ジョーとファーディナンド、挑戦することの違いとは。
さて、イギリスではボクシング界にとって面白いトピックスが出てきた。サッカーのイングランド代表でマンチェスター・ユナイテッド所属していた、元サッカー選手であるリオ・ファーディナンドがボクシングへの挑戦を公言したのだ。
ズブの素人がボクシングへの挑戦を公言する。イングランドのスターであり、世界的に名が知れているサッカー選手のファーディナンド。クラブレベルでは世界一を獲得したこともある男が、新たな世界として選んだのはボクシングだった。
イギリスもボクシングの盛んな国として知られており、最近だと岩佐と対戦経験のあるリー・ハスキンスを始めとして昔からボクシングが強い国としても知られている。思うと、かつてはお騒がせ男としても有名だったウェイン・ルーニーのアイドルはマイク・タイソンだったらしいので、そのような拳で殴り合う文化が染み付いているのだろう。
当然、比較をしてはいけないのだろうが、素人がプロの道へと進むという点では、どこかジョーブログと似ている気がしてならない。先日、3ヶ月でC級ライセンスを取得したあのYouTuberである。「ボクシングを舐めている」とまで言われたあの男とファーディナンド。当然違うのだが。
■ファーディナンドはどんな選手だったか? そして、なぜボクシングへ?
元々ファーディナンドは非常にコンタクトプレーに強い選手だった。イングランドのサッカーは身体をぶつけ合う激しいもので、そこで磨き上げられたパワーとキャプテンシー、そして戦術眼。名門ユナイテッドの守備を支え続け、ユナイテッドに黄金時代をもたらしたことは言うまでもない。
身長も188センチもあり、サッカーで鍛えた戦術眼とタフさを備えている。38歳という年齢がネックだが、ある程度のレベルまでには達することができるのではないだろうか。実際にイギリスではサッカーからボクシングへと転向したという実例もあるし、それほど悪い話ではないだろう。
「もう一度、コンペティティブな(競争力のある)世界に戻るチャンスだと思った。これを逃す手はないとね。見世物になるつもりはないし、当然、ボクシング界にとって失礼にあたるような振る舞いは絶対にしない。見ていてくれ、俺は真剣なんだ」。
現役を引退してからずっとファーディナンドは戦いに飢えていたのかもしれない。それはサッカーでなく、ボクシングという世界で自分を表現したかった。実にタフな男らしい理由だと思った。
まずはイギリスのライセンスを取得するところから始まるが、当然ながら厳しいボクシングのトレーニングが待っていることは言うまでもない。どれくらいのスパンでライセンスを取得して試合に臨むのかまでは不明だが、リッチー・ウッドホール氏がどのように鍛えてくるかも含めて注目したいところである。
■金持ちの道楽ととらえるか? それとも面白いエンタメとして捉えるか?
さて、翻って見るとジョーブログでは挑戦する際にやたらと誹謗中傷の声が大きかったように思える。というよりも、多くの人たちがTwitterなどを使用してこのように思っていたのではないか。
「無理だ」、「ボクシングを舐めている」、「YouTuberとしてのネタとしか思っていない」と。だが、最終的に彼は真剣に競技へと取り組む姿勢を見せることでその言葉を見事に封殺してしまった。元々アスリートであるファーディナンドには、同じような意見は全く見られない。もちろん、ここまでサッカーで積み上げてきた経験値があるわけだから、その点ではジョーと異なるのは自然だ。
だが、無謀な挑戦と考え1から新しいことを始めるという点において、一体何が違うというのだろう。少なくともジョーが亀田一家や内山を貶めたのだとしたら話は別だが、最後までジョーはやり切り、ライセンスを取得したという点において挑戦への評価をするべきだと私は思う。
ファーディナンドも同じだろう。38歳で、かつてのような強さは出せないかもしれない。だが、それでも挑戦しようとしている。それを道楽と取るか、新たな挑戦という私たちが楽しむ「エンタメ」として捉えるか。ボクシングという競技を広めていく上でもヒントは隠されていると思うのだ。
■今のボクシングにないもの。それは「物語」だ。
最近のボクシングには物語がない。非常に優秀な「アスリート」や「優等生」、そして「エリート」が出てくる中で、このボクサーを見たいと思わせるような選手がなかなか出てこないのだ(比嘉大吾はものすごく好きだが)。
世間はある意味で「異色の存在」に飢えている。だからこそ、「戦うフリーター」こと所英男は受けたし、那須川天心を「神童」と評している。それに昔になるが、飯田覚士さんはビートたけしの番組からプロデビューし世界王者にまで登り詰めた。
最強のYouTuber、大いに結構ではないか。サッカー選手がボクシングに挑戦というアングルも面白い。いつだって異色の存在が業界を盛り立ててきていることを忘れてはいけないのだ。
人は物語に感動するし、その物語に共感する。格闘技のようなシンプルな競技であるならば尚更、そうなのではないかと思う。
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