殴るぞ

色々と思いっきり話します。

大迫傑はスーパースターだ

 東京の町田で生まれ育った彼の姿を見た人はこう語る。「異次元」と。全国の駅伝に出場するような選手というのは、それ相応の実力を持って殴り込みをかけに来る。大迫も紛れもなく東京都内には敵のいないスーパーランナーだったのだ。佐久長聖入学後も着実に実績をつけて、日本人のみで構成されたメンバーでは最速となるタイムで優勝した2008年のメンバーにも名を連ねている。翌年もエースとしてチームを牽引した大迫は、その翌年に入学した早稲田大学でもいきなり3冠の立役者となった。

 同年代には服部翔大、設楽兄弟、窪田忍、そして今季早稲田の主将を務める山本修平。才能とキャラクターに富んだ実にいい世代だ。大迫は紛れもなくそのトップに君臨する。

 何より彼には華がある。顔立ちがいいということもあるせいかとても目立つが、何よりも颯爽と走る姿は本当に風を切っているかのよう。伸びやかな走りぶりは人を惹きつける。そして、その華に見合った実力もある。鎧坂哲哉が持っていた10000メートル走学生記録を破ってみせたかと思えば、20歳にして全日本選手権10000メートル走で2位に入るという離れ業までやってのけた。高校の先輩にも当たる佐藤悠基に臆することなく挑んだその若きスターに誰もが期待を寄せる。

 何より、彼の中にはきっちりと「活躍するイメージ」が備わっているように思える。箱根で活躍することで終わることなく、世界で活躍をすること。世界選手権出場で満足するのではなく、世界選手権で結果を残すこと。そのために、大迫はあえて大学の練習を離れた。そして、実業団に入社したあとも個人で力を磨いてきた。大迫が求め続けているスタイルは、日本にはないと言いたげなように。そして彼は一つの結果を出した。高岡寿成が持っていた3000メートル走の日本記録を更新という結果を持って。

 佐藤清治にトラックでの想いを寄せていた人は多くいる。だが、彼が大成しきれなかったのは慢心と怪我だった。大迫にも同じ期待を寄せる人は多いだろう。あの伸びやかな走りは決して誰にも真似をすることができない。待ちわびていたスターのような存在。瀬古利彦、宗兄弟らが輝いていた時代を予感させるような、そんなワクワクを伴ってやってきた。ニューイヤー駅伝を見ていた人ならわかるだろう。設楽兄弟も窪田も。力のあるランナーである。その力の中心にまるでドンと立っているほどの存在感とワクワク感。何かやってくれると予感させるのはスターである。大迫はやってくれる。力のある世代の中で彼はスターになってきている。

 1年後のリオデジャネイロはトラックで走っているだろう。5年後の東京はロードで走っているのだろうか。それはまだわからない部分ではある。けれど、自信に満ちているようなその表情が真っ先にゴールテープを切ってガッツポーズをしている。ぼくはその彼の姿が今なんとなく想像できる。もちろん、未来のことはわからない。それを期待したくなるのが若手であり、そして何よりスターなのだ。

 大迫傑は箱根が生んだスーパースターだ。