殴るぞ

色々と思いっきり話します。

亀海喜寛「小さな教授の終わりなき旅」

 しばしば、その人の人生の事を「道」と表現することがある。大相撲の大関である豪栄道は自らの四股名に、名前である豪太郎より「豪」を、母校の埼玉栄高校より「栄」、そして恩師と相撲道へと精進するという意味合いを込め「道」を選んだのだそうだ。

 さて、ボクシング界の花形階級と言えば断然中量級と呼ばれているライト級からミドル級までの階級の選手たちだろう。近年はローマン・ゴンサレス井上尚弥、ノニト・ドナイレが話題となっているが、やはり注目されるのはこの階級であることは間違いない。

 前置きが長くなったが、そこに日本人が入り込む所が中々無い。最も金が動き、世界中から注目される。一晩で何十億もの金が動く階級。そんな階級に一人、日本人の挑戦者が現れたのだ。マエストリートこと、亀海喜寛だ。タイトルはWBO世界スーパーウェルター級。対戦相手は4階級王者のミゲール・コット。

 一大決戦である。

■自らの手で「道」を作った男が、亀海だ。

 帝拳ボクシングジムは、日本のボクシング業界の中では恵まれた環境にあるジムである。西岡利晃山中慎介三浦隆司、そしてホルヘ・リナレスと日本のボクシング史に残るであろう優れた世界王者が所属しており、また海外とのパイプが太いジムとして知られる。

 その一方で、どうしても残ってしまうのは物足りなさである。もしかしたら、個人的に好きじゃないからなおさらそう思ってしまうのかもしれない。しかし、余りピンと来ないのだ。言いたい事は分かる。アンセルモ・モレノや、ノニト・ドナイレと対決するというのは並大抵の相手では務まらない。

 じゃあ、亀海はどうだったのかと言うと、国内でホセ・アルファロに勝利し将来を嘱望され、高いレベルを目指してアメリカに拠点を移す。2013年から約5年間、無敗を誇っていた亀海は3つも敗戦を経験した。1つはWBAのインターナショナル王座を賭けての戦い。もう1つは世界タイトル挑戦経験のある選手、そして4階級制覇者のロバート・ゲレーロだった。

 多くの挫折を経験しながら、着々と腕を磨いた。何度となく壁に跳ね返されながらも、ようやく亀海は世界タイトルマッチの場所へと辿り着いた。恐らく、ヘスス・ソト・カラスとの試合で認められたからこそ、この試合が組まれたのだろう。

■それでも亀海を取り巻くのは「厳しい目」。コットの噛ませ犬としか思われていない。

 だが、この試合で亀海が置かれる立場は村田諒太以上に厳しいものになるだろう。エンダムと国内で対決できた村田は幸運だったとも言える。コットとエンダムを比較しても、恐らくはコットが圧勝するであろう。

 カネロ・アルバレスと対決し敗れた2015年11月以降試合をしていないコット。このWBOタイトルを以て、再びボクシングの世界へと復帰する事だろう。とするとだ。下手をすれば村田以上の「贔屓判定」も考えねばならない。ましてや実力者であるなら尚更だ。我々が想像しているよりも厳しい目が向けられるだろう。

 試合前の現在地として、亀海はコットの「噛ませ犬」という立場であるという事を決して忘れてはいけないのである。今年の11月で35歳となる亀海にとって、贔屓目で見たとしても、厳しい試合となるとしか私は言えない。

 しかし、自分で考えてボクシングのできる人物。そんなことは百も承知だろう。リングは紛れもなく、誰にとっても平等なのだ。そしてそれを一番よく知っているのは、対決することとなるコットであることに違いはない。5年前のフロイド・メイウェザー・ジュニア戦で見せた、タフな戦いのように。

■「挑戦者」亀海だからこそ切り拓けた道。歴史を変えるチャンスだ。

 この試合はHBOでの放映が決定しており、恐らくはメインイベントとして扱われる。当の本人は「アップセットを狙う」と公言しており、相当気合を入れている。彼が切り拓いてきた道は、日本人ボクサーでも中量級で戦う事が出来るという事の証明でもある。確かに、価値はある。だが、それで終わらせるのは寂しい。

 亀海には勝って欲しい。否、勝たねばならない。勝って初めて、奥の道が切り拓かれるのだ。荒川仁人も、石田順裕も。世界を相手に戦う所までは行っても、先へと進むことが出来なかった。ならば亀海が、この道を拓く第一人者となるべきである。

 世界を目指し、何が足りないのかを考える力。そして、実行に移す力。恐らくはこれだけクレバーなボクサーというのも珍しい。常に挑戦を続け考え抜いてきた男だからこそ、自らの手で道を作り出してきたのかもしれない。間違いなく世界を獲るポテンシャルがある。だが、アスリートとしての寿命は、もう残り少ない。この戦いこそが、ラストチャンスになってしまうかもしれない。

 さあ、チャンスが来た。伸るか反るかの大勝負は8月26日。マエストリートの終わりなき旅は今、最終章へと突入しようとしている。

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