【浦和レッズ】オナイウ阿道と田中要次

　とうとう決めてくれた。え？　ズラタンはもう決めているでしょって？　違う違う。いつも私が茶々入れる選手と言えばもちろん彼よ。オナイウ阿道。今年ジェフからやってきたオコエ君そっくりのってそんなことを言いに来たわけじゃない。

　私は今年に入ってちょくちょくオナイウの名前を出している。もうここぞとばかりに彼の名前をぶっこむのは、ファンが彼の存在を忘れてしまわないかがとても不安だからである。昔の田中要次みたいなものである。そう。HEROの「あるよ」である。

　とても魅力的な選手だ。身長は180センチながらも滞空時間の長い跳躍力を活かした空中戦と身体能力の高さを活かして前線で身体を張ることができるフォワード。一方で技術には恐ろしいほど粗があることも分かっており、良さと悪さがはっきりとした選手であることは間違いない。

　つまり、伸びしろがとても大きい選手であるということ。我らがレッズにとって欠かせない戦力となるか地方へ飛ばされるか。今彼は21歳にして重要な岐路に立っているのだから。まずは、KLMの座を脅かしていかなければならない。恐ろしい壁だ。

　そのためにはまず、チョイ役として結果を出していかなければならない。そう。スタッフ業から始めてそこからバイク便で食いつなぎながらドラマや映画に出ていた田中要次のように。

　田中要次が主演をようやく務めることになったのは今年に入ってからだ。考えてみなよ、普通に考えて一生を過ごすんならJR東海で働いていたほうがよっぽど楽だったのに、彼はそれを捨てて俳優という厳しい世界へ飛び込んだのだ。オナイウだって同じだ。ジェフで頑張っていればそのうちレギュラーだって獲得できたかもしれない。だが、それを捨ててまでレッズにやってきた。

　はっきり言って、今の彼ではKLMとラファ・シルバからレギュラーを奪うことは厳しい。「いるだけで安心」ズラタンを打ち破らなければならない。大原の練習場から日々積み重ねなくてはならないかと思うと、気が遠くなりそうだ。

　俳優という職業も同じだ。１クール有名なドラマに出演できたとしても、連続でオファーが来なければ仕事にならない。いつだってレギュラーが確約されているわけでないという状況と、オナイウの立ち位置は駆け出しの俳優と同じだ。レギュラーが確約されているどころか、自分で奪い取りに行かなければならない。だが、浦和には興梠という向井理がいて、ラファ・シルバというダンテ・カーヴァーがいる。今の彼が立ち位置から言って彼らと本気でレギュラー争いして勝てるとはお世辞にも言えない。

　田中要次も同じだったのではないだろうか。そうやって「サブリミナル俳優」と呼ばれながらもチョイ役をこなしていく中で、「べっぴんさん」では百田夏菜子の旦那役を務め、「HERO」では有名な「あるよ！」というセリフで一躍有名になった。私の妹は今でも田中要次のことを「あるよ」と呼んでいる。何の話か。これはオナイウの話である。

　そう、オナイウも「サブリミナル俳優」になれば良いのだ。……本当に役者にならないでくれよ。そうではなくて、重要な場面。終盤のパワープレーとか。まあ、ミシャはパワープレー嫌がるだろうけれど。そういう勝負どころで回ってきた時にオナイウへとチャンスが回ってくるように。

　田中要次がなぜ仕事が失くならないかといえば、やっぱり居てくれないと困るという絶大な存在感があるからだと思う。たった2カットのために免許を取るプロ意識の高さとか。画面上からにじみ出る何とも言えない存在感とか。でもHEROの主演はキムタクで、松たか子だった。ちなみに私の初恋は松たか子である。何の話か。田中要次の話であってオナイウの話である。

　つまりまずは「居てくれないと困る」ところから始めること。21歳の彼がレギュラーを取るファーストステップとも言える。そして昨日、天皇杯の盛岡戦で彼はゴールを決めてみせた。昨年は出場時間543分で6ゴール。サブでチームの流れを変える役割。きっと彼ならばできるはずだ。

　実際、前線の選手たちはすでに30歳に近い。サッカー選手としてはそろそろ終わりが近付く年齢だ。こういう時こそオナイウが手をあげてアピールをすることが大事になってくるだろう。物事に絶対はない。今の彼だからこそ、敢えて期待してみたいではないか。

　一度見たら忘れられないのは田中要次もオナイウも同じである。つまり、オナイウ阿道とは田中要次なのだ。チームにどうしてもゴールが欲しいとき。ふとミシャが忘れられないような可能性を思い出させれるか。レッズにそしてミシャには間違いなく彼が必要なのだ。

　紅白戦でも調子が良いらしく、そのため出場機会を得た天皇杯。ここから彼はあの分厚い壁を打ち破ることができるのか。「オナイウ、あるよ」とぜひ言わせていただきたいのだ。

　あ、でもミシャに一言。やっぱりCBコンバートはまさかやらないですよね？

　流石にそれは「ないよ」とだけ言わせていただこう。

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