殴るぞ

色々と思いっきり話します。

山中慎介は負けるべくして負けたのか?

 山中慎介が敗れた。ルイス・ネリというメキシコ人挑戦者によって。その衝撃的な攻撃は、今までにない迫力と勢いがあった。山中がネリの圧力に押し負けた、という印象も無くもないが、それ以上に山中の攻撃が良く見えていた何よりの証だと思う。

 ここに至るまでの防衛戦は12戦。挑戦者に実力差を見せつけて圧勝してきた山中だったが、衰えたという表現が正しいのだろうか。とにかくネリの前には今まで通りの戦い方が全く通用しなかった。35歳となった男にとって、外から見ていた大和トレーナーは一体どういう気持ちで見ていたのだろうか。

 とにかく、反撃すらできなかった山中は11分29秒で棄権TKO負けを選択することとなる。率直に言おう。私は山中慎介というボクサーが嫌いである。もちろん、彼の人柄は嫌いでは無い。私は好き嫌いが激しい。それだけの話なのだ。サッカーで言うなら闘莉王は嫌いだし、野球はヤクルトスワローズが大嫌いだ。

 だから、ネリが勝った瞬間はガッツポーズをした。とはいえ、この試合だけで山中のことを腐すようなことをするつもりはない。あえて言うなら、この試合山中は確かに押されていたがどちらが勝つか、3ラウンドまでは分からない状態だったと明言しておこう。

■ネリが見せた一瞬の「脆さ」。

 その最たる瞬間が、2ラウンド終盤に起きていた。この試合、ネリは確かに着実にパンチを当ててはいたが、ゴングが鳴る間際に山中が入れたカウンターにネリがぐらついていたのだ。幸い、ゴングに救われたことで事なきを得たが、もし山中がカウンターでネリへと左を突き差していれば試合の展開は変わったかもわからない。

 ネリは確かに若い。22歳と言う年齢はまだまだ彼に強くなるという可能性を秘めている。だが、第2ラウンドの終盤に見せた脆さと、第3ラウンドでこれは山中もそうだったが、ボクシングが雑になっていた。アウトボクシングをして距離を取ろうと山中は選択したのだろうが、それ以上にネリの圧力が勝っていたのかもしれない。

 もっとボディを入れていればというのもあっただろうし、距離を取るにしても中途半端な戦法ではネリの圧力をかわすことはできないという判断もできたはず。それは山中陣営の明確なミスであって、山中自身が悪いわけでは無い。ただ、ネリが見せた脆さと雑さ。そのボクシングに嵌って行って、最終的にはネリの土俵へと引きずり込まれてしまった。

 そして、山中自身が以前から見せていた「脆さ」を露呈してしまうこととなる。

スリッピングアウェーは絶対的な技術では無い

 山中はあまりガードを上げるボクシングをしない。そのためにパンチを被弾してダウンを喫することもままある。最近だとリボリオ・ソリス戦では左を封じ込められてしまうと危険な状態になることを証明してしまった。攻めの幅が非常に狭く、特に爆発的な左ストレートを封じ込められてしまうとどうしようもなくなってしまうのだ。

 例えば、初防衛戦のビック・ダルチニャン戦ではダルチニャンのパンチをスリッピングアウェーを多用することでほとんど無効化していた。非常に高等技術を見せたわけだが、ダルチニャンは全盛期を過ぎていたから通用したわけであって、ネリのようにパワフルな選手に通用する技術でもないだろう。また、激しく打ちあうスタイルであるが故にどうしてもパンチをもらいやすい。

 だが、山中のガードはいつまでも上がらなかった。もちろんそれで12回もWBC王座を防衛したのだからその判断も正解ではあるだろう。だが、もし山中がガードを上げるというスタイルをもっと早くに取り入れていられたら。山中はもっと私の想像を超えるような選手になっていたかもしれないのだ。

 試合後のインタビューではネリに対する印象を訊かれて、「大したことないと思っていた」という言葉もあった。油断も見られたこの試合で、想像以上の圧力で来られた時。ネリの圧力は山中の想像を遥かに超えたのだろうか。まだやれた、というのも本音だろうが。

■「負けるべくして負けた」というよりも、「ギリギリの展開で負けた」が正しいだろう

 この試合は正直、どちらに転んでもおかしくなかった試合だった。山中に敗因があったことに間違いはないが、それは以前から指摘されていた部分の話であって、それを持って今さら「負けるべくして負けた」と表現するのは違うように思える。

 むしろ「ギリギリの展開で敗れた」という表現が正しいのではないだろうか。山中が相手の力量を過信してしまったことから綻びが生まれ、対処しようにもその前に立ちはだかった圧力の前にどうすることもできなかった。それがあのラウンドだったのだ、と思う。

 間違いなく山中が利している部分もあるように感じられたし、下手に13連続防衛という記録を意識しなければ、まだどうなっていたかも分からない。現にぐらつかせるシーンもあったのだから。むしろ我々が感じ取っている以上に、対戦した二人にはさらにギリギリの展開に感じていたのかもしれない。

 これから山中がどのような選択を見せるかは分からないが、まだ証明したりないことがあるのならば。彼には復活のリングが必ず待っていると私は考えている。その対戦相手が、井上尚弥であれば最高だ。

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