殴るぞ

色々と思いっきり話します。

永井謙佑 ~Wonder or Rubbish?~

「あいつは反則、本当にスピード違反」。高校時代、永井と対戦したことがある人物からそう教えてもらったことがある。トップスピードに入れば、どんな相手でもあっという間に置き去りにされてしまう。それが永井謙佑というサッカー選手の魅力であり、そして全てだ。福岡大学を経て、名古屋へ入団すると1年目から7得点を奪う。ただのスピードだけではない、彼の才能を誰もが絶賛していたものだった。2年目からは、完全に主力として2桁得点を奪う。この年は前半戦だけで7得点を奪うなど絶好調で、ロンドンオリンピックでは対戦したスペインのメディアに挙って絶賛されたほどだった。

 ロンドンオリンピック代表ではまさに彼が「戦術」だった。得点だけでなく、相手を追い回すチェイジングも、堅守速攻という日本代表の戦術も。永井謙佑というタレントを存分に生かすために考案されたのではないかと思うほど、彼は輝いていたのだ。そうして彼は、2年目のシーズンが終了したと同時にスタンダール・リエージュへと移籍する。海外でもあの驚異的なスピードを見せてくれると思っていたファンも多かったのではないだろうか。

 しかし、スタンダールでは出場機会に恵まれなかった。そして、彼の感覚は徐々に鈍り始める。ベンチを温める日々が続き、フィジカルトレーニングの影響から自慢のスピードを却って失わせてしまったのだった。失意のうちに2013年8月、レンタル移籍という形で名古屋に復帰する。

 復帰後の名古屋では再びCFとして起用をされると、見事に復活。自身のキャリアハイである12得点をマークしたのだから恐れ入る。それにもかかわらず、名古屋は前線にノヴァコヴィッチ川又堅碁を補強する(川又は2014年シーズン途中からの加入だが)。今年は彼らに押し出される形で、CFとしての出場機会を奪われる。そして、かつてのスーパーサブの枠には若手選手の小谷松知哉が鎮座している。気がつくと、彼のポジションはウィングバックになっていた。

 彼の持っているスピードと懸命に走る性格からして、確かにサイドでのプレーは適任である。しかし、本質はフォワードだ。確かに彼が宇佐美貴史のようなドリブルがあるわけではない。豊田陽平のような長身があるわけでもない。そのスピードと得点能力。失敗しただけではへこたれないだけのメンタル。それらを評価されてスタンダールへ移籍したはずだ。安易に出場機会を得るためにコンバートを受け入れたのだとしたら、端的に言って軽率としか言いようがない。

 ぼくはフォワードの彼からは「怖さ」を感じることがあった。それは、言葉では表現できないほど曖昧なものではあるのだけれど。敢えて言うならば「何かをやってくれるのではないか」という期待。だが、先日試合を見に行った時にはまったく怖さを感じなかった。それはなぜか。彼は前線でこそ生きる選手であると思うからだ。

 ワンダーボーイことマイケル・オーウェンと、ぼくは彼のスピードを重ねたことがある。ワールドカップでも活躍を見せた、イングランド代表のフォワードと同じだけの才能がかれの中で眠っている。そう考えると、永井の爆発的なポテンシャルが活きるのは前線なのだ。そして、それは数字が証明している。ほかに代わりのいないサイドで、守備に奔走させることがもったいない。それと比例するかのように思うように勝てていない名古屋。このまま才能を眠らせたままサイドでうもれていくのか、それとも「ワンダーボーイ」として前線で輝けるのか。永井の勝負の1年はもう半分を過ぎようとしている。