殴るぞ

色々と思いっきり話します。

リゴンドウの機能美を感じよ

 この男が来日することが決定した時点で、ぼくは八重樫も井上尚弥も大晦日の紅白も全てどうでもよくなった。ぼくが今世界で一番美しいと思っている世界王者、ギリェルモ・リゴンドウが防衛戦を行うことになったからである。そのスタイルは言い表すのであれば究極の「理」。とにかく理詰めでシンプル。打たせずに打つを見せることなく教科書通りに戦えばそのようになることを、体で証明しているボクサーだ。

 1年前の4月30日。多くのファンがそうであったように、ノニト・ドナイレ(ドネア)との対決でも彼はとことん理にこだわった。勝つことを最重視し、好戦的なフィリピーノ・フラッシュに対しても徹底していたほどだ。そしてそのスタイルはエキサイティングではないと否定的見解が多く寄せられてしまい、ボブ・アラム率いるトップランクから契約満了後に延長をしないと通告されたほどだった。むしろ、金メダリストながらスタイルがつまらないキューバ人よりも村田諒太のようにムービースターのようにチヤホヤされている金メダリストがよっぽど金になるとでも思ったのだろう。

 確かにリゴンドウの試合はつまらない。エキサイティングさを求めるのであれば、三浦隆司の試合を見たり、八重樫東の試合をおすすめしたいくらいだ。天笠との試合でも打ち合うことはしないだろう。格下と見なせば倒しに来るかもしれないが。おそらく95%の確率で日本人挑戦者、天笠に勝利するだろう。残りの5%は単純な話で、その日のコンディションや調整等によって左右されてしまう部分というところだけ。それすら容易に感じてしまうほどの世界王者だ。

 結末の見えている映画は面白くないだろう。どんな道やストーリーを辿っても結局行き着く場所は同じだからだ。リゴンドウは明快だ。それしか引き出しがないからだ。だが、彼以上にそれを精密にこなせるボクサーは世界にそうそういない。だから勝てるのだ。だが、それでもぼくはリゴンドウの試合を観戦することをおすすめする。ボクシングを見るならリゴンドウの試合を見て欲しいと言いたいくらいにだ。敢えて言うのであれば、バリー・ボンズが現役バリバリの時期に日本でプロ野球をやっているような。ジダンJリーグでプレーしているような。ボンズはホームランを打ち、ジダンは華麗なプレーを見せることだろう。リゴンドウは世界のトップだ。ボンズジダンと違って派手さはない。けれど、そこには凝縮された機能美を感じる。

 リゴンドウは勝利したことで、その技術がトップオブトップであることを証明した。世界のトップレベルのボクシングを日本で味わうことができる。日本人世界王者は多くなってきているが、その一方で単純に世界王者の数も増加の一途をたどっている。だからこそ、ぼくは「本当の技術」や能力がより洗練された選手こそが本当に価値ある選手として認められることとなるのだ。

 リゴンドウはまさにその「洗練されている」選手である。特にジャブとストレートの正確さについてはどの階級の選手にも負けないだろう。大晦日、それを日本で味わうことができる。それも地上波だ。なんとついているのだろうか。TBSだフジだ、テレビ東京だ。そんなことはどうでもいいのだ。内山、井上尚弥。彼らもどうでもいいのだ。ぼくはただ一人、ギレルモ・リゴンドウ。彼を見ることができるのであれば、もう満足だ。

 日本人よ、大晦日こそリゴンドウだ。