殴るぞ

色々と思いっきり話します。

メイウェザーvsパッキャオ Money(4)~Box God~

 TBEとは、Moneyが新たに自称し始めたリングネームである。47連勝を達成し、その強さはまさにThe Best of Everと呼ぶにふさわしい名前とも言える。カネロの愛称でも知られるサウル・アルバレスでさえも、まるで歯が立たずに大差の2-0で退けたのだから。もはや誰も彼に勝利することはできないのではないか。そのような諦観さえ浮かんできてしまう。ちなみに、カネロとの試合後には唯一ドロー判定をしたCJロス女史の頓珍漢さが再び話題となったことも明記しておく。

 その後は、弟分としても知られるエイドリアン・ブローナーを打ち破ったマルコス・マイダナと対戦。しかし、彼はボクシングをしようとせずに「レスリング」に走った。その結果は明白で、2度対戦して判定勝ちをいずれも収めている。この試合前には自身のウェブサイトで希望する対戦相手をアンケート形式で募集したことも話題となっている。プロモーション会社に縛られない。TBEは文字通り「最強の相手」と対戦できるだけの環境と条件を揃えたと言える。

 そして、それに耐えうる基礎体力。これだけハードに、そしてあらゆることを想定して行うハードトレーニングはかつてNBAの大スターだったマイケル・ジョーダンにも匹敵するのではなかろうか。MJもアクロバティックなプレーに目が行きがちだが、実際は正確な技術が裏付けているからこそなのだ。例えば、The Last Shot。決して派手なプレーではないが、そこには洗練された美しさがある。TBEも派手に見えて正確な技術と基礎体力の強化を怠らない。一見、つまらないと揶揄される彼のスタイルでもそう考えてみると美しく、ため息が漏れてしまうほどだ。

 これだけの大金を稼ぎ、最強の名を欲しいままにしてきているというのにそれでも彼は決して油断せず、完璧に身体を仕上げてくる。もちろんそれがボクシングというものだが、彼にはそこにこの競技への「愛」があるからと語っている。ゆえに、時折見せるトラッシュトークではボクシングという競技への強いプライドも垣間見せる(後に謝罪に追い込まれたこともあったのだが)。しかし、その愛が基礎体力の強化と技術力の向上を促していることは言うまでもない。意図的に「捨てラウンド」を作る老獪ささえ見せつけ始めている。38歳にしてボクサーとしての総合力も向上していると感じられるほどだ。

 試合はほとんどTBEが支配し、6ラウンドを過ぎるようなことがあれば大方彼の判定勝ちで間違いはないだろう。あとは、ゆっくりと芝生が生えていくのを眺めるようにラウンドを見ていれば、おおよそ試合の予想はつく。

 とはいえ、彼にも欠点はある。それは「打たれ弱さ」。ザブ・ジュダーとシェーン・モズリーとの対戦を思い出して欲しい。意外にも同系統のスピードを武器とする選手に苦戦することが多いTBE。加えて、一撃をしっかりと入れられた時にはダウンする可能性だって多いにあるのだ。現にジュダーは「ほぼ」ダウンを奪ったに等しかった。序盤からフィジカルコンタクトの多いバトルとなればいくらTBEとて消耗してしまうかもしれない。両者にはそれを遂行できるスタミナがなかったことで敗れたものの、Pacmanであればスタミナはある。マイダナのレスリングも決して間違った選択ではなかったとも言えるのだ。

 一方、Pacmanが前に出てくることなど彼は重々承知だろう。その上で、序盤からプレッシャーをかけるのかそれともあえて受身に立つのか。序盤からプレッシャーをかけてPacmanの連撃を抑えにかかるのであれば、いよいよ勝利はTBEだろう。

 Showtimeとの契約はPacmanとの試合を含めるとあと2試合。至高の戦いまで、あと3日。全てのボクサーを見下ろす頂に彼はいる。さらに上へと向かうために。最終決戦が迫る。