殴るぞ

色々と思いっきり話します。

村田諒太が世界王者になれない3つの理由

 日本で一番、世界王者になると期待されている男がいる。ロンドン五輪のボクシングミドル級金メダリスト、村田諒太である。中重量級が多くひしめく中で、多くのボクシングファンが彼の世界王者戴冠を夢見ていることだろう。

 しかし、今の彼では世界王者になることはできないだろう。せいぜい取れても竹原慎二のように、1度も防衛できずに陥落する。むしろ、その可能性すらないのではなかろうか。そう感じてしまう。そう断言できるのにはやはり理由がある。今回は3つ、説明をしよう。

 まず一つ目に、彼の武器とは何かという話。打ち合いを好み、固いガードが武器のボクサーで、スタイルの本質はインファイターであるということ。182センチの長身でありながらもその本来のセンスを武器に金メダルを獲得した彼は、井上尚弥のような明確さや亀田興毅のような割り切りの良さが感じられない。

 中途半端な世界ランカーとばかり対決しているようだが、その程度の相手でスタイルが明確化されるとは到底思えない。解決策としては、環境を思い切って変えてみること。ボクシングの本場はラスベガスであることは変わらない。しかし、中重量級を生み出しているのは意外とヨーロッパ系にも居る。例えばだが、ドイツやイギリスといった環境に変えてみるのも、ひとつの手だと自分は思っている。

 二つ目に、ミドル級の層の厚さが言える。日本人にはミドル級よりも軽量級の選手の方が層が厚い。しかし、世界的に見ると真逆。むしろライト級以上の階級が圧倒的に選手のバリエーションも豊富なのだ。ミドル級でいうのであれば、かつての絶対王者であるセルヒオ・マルチネス。類まれなるテクニックとフットワークを武器としていた。

 そのマルチネスからタイトルを奪った4階級王者のミゲール・コット。攻防一体となったボクシングスタイルを売りとし、フロイド・メイウェザー・ジュニアとの試合では敗戦しながらもそのファイトある戦いぶりは大きな感動をもたらした。

 ゲンナジー・ゴロフキンも捨てがたい。攻めて攻めて攻めまくるスタイルと強打は圧巻で、3団体統一さえも視野に入れている怪物ボクサー。世界のミドル級において、最も強いボクサーと言える。他にも「カネロ」ことサウル・アルバレス、ディミトリー・ピーログ。テクニックにパワーやスピードに優れた選手がズラリと揃っている。一つ目の項目にも言えることだが、村田にはその「特長」が見えづらい。それで世界王者を狙うというのであれば、余りにも難しい。

 はっきりといえば、これだけの世界的なタレントが揃っているミドル級において、村田が勝ち取るイメージがほんの一瞬として沸かない。荒川仁人や石田順裕であればイメージが浮かぶのだが、村田にはまるで浮かばない。なぜか。三点目になるが、彼の戦術の幅だ。観客を喜ばせる戦いをしたい、村田はそれを信条にしているそうだが、残念なことにそれができても、時として安全運転をして勝利を得る技術が村田にあるのかどうか。大きな武器とともに、それだけの幅を村田から感じられない。

 何より日本という環境が痛い。現状、ミドル級で世界を戦える人物はそういない。人材で言うならば村田程度だ。石田順裕でさえも彼我の差を見せつけられて叩きのめされた。本気で世界と戦うのであれば、日本人と関わる環境ですら捨てなければいけない。彼ほどの人材は日本で一番ということに喜んでいても意味がないのだ。

 例えば、金メダリストであるアンドレ・ウォードは攻防一体の類まれなるテクニックを持っているが、その総合力はアメリカという環境が育てた。村田もアメリカ合宿を張ってはいる。しかし、今のままでは厳しい。突き抜けた武器がない分だけ総合力を高めるしかない。戦術の幅もそこから生まれるのではないだろうか。

 以上のように、世界への道は思っている以上に厳しい。それだけ価値のあることをやっていると言えるわけではあるが、村田にその自覚はあるのかどうか。未だ見えない、彼の突き抜けた物を見るまでにぼくはいつまで待てばいいだろうか。テレビでもリアルでも、いつになれば見ることができるのだろうか。

 KO勝利でも判定勝利でも、その人の素晴らしさは戦い方に凝縮される。村田はマッチメークによってなのか実力なのか。あるいはないのだろう。迷っているとも考えられる。未だ見ていない。井上尚弥亀田和毅は実力で見せた。山中慎介三浦隆司は明確だ。あまり好きではないけれど。内山は言うまでもない。

 では、村田はどうだろうか。彼には申し訳ないが、サンデースポーツに出ている暇などないと、批判的な考えで彼を見てしまう。はっきりと言おう。いずれかは獲ると考えているようだが勘違いしないでいただきたい。彼はプロの世界でまだ何も獲得していない。そんな保証などどこにもない。だからこそ、ボクシングは面白い。