殴るぞ

色々と思いっきり話します。

メイウェザーvsパッキャオ Money(2)"Bye Bye Mr.Money"

 究極のディフェンステクニックを誇っていたPretty boy。無敗を誇る中でも、やはり印象に残る試合というものは多い。まず、フィリップ・ヌドゥ。続いて、ザブ・ジュダー。そして、”ゴールデンボーイ”こと、オスカー・デ・ラ・ホーヤ。リッキー・ハットンやアルツロ・ガッティなど、人気選手と対決してきたことはあるが、初期から中期にかけての彼を語る上ではやはりこの3人を欠かすことはできない。

 挙げた順に紹介していく。ヌドゥ戦は「才能の覚醒」、ジュダー戦は「天敵との邂逅」、ゴールデンボーイ戦は「スーパースターとの対決」。

「才能の覚醒」としてのヌドゥ戦について。1年前にWBC世界ライト級をホセ・ルイス・カスティージョから勝ち取る。2階級制覇を達成したが、多くのファンがその結果を疑問視する結果となったことも、また事実だった(後にダイレクトリマッチで圧勝したが)。その状況で強打のヌドゥを相手に戦ったわけだ。そして、この試合の5ラウンド。Pretty Boyは覚醒の時を迎える。ロープ際に追い詰められたPretty Boyはヌドゥが武器とする高速連打をすべて躱した。結果として7ラウンドでKO勝利を収めたこの試合は「フロイド・メイウェザー・ジュニアの中でも最高の試合」として位置づけられることが多い。

「天敵との邂逅」としてのジュダー戦について。アルツロ・ガッティと戦い勝利して3階級制覇を達成したPretty Boyは、4階級制覇の相手としてスピードスターとしても知られるジュダーを選んだ。スピード、反射神経はPretty Boy以上。復帰後のシェーン・モズリー戦でも苦戦しているところを見ると、スピードのある選手と相性が悪いのかもしれない。この試合では、ジュダーのパンチを何度も被弾する光景が見られた。Pretty Boyが敗れる時が来てしまうのか。そんな予感すら胸によぎった。しかし、5ラウンドからペースダウンをしてきたジュダーからペースを握ると、最後の乱闘騒ぎがあったとはいえ判定で勝利する。一撃必殺の強打でも、スピードキングでも勝てない。誰なら勝てるんだ?

 そんな心情が渦巻く中、「スーパースターとの対決」につながる。

 当時から、プライベートでも散々な報道をされてきたPretty Boy。世間はそんな彼を「ヒール」として認識し、未だ「スーパースター」として世間から尊敬を集めていたゴールデンボーイと対決する。当時B-HOPことバーナード・ホプキンスに敗れ、シェーン・モズリーにも敗れ。いよいよスーパーヒーローも終わりと思われていた矢先に復活の戴冠となった。Pretty Boyは彼を倒すことで5階級目となるスーパーウェルター級のタイトルを得ようと考えたのだろう。

 しかし、彼の身体はスーパーウェルター級をベストウェイトとは考えていなかったようだった。少なくとも、デ・ラ・ホーヤがアグレッシブに攻め込んでくるのに対して、Pretty Boyの身体は受け身。ミゲール・コット戦でもそうであったが、フィジカルバトルになると今一つ力を発揮できないのもそのせいなのかもしれない。その一方で、デ・ラ・ホーヤが疲れてくることを見抜き、ディフェンスで多くのファンを唸らせたことも言うまでもない。効果的でない連打はPretty Boyには通用せず、しかし判定は僅差で勝利という結果になった。

 それでも、Pretty Boyは認めてもらえなかった。金持ちで、尊大で強い。いつしか彼はMoneyと呼ばれるようになった。エキサイティングでないボクシングを望まない人がほとんどだ。いくら強くても、そのスタイルは認めたくない。そういうファンたちの心情にフラストレーションを溜めたのだろうか。

 リッキー・ハットン戦から半年経った2008年6月6日に、Moneyは引退を発表することとなる。「モチベーションを見出すことができなくなった」という言葉とともに。