殴るぞ

色々と思いっきり話します。

【浦和レッズ】宇賀神友弥「捲れ」

 その名前をネットニュースで見た時の驚きは、今も忘れられない。

 いや、レッズのファンとして西川がまさか代表落ちするとは思わなかったし、確かにDFから槙野や遠藤航が選ばれるとも思ってなかった。そうじゃない。もう一人、浦和レッズのとって忘れられないあの男が代表選出されたのだ。

 これをどう捉えていいのかは分からない。だが、改めてサッカーというのがいい競技であるなと密かに感動を覚えたものだった。宇賀神友弥浦和レッズ一筋の左アウトサイドの選手である。

 彼はレッズのユースにいた経験もあるのだが、高校卒業後にトップチームに上がれずに流通経済大学へと進学。その後レッズへと戻ってきた。フォルカー・フィンケに才能を見出され、その間に誰かいた気がするのだが忘れたので割愛して、ミシャ・ペトロヴィッチに才能を見出され、かつてアウトサイドを張っていた平川忠亮との競争も制して副キャプテンを務めている。

 29歳の彼はサッカー選手としては確かに若くない。それに、代表経験が一切ないのだ。ユース世代を含めてもである。そんな選手が時たま代表に選出されるのがサッカーという競技であり、奥深さを感じさせてくれるのかもしれない。

 決して、足が凄まじく速い選手でもなければ、フィジカルコンタクトもスタミナもある選手ではない。キックだって決して精度がずば抜けているわけでもないのだ。スピードだったら間違いなく浅野拓磨が飛び抜けているし、フィジカル全般で言うならば左サイドバックの長友がよっぽど優れている。キックだって太田宏介に利があるのは言うまでもない。

 では、なぜハリルホジッチは宇賀神をこのタイミングで選出したのだろうか。かつて浦和を率いていたフィンケは宇賀神をこう評価した。「実に賢いプレーをしている」と。ものすごく才能に恵まれた選手ではなく、大学では荷物持ちから始まった男だ。4年生でトップチームに上がるまでJリーグからのオファーが来たこともなかったほどである。賢いプレーをしなければ、生き残れなかったのだろう。

 かつて、レッズを下支えしていたのは鈴木啓太だ。決して彼は華麗なプレーをしているわけではなかった。だが、イヴィツァ・オシムからはその才能を「水を運ぶ選手」と表現して絶賛した。

 宇賀神も水を飲む選手たちへの献身的なプレーを怠らない。そこにはレッズのコーチである堀孝史コーチからのアドバイスがあった。

 関根や駒井のように目を引くようなドリブルを持っているわけでもない宇賀神がなぜ使われるのか。サイドに相手を引き付けることによって前線のアタッカーたちがより輝けることを知っているからだ。

 レッズのサッカーとは多くのゴールを奪うサッカー。興梠やラファ・シルバが絶好調である今シーズン、特に攻撃的なサッカーにおいて彼のフリーランによって幅が生まれていることに間違いはない。ここまで12試合に出場し991分プレーしている彼の走行距離は1試合平均で9.426kmとそれほど多いわけではない。しかし、スプリントの回数は1試合平均20回。多い時でも30回近くはスプリントする。

 ここまで上げた得点数は0で、アシストは2。直接的な貢献は少ない。しかし、その存在がいかに重要であるのかを宇賀神は今回の代表選出をもってして証明したのである。済州市内のホテルで選出を知った宇賀神は驚いたそうだが、ハリルホジッチは「今度は彼を試す番」と彼のピッチ上で見せる振る舞いを評価していた。

 与えられるチャンスは驚く程少ないかもしれない。だが、宇賀神はそうやって少ないチャンスをモノにしてきた男でもある。もしかしたら今回も。その数少ないチャンスをモノにしてしまう可能性だって秘めているということではないだろうか。

 サッカーが何も高度なテクニックやフィジカルがなくとも栄光を勝ち取ることができるスポーツであることは、多くのサッカー選手が証明してきている。もちろんその裏には基礎的な技術が備わっているという前提ではあるのだが。

 マケレレやラームは決して華やかなテクニックがあるわけではなかった。マケレレには超人的なスタミナがあったわけだが、それ以上に確かだったのは状況判断に優れた選手であったということ。ラームもアンカーやインサイドハーフができたのは、その優れた状況判断が何よりも大きかったのではないだろうか。サッカーとは組織のスポーツである。いくらメッシが優れていようとも、そのメッシを際立たせるには組織で連動しなければならない。

 時折、宇賀神はCBに入ることがある。決してフィジカルコンタクトに優れた選手ではないにもかかわらずだ。もしかすると、ミシャはそんな宇賀神の判断力を一番評価しているのかもしれない。

 新たな水を運べる男は左サイドにいる。29歳の苦労人がこのワンチャンスをモノにできるかどうか。期待の若手が出てくる中で、ベテランに入ろうとする選手が一気に代表定着する。そんなことがあっても面白いと私は思うのだ。

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