殴るぞ

色々と思いっきり話します。

実は今こそ村田諒太が戦うのはゴロフキンだと思う3つの理由

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素直に「すごいこと」をやっている

村田諒太が世界王者になることができたというのは、個人的には何よりも驚きで、また再度ベルトを取ったことも併せて素晴らしいことだった。
それは素直に思っているところだ。
ただし、今のボクシング界ではチャンピオンベルトの「軽さ」を指摘される人も多いことは事実だ。
とすると、村田諒太はさらに自らの強さを誇示していかなければならない。
学年で言うならば、1985年世代である村田はマイケル・フェルプス平山相太と同じということになる。
いくらボクサーであるとは言っても、選手としての寿命が明らかに短いことを留意しなければならないし、それを村田も自覚はしているようだ。

そんな中で次の対戦相手と言われている選手が、サウル・カネロ・アルバレスゴールデンボーイ・プロモーションズの看板選手にしてDAZN USAの最大のアイドルである彼と村田の対決が既にアメリカのメディアでも現実的になるのではないか。
このように言われているようなのだ。
すでに噂となっているというところまで来たことが、まずはこれまでに村田を支えてきた人たちへの強い称賛となっていることだろう。その上で「あえて」だが、このように提言したい。

もちろんこれは個人の感想であるし、カネロに決まるならばそれは素晴らしいことだ、ということを前置きしたうえでの言葉である。
今カネロとやる以上に魅力的な対戦カードがあるのではないだろうか。既に勘の鋭い方ならば分かるはずだ。
ゲンナジー・ゲンナジービッチ・ゴロフキン。通称GGGとの対戦は間違いなく村田をさらに成長させ、そして村田諒太というボクサーの価値を高めてくれるのではないかと。
今回はその3つの理由を話して行きたいと思う。


理由1:村田としても対策が取りやすい


実はゴロフキンという選手は日本人選手との対戦経験も持っている。かつて日本のミドル級で活躍をした「薩摩コング」こと淵上誠。また、多くのファンにとって記憶に新しいWBA世界スーパーウェルター級暫定王者だった石田順裕(くしくも正規タイトルを争ったのはカネロの兄であるリゴベルト・アルバレスだった)。
加えてラスベガスの試合など様々な資料を手に入れやすく(それはカネロも同じではあるが)、村田陣営にとっては対策を取りやすい相手であるともいえる。加えて、村田もゴロフキンのトレーニングに参加した経験があるだけに、村田自身が肌で感じたことをより活かしやすい相手である、とも言えるだろう。

その上で、ゴロフキンは今年の4月で38になる。この年齢によることも大きい。全盛期のゴロフキンの時と比べると、やはり見劣りするのは事実だ。前回のセルゲイ・デレビャンチェンコ戦も担当しているトレーナーのジョナサン・バンクスが「ジャッジ全員が支持していたのが驚いた」と語るなど、全盛の時と比較してもやはり破壊力とその正確性に衰えがあることは十分に想像がつく。だからこそ、きっちりと対策を取り「対ゴロフキン作戦」を編み出すことは極めて有効であるともいえるわけだ。

過去の対戦経験と手合わせをしたときに感じた情報、加えて近年の動向。こうしたものをしっかりと想定した時に、間違いなく村田にとって決して「不利」にはならないと言い切れる戦いであると言えるのだ。

もちろん、理由はそれだけではない。それは双方のファイトスタイルにもあることを理解すべきだ。


理由2:ファイトスタイルがかみ合う


これは村田諒太という選手を語る上でしっかりと明言しなければならないことだが、村田は立派なインファイターであるということだ。例えばアンドレ・ウォードのような正確無比なコンピュータのボクシングでは無いし、またアミール・カーンのようなスピードスターでもない。アルツロ・ガッティのような無骨ながらも激しく打ち合い勝利をつかむタイプである。それゆえに、どうしても消耗も激しいし、距離を取られてしまうと厳しいという側面を持つ。

その点でゴロフキンとはまさしくかみ合うのだ。それはゴロフキンが極めてハードに戦う男だからである。元来リングの上では好戦的なゴロフキンは、これまでに多くの防衛戦をKO勝利で収めてきている。元々東欧、ソヴィエト系のボクサーにはいささか冷たいところのあるボクシングの本場。
彼らを振り向かせるためには「マイク・タイソンのような戦い方」をしなければ振り向いてはもらえない。相手を確実に追い詰めたうえで、しっかりとその強烈な一撃で仕留める様は「Kazakh Thunder(カザフスタンの雷鳴)」と呼ぶにふさわしい存在であろう。

この好戦的な二人だからこそ、この試合は壮絶な打ち合いとなるに違いない。つまりは「分かりやすい試合になる」ということでもある。
それはどちらかがKOで試合を決めるということ。あるいは……20年前に私たちが酔狂したアイク・クォーティ対オスカー・デ・ラ・ホーヤのような試合となるかもしれないのだ(もっとも、あの試合は序盤は息の詰まる技術戦だったわけだが)。

一方でカネロは俊敏なファイトスタイルを持ち味としており、特にミドル級に上げてからはボディワークなどを活かしたディフェンス力を持ち味としているだけに、かみ合わない可能性も高いのだ。と考えると、ゴロフキンのほうが遥かに都合も良い。

とはいえ、いくらそれを言ったとしても実現できるかどうかは相手が「乗り気」であるかどうかが問題だ(WBSSのようなトーナメントマッチであれば当然話は別だが)。
そこで、最後に上げさせていただきたいのが「本人のやる気」があること。ここであろう。


理由3:条件次第ということながらも決して興味がないわけではない


「(村田戦には)非常に興味がある。村田は五輪王者であり、プロの世界王者でもある。そして、私が契約する(スポーツ動画配信の)DAZN(ダゾーン)は日本でも急成長しているのだから。条件次第だが、日本に行っても構いません」
これはゴロフキンが述べた前回のセルゲイ・デレビャンチェンコ戦の記者会見でのコメントだ。つまりは、ゴロフキンも村田と拳を交えることに条件面があるとはいえ、抵抗がないわけではないのだ。
もちろんカネロとの「第3シリーズ」に期待をするファンも多いことと思うし、あるいは「村田-カネロシリーズ」を期待するファンも多いだろう。現にカネロも日本へと行くことに興味がないわけではない。とはいえ、現時点でスーパーミドルに階級を上げている彼がWBAミドル級のスーパー王者を持っていたとしても154ポンドリミットで戦う理由は無い(キャッチウェイトになったとしても、そこまで村田にメリットがあるようにも思えない)。
そうであるならば、今でもミドル級最前線で戦っているゴロフキンとの拳を交えることが、今現時点で村田にもゴロフキンにも大きなメリットのあることなのだと個人的には思う。なぜなら、少なくともどちらが勝者となったとしても「ノーサイド」の気持ちで戦うことができる、スポーツの粋たる一面を存分に味わうことができるからでもあり、井上尚弥対ノニト・ドナイレ戦のような心持にもさせてくれる素晴らしいファイトが生み出されるだろうから。

「ボクシング」というスポーツを存分に味わうならば、間違いなくカネロよりゴロフキンを推薦したい……というのが私の気持ちでもある。

もちろんこれはカネロであったとしても、何も問題は無い。ただ唯一気を付けてほしいと思うところはカネロ陣営が明らかに「ボクシングのビジネス」においては何枚も上手であるということ、ここだけは理解しなければならないだろう。