殴るぞ

色々と思いっきり話します。

赤土の決戦

 グランドスラム唯一のクレーコート大会がいよいよ今夜に迫ってきた。全仏オープンとは、ウィンブルドンや全米、全豪と比較してもどこか特殊なお祭り感があるように思える。ウィンブルドンはどこか神聖で、全米と全豪はまた違った趣があるが、どこか全仏だけはそれとは一線画した雰囲気がある。なぜなら、あのパーフェクトに近い印象すらあるロジャー・フェデラーでさえも全仏オープンでは1度しか優勝経験がなく、ノバク・ジョコヴィッチもまだ優勝経験がない。前回優勝したのはスタン・ワウリンカ。クレーコートとはそれだけ特殊なグラウンドで行われる大会なのである。

 スピードが出にくいとされるクレーコートでは、イレギュラーバウンドも多くラリーも長引きやすい。そのためフットワークとトップスピンの効いたショットを打つ選手にはこれが滅法有利となるのだそうだ(何分ニワカなので、Wikipediaで調べた情報しかないのだ)。故にパワフルでフットワークに定評のあるラファエル・ナダルやロビン・セーデリングのようにパワーショットに定評があった選手が強かった。特にナダル全仏オープンで滅法強く、5連覇を含む最多9度の優勝を達成しているほどだ。

 そんな「クレーコートの大会」には“スペシャリスト”が多く勝ちあがる。たとえば、前述したナダルは間違いなくクレーコートスペシャリストといっても過言ではないだろう。他にもスイスのスタン・ワウリンカはあの絶対王者・ジョコヴィッチを破って優勝を勝ち取った経験もある。地元枠で言ったらジョー=ウィルフリード・ツォンガも面白いところだろう。どのコートでもまんべんなく結果は出すタイプではあるが、近年は主に全仏オープンでの活躍が印象的である。

 ロジャー・フェデラーの欠場が残念なところではあるが、それでもBIG4もそれぞれの思惑が絡んでおり楽しみである。例えばナダル復権に燃えており、得意とするクレーコートでどれだけその復活を印象づけるかどうかが鍵と言える。また、ジョコヴィッチはキャリアグランドスラムがかかった大会である。前述のようにフェデラーでさえも獲得に苦労した大会。ジョコヴィッチにとって絶対王者としての期待がかかる大会となっているのだ。

また、直近のクレーコート大会で結果を残したアンディ・マレーの活躍にも期待がかかる。あの時は錦織との対戦で消耗しきっていたとはいえ、ジョコヴィッチを圧倒。クレーでも適性があることを証明してみせた。

 さて、そんな中で我らが錦織圭であるがクレーコートでも強い。コートの向き不向きが選手によって別れる中でも、錦織はクレーとの相性もいいように思える。これは2014年のデータになるが、クレーコートでの勝率は10勝2敗で.833。ハードコートではめっぽう強い印象もある彼だが、クレーでの勝率も意外と悪くない。優勝経験もあるATP500や250の大会においても、ハードコートと並んでクレーで勝利しているのだから、相性はすごくいいのだろう。

 ローマ・オープンでもジョコヴィッチ相手に熱戦を繰り広げ、リシャール・ガスケやドミニク・ティエムと言った実力者も退けた。順当に勝ち上がれば、一番最初に当たるのは最も状態のいいであろうマレー。かつてはクレーコートを苦手としていたスコットランド人も、昨年クレーでの初優勝を遂げてからは調子も良いだけに、錦織にとってはいきなりハードな試合となるだろう。その次がワウリンカもクレーにめっぽう強いスイス人選手なだけになかなか辛い試合が続く。きっちりと勝利してグランドスラム初制覇へとつないで欲しいと思う。

 そのためにも一線必勝はもちろん変わらない。そんな錦織の対戦相手はシモーネ・ボレッリ。ダブルスでは全米オープン制覇をした経験がある実績を持っており、世界ランキング最高位は36位だ。

 過去の対戦成績では錦織の2戦全勝だが、いずれもフルセットまでもつれ込んでいる。試合巧者とも呼ぶべき老獪な選手で、安定して2回戦や3回戦を勝ち上がってくる選手でもある。粘り強いストローカーというのが定評のようで、錦織とはガッチリと噛み合ってしまうのも頷ける。

 長いラリーを得意とする錦織ではあるが、ここからの長い戦いを考えたときにどうしてもペース配分というのは考えたい。老獪な相手であれば尚更だ。絶対王者・ジョコヴィッチとクレーの帝王・ナダルが反対のブロックにいることは何よりも恵まれている。その代わりワウリンカやマレーという強敵と対戦することとなったわけだが。マレーやワウリンカにはそれぞれ1勝しかしていないだけに、苦手意識が残っているかどうかも鍵だろう。

 錦織の課題は技術面もメンタル面でもまだまだある。特に、こういうトーナメントでは多くの場合決まった顔になりがちだ。技術面はよくわからない。しかし、精神面ではそれを乗り越えられそうな試合を見せてくれた。それがローマでのジョコヴィッチ戦だった。もうダメかと思われたところからの巻き返しはもっと評価されてもいい。全豪から続いたマスターズの戦いを経て、クレーでの自信を確信に。

 さあいよいよ始まる。クレーコートの決戦は今夜だ。

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