殴るぞ

色々と思いっきり話します。

スポーツとエンタメのあいだ

 2015年という1年もあと残すところ30時間を切ってきた訳だが、この1年を振り返るだけでもなかなか体験できないものを色々と味わうことができたのではないかなと思う。

 良かったことや悪かったこと。思い出したくもないこと。10人いればそれぞれが感覚として違うものもあるのだろう。ある意味エンターテイメントというジャンルはそういうものをすべて吹き飛ばして楽しむためにある。本来、スポーツというのはそうでなければいけない。その2時間だけでも色々と絡み合う複雑なことを吹き飛ばしてくれる。そうでなければいけないのだなというのを、この記事を書きながらしみじみと感じている次第だ。

 ボクシングなどの格闘技はある種「スポーツとエンタメのあいだ」にあるものではないのかなと感じている。なおかつ楽しむ人はとことん楽しむし、はまる。エンタメに視野を向けてみると、地下アイドルの追っかけやインディーズのバンド、売れない若手芸人に目を向けてしまうのはある種コアな人たちなのだ。何が言いたいのかというと、格闘技はそういうアイドルと似ているということだ。そしてそれは、ボクシングと比較しても例外にないということである。

 さて、昨日行われたダブル世界戦を見てみよう。八重樫東井上尚弥、いずれも日本トップクラスの選手である。激しい打ち合いで見る者の感動を呼ぶ八重樫と「モンスター」と呼ばれ、圧倒的な実力を見せつける井上。どちらも持ち味を発揮した良い試合だった。大橋ジムの方々も興業の成功に胸をなで下ろしていることだろう。

 なおこのダブル世界戦では「ハーフタイムショー」として、ももいろクローバーZの5人がスペシャルライブを行っていた。率直に申し上げると、あそこでハーフタイムショーをすることによって妙な違和感を抱いてしまったのだ。いくら興業で注目を浴びるためとはいえ、ももクロの軽いノリ(モノノフの方々には申し訳ないのだが)と真剣勝負の空気感にミスマッチが生じてしまったのではないかと思ったほどだった。

 しかし、それはあくまでもテレビ観戦していた人たちだけ。現地のライブで観戦した人たちからは概ね好評だったらしい。このミスマッチはなぜ発生したのだろうか。そもそも、なぜももクロだったのだろう。

 端的に言うと、ももクロのアングルにあるのはプロレスだ。プロデュースしてきた川上アキラさんはプロレス好きで知られ、ももクロのプロデュースにもそのアングルを使っているように見える。そう、彼女たちはいつだってガチ。興業のためであれば本気で立ち向かう。

 現地で観られた人たちからの評価が高かったのは、その彼女たちのひたむきさと会場を盛り立てようとする心意気。そしてパフォーマンスだった。テレビで切り取られたところしか見ていない人たちは、突拍子もないももクロに違和感を覚える。それは当たり前のことなのだ。あとは構成の問題なのだろう。

 たとえば、私のようなテレビでしかももクロをまるで知らない人からしてみると、「行くぜっ! 怪盗少女」くらいしか知らない人もいるわけだ。そこにいきなり新曲と言われると、余計置いてけぼりにされてしまう。ライブ組とテレビ組で温度差があったからくりはそこなのだ。つまり中継したテレビ局がハイライトで流すなり、曲の構成を変えるなりする必要があったのではないだろうか。それだけでも、テレビ組のシラケは解消できると感じた。

 さて最終的に興業としては失敗だったかと訊かれると、これは「大成功」と言える。多くのモノノフの方々にボクシングの面白さを知っていただける機会となったからだ。加えて、会場が一体となって八重樫と井上を応援する空気を作り上げた。それは今回のももクロのパフォーマンスによるものと考えていいと思う。この興業に関わった人たちの大勝利といってもいいだろう。これは素直に拍手を送りたいところ。

 朝日新聞の取材で「ボクサーは目立ってなんぼ」という亀田興毅のインタビューがあった。その通りなのだ。そうやってボクシングをアングラ的要素からエンタメにしていく。だからこそ、こういうイベントこそ大事になってくると私は考える。それを考えてプロデュースし、今回の成功へと導いたことは来年に向けても大きな収穫であると確信する。個人的にはももクロのポップなノリもいいが、RIZINのオープニングの方が好みではあるが。

 いずれにしても、これは大きな前進だと思う。大晦日を経て、来年もボクシング界から目を離すわけには行かなさそうだと感じ、楽しみになってきた。