巣の浦和が優勝を逃す大失速をした時に「男が居ない」と苦言を呈していたが、名古屋は闘莉王でさえも「男」ではなかったということになるだろう。

 いずれにせよ、吉本新喜劇でも起こり得ないようなドタバタ喜劇は結局現場を振り回し、選手たちをこの何年間も振り回し、そして応援してくれるサポーターが涙を流す結末と相なってしまった。「喜劇」はまだ続きそうで、チームの中心選手だった小川佳純を始めとする9名の選手が契約満了を告げられ、闘莉王もボスコ監督も久米社長も退団することとなった。

 闘莉王の退団はまだしもボスコ氏と久米社長の退団は、却ってチームの方向性を見失わせる手法に十分なり得る。終わりの見えないこのコントで、名古屋グランパスはどこまで楽しませようとしてくれるのだろうか。

 だが、散々書いておいてこんなことを言うのもあれだが、プロのクラブチームとしては0点である。このような結果を招いた強化しかできなかったグランパスの経営陣の罪は重い。同じトヨタ系列でも、バスケットボールのアルバルク東京シーホース三河は言うまでもないほどの成功を実業団時代から収めてきているのだ。どこでどうして差がついたのか。それを真剣に考えなければ未来はないだろう。

 名古屋をめぐる新喜劇はまだ続きそうな気がする。名古屋サポーターの方々には申し訳ないのだが。

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