殴るぞ

色々と思いっきり話します。

錦織圭「テニスの王子様」

 錦織圭選手がすごい。いや、知っているよと言うかもはや言うまでもないことではあるけれど、とにかくすごい。自分の必勝パターンまで粘って最終的に勝利を拾うことができるようになっている、というのが直接の勝利に結びついている要因だそうだが、そこは私が言及せずとも多くの人が理解しているところではないだろうか。ATPが現行のルールとなり、絶対的に強いBIG4と呼ばれる選手たちによって、多くのタイトルが独占されていた近年。しかし、そんな現状にストップをかけようとしているのがこの日本人プレイヤーであるということ。ファンからしてみると、テニスが世界的にみて強い選手が出てこなかったここ何十年という現状もあるだろうから、感慨深いものがあるのではないだろうか。

 そう考えると、錦織選手は「テニスの王子様」に出てくる越前南次郎のようである。いや、あんなスケベオヤジではないというのは理解している。多分プレースタイルも違う。何よりも一種のエリートとして錦織選手は渡米しているのだから、それもまた違う。南次郎の場合はほとんど単身であったのだから(詳細な描写が描かれていないので、何とも言えない部分もあるが)。しかし「日本のテニスプレーヤーも世界に通用する!」という一点において、錦織選手も南次郎も同じであると言えるのではないだろうか。

 そんな錦織選手もテニスの王子様を愛読していた世代の一人。学年で言えば彼が私より1つ上なので、ちょうど連載が始まった時には小学生。漫画原作の本編は、キャプテン翼張りのとんでも技が出てきていて「テニス」ならぬ「テニヌ」となってしまったわけだが、当初はれっきとした「テニス漫画」だった。錦織選手はそんな漫画に出てくる技の真似をして、自分のプレースタイルに取り入れていると聞く。

 思うととんでも技漫画の一つである、キャプテン翼を見てサッカー選手になったという例もある。フェルナンド・トーレス師匠は翼くんに憧れていたというし、川口能活選手は若林くんに憧れていたという話もある。アンドレス・イニエスタ選手にハメス・ロドリゲス選手もサッカーの虜にしたのだ。それと同じように錦織選手もテニプリから色々と感じ取るものが多かったのかもしれない(ちなみに私は不二周助が好きで、絶対にコイツはリョーマから主役を奪い取ろうとしているに違いないと考えているが、今回の話とは一切関係はない)。

 そんな錦織選手の特徴といえば、アップテンポにかつ粘り強く戦うプレースタイル。イケイケで攻めていくところは南次郎というよりはリョーマに近い。南次郎は化物じみた強さがあったが、それと比較してもまだまだ錦織選手は化物じみているかどうかは疑問だ。

 グランドスラムやマスターズ1000でのタイトル獲得経験が未だなく、なおかつ相手も錦織選手がやってくることを把握している。ランキングが上になればなるほど、対戦相手からは弱点も研究される。もちろん錦織選手も研究はしているだろうが、上へと駆け上がっていく立場でありながら追いかけられている立場にもあるわけだ。そのような中で、彼はタイトルを獲得していかなければならない。これは相当な根気が求められると思うのだ。そのような中で彼が世界のトップに立つにはどうすればいいか。答えはシンプルである。だが難しい。それは「常に上へと登っていこうとする向上心」を持ち続けるかどうかではないだろうか。決して漫画の主人公でありがちな「最強キャラ」になってはいけないということである。

 そういう点で、テニプリはよくできた漫画だと思うのだ。なぜなら、主人公のリョーマが最強キャラではないからである。手塚国光という強烈なライバルにして目標の先輩がいて、父親というラスボスが鎮座している。最終的には南次郎という最強キャラを倒すことで漫画が終了するのだろうが(許斐先生に聞いていないのでそこは良く分からない)、だからこそテニプリという漫画がテニプリであるということではないだろうか。

 錦織選手はどうだろうか。ノバク・ジョコヴィッチという絶対王者がおり、ロジャー・フェデラーという越えていかなければならない存在が居る。錦織圭主人公のこの「漫画」を、果たしてどういう形で完結させることができるのだろうか。それが今から楽しみでならないのだ。

 そして、15年経過すれば彼は40を越える。アスリートとしてはもう終わりの年だろう。その時には錦織圭選手が本当に「越前南次郎」として次世代の「リョーマ」を育てていくことになる。その時にパイオニアとしての役割を彼には期待されているのかもしれない。

 完成されたストーリーはYouTubeでも見ることが出来る。しかし人の未来、これから紡ぎ出す物語をYouTubeで見ることはできない。だからこそ、我々は幸せなのである。なぜか。

 これから錦織圭という大きな物語を、リアルタイムで追いかけることができるからだ。2016年という物語の章にこれから何が刻まれるのだろう。

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