殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ぼくが山中慎介のボクシングにエキサイトしない理由

 相手の良さを封じ込め、切れ味鋭く破壊力のあるストレートで相手を打ち抜く。相手はダウンし、やがてゴングがなる。山中慎介のいつもの防衛戦の光景だ。かつて日本にいた亀田とは違い、エキサイティングできびきびとした緊張感すら漂う世界戦。のはずなのだが、山中慎介にはどうにも興味が持てない。類まれなるキラーインスティクト(殺傷本能)すら醸し出している選手でありながら、その試合内容は決まっておんなじ。称えられるのは山中の凄みか相手の頑張りであり、それ以外に後味が何一つとしてない。

 もちろん、素晴らしい選手であるのだ。なのに、彼の試合で興奮したのはビック・ダルチニャン戦が最後だ。それ以降はKO勝利が予想される相手と戦ってKOする瞬間を「芝生が生えてくる」感覚でぼんやりと眺めているだけだ。いつしか、興味すら失せた。PFP9位の世界的な選手でもだ。

 まず、勝てる相手としか組まない。むしろ対戦相手に、突き抜けたすごさを感じない。どの選手もまとまっているが突き抜けていないか、基本がなっていない選手ばかり。一番すごかったので衰えたダルチニャンだから、今一つ彼のすごさに納得がいかないのだ。たとえば、ウィラポンのような強烈な存在感と破壊力あるパンチを備えているような選手か、長谷川穂積のような軽やかなステップを刻みながら相手をほんろうする様なアウトボクサー。リゴンドウのような全てにおいて完成されているパーフェクトなボクサーでも良いだろう。少なくとも、山中の王座を脅かすような存在を見せた挑戦者の記憶がないのだ。バンタム級にそれ相応の人材がいないというのもあるのだが。

 ただ、亀田興毅や他の選手にあったのかどうかと訊かれると、日本人では内山高志くらいしか思い浮かばない。山中には興味なくても、内山にはひどく興味があるのはそこだ。内山の防衛戦はファン・カルロス・サルガド、ホルヘ・ソリス、ブライアン・バスケス三浦隆司、ジョムトーン・チュワタナ。どの試合も非常にヒリヒリとするような緊張感すら生まれて興奮したものだ。そして、その相手を圧倒的な差をつけて勝利していく。山中からはそのようなヒリヒリ感を感じたことがない。おそらくこれからも感じることなく、芝生が生えるのをあくびをしながら待つ防衛ロードが続くのだろう。

 とはいえ、それを山中に求めるのは酷だ。マッチメークを決めるのは彼ではなく帝拳だ。それが二点目。帝拳にとって山中はドル箱。強い相手とやってもらうのは結構だが、それで「金蔓」がなくなってしまうことが、帝拳にとっては一番困るのだ。西岡利晃が世界王者を獲るまで、大阪帝拳を除いて日本人世界王者が出るまで20年も待った経緯がある。長期で防衛に成功しているのは、西岡を除くと三浦か山中だけ。いくら階級と団体が分かれたとはいえ、王座を防衛することはそれ以上に難しい。

 日本のジムで最多の世界王者を輩出している協栄ジムでさえ、佐藤洋太を最後にかれこれ3年近く世界王者が出ていない。なおかつ、今は大橋ジムが話題を大きくさらっている。ここで負けるようなことがあれば、メンツにもかかわってくるだろう。もし、山中でこけるようなことがあれば。帝拳としてはジムとしても選手たちにも大きな影響を与えかねない。それだけの存在なのだ。

 それだけに、帝拳としては村田諒太を何が何でも世界王者にしたいのではないだろうか。話題性は大いにある。ポテンシャルも日本人では中量級と比較しても飛び抜けている。間違いなく、数年後には世界王者をかけてリングに上がっていることだろう。山中はそれまでの「つなぎ」でもあるわけだ。だが、果たしてそれがいつまで持つか。村田が世界王者にならなければそれすら無意味。そして、これはぼくの勘だが村田は世界王者になるのは厳しいと考えている。その理由はまた今度論じよう。

 さまざまな思惑とが絡み合っているようにしか思えない山中の背景を見ると。それだけでもうんざりしてしまう。最後に三点目としてあげるのであれば、単純に選手として好きじゃない。そういうことに尽きる。