井上尚弥が井上尚弥として帰ってきたら
井上尚弥が9月9日にアントニオ・ニエベスとロサンゼルスで防衛戦を行うと聞き、個人的には少しほっとしたものだった。ローマン・ゴンサレスを倒す事が出来るだけのポテンシャルを持ちながら、目標としてきた相手が敗れたことでモチベーションの低下を訴えていたからだ。
以前、彼に対しては厳しいことを書かせてもらった。このままでは彼はボクシングを舐めたままキャリアを終わることになるのではないかと、個人的に危惧していたのだ。
本来、井上のボクシングはあれもこれもとわざをちゃらちゃらとひけらかし、無駄なパフォーマンスをするボクシングではない。しっかりとガードを上げ、ジャブとストレートを丁寧に打ち、ノニト・ドナイレのような一撃必殺の左フックで試合を終わらせるのが彼の真骨頂である。
そうした乱れたボクシングを正すためにはそれ相応の負荷が必要となる。ナルバエス級の対戦相手を用意するか、あるいはそれに匹敵するくらいプレッシャーのかかる舞台を用意するかのどちらかだ。どうやら大橋会長が選んだのは後者のようだった。それは、とても正しい判断だったと思う。
◆海外防衛することで見えてくる井上の成長速度
井上は今まで信じられない速度で成長してきた。普通に考えて、プロデビューから8戦目で2階級で世界王者になると言うのは考えられないことである。如何に井上が驚異的な強さを持っているかが分かると思う。
一方で、その早熟さ故にこの数年はいささか停滞していたようにも思える。勿論、ジムのマッチメークと世界的な知名度と世間の知名度の無さ、そして何よりもタイミング。理由はいろいろあったと思うが、とにかく井上のボクシングには狂いが生じていたように思えるのだ。
拳のけが、と言うのも大きかったと思う。とにかく、それを変えるのには大きな改革が必要だった。それが、海外進出だったと言う訳だ。
日本とはおなじ条件・環境で試合を行うことができないかもしれない。寧ろニエベス有利な条件にされても不思議ではない。それに対して井上が実力でねじ伏せられれば、本物になる。大きな負荷を与えることで成長をしてきた男である。間違いなく、彼にとって重要な負荷となり成長を促してくれることだろう。
◆2017/09/09は、楽しみなカードが目白押し。
この試合でメインイベントを務めるのは、誰であろうローマン・ゴンサレス。井上が対戦を熱望したあの男である。シーサケットに敗れてからの再起戦と再戦となるこの試合で、今後の井上の運命さえも左右してしまうかもしれない。
そして、カルロス・クアドラス。彼も、同じ階級にいるのであれば避けては通れない相手である。ファン・フランシスコ・エスとラーダとの対戦はどのような結末を迎えるかが楽しみだ。
井上とロマゴン、シーサケットにクアドラス。ボクシング好きであれば非常に興味深い選手たちばかりである。9月9日は、スーパーフライ級戦線にとてつもない動きが生まれる。これは間違いない。その中で名を上げていくためには、まず井上が勝利しなければならない。
ニエベス戦はそれだけでも、大いに価値がある。そして、階級を上げることになっても井上は真っ先に対戦して欲しい男がいる。
山中慎介、その人だ。
◆井上であれば、山中のVロードにピリオドを打てる
WBCの世界バンタム級王者に君臨して早くも6年が経過する。8月15日の防衛戦で早くも13度目の防衛戦となる。もし勝利すれば具志堅用高氏が持つ連続防衛記録に並ぶこととなる。
大変素晴らしい記録である一方で、山中はリボリオ・ソリスとアンセルモ・モレノ以外でこれと言った選手と対決していないように思えるのだ。ダルチニャンもロハスもスリヤンも確かに世界王者にはなっているが、これだけ名をあげているのに他の世界王者から統一戦の話題すら出ないのは不思議である。
ドキドキ感がないと言えば良いだろうか。勿論、私の偏見もあるだろうが。そこに敢えて井上が挑戦して欲しいのだ。最強の男として。そして、意図的に自らへと負荷を求めてきた人間として。
井上であれば、きっとドキドキした試合をしてくれることだろう。ぜひ、観てみたい。そして、歴史が変わる瞬間を目の当たりにしてみたいと思うのだ。勿論、山中慎介が試合をしてくれるかどうかは帝拳ジムの本田会長に委ねられる訳だが。
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