殴るぞ

色々と思いっきり話します。

なでしこジャパン「新しい明日へ」

 なでしこジャパンのオリンピック予選敗退の責任を取り、佐々木則夫監督の退任が決定した。男女というカテゴリーを除いても、現在の監督と比較しても実績ではビセンテ・デル・ボスケスペイン代表監督と同格ではないだろうか。

 国際大会3大会連続決勝戦進出、ワールドカップ優勝。澤穂希という強大な存在感も相まって、圧倒的な人気と強さを誇ってきた。そして、今そのチームは解体されることとなる。

 そして、宮間あやを始めとする黄金期を作り上げてきた選手たちも引退をすることとなるようだ。世代交代はいつか必ずやってくるものであるとはいえ、いよいよなでしこにもその波が来ていることは事実なのである。寂しさもあるが、チームというのはそうやって生きていくもの。受け入れなければならない。

 世代交代については、佐々木監督の責任を問う声が多く上がっている。否定はしない。固定化されたメンバーには大きな疑問が残ることは事実だからだ。しかし、A代表の監督に課されていることは勝利だ。メンバーを固定する手法というのは勝利のためであれば必要なことであるし、レギュラーの座を脅かすことができない若手選手たちが問題なのではないだろうか。

 かつて中日ドラゴンズを率いた落合博満氏は時折、若手の育成について批判を受けてきた。しかし、落合氏にとって重要だったのは勝利であった。監督とはそのチームを勝利に導き、なおかつ優勝させることを重要視している。そして、A代表の監督というのはそういう仕事なのだ。

 間違っても佐々木監督だけに責任を負わせることは避けなければいけないし、強化対策委員や各クラブには体制を見直してもらわなければ困る。

 どんなチームにもサイクルがある。1950年代に世界を席巻したハンガリー代表。1974年オランダ代表、1990年代のACミラン。スペイン代表。あれだけ世界を無双していたスペイン代表でさえも、チャビの衰えと共に勝利をすることが難しくなってきてしまった。所属していたFCバルセロナも、チャビの退団と共にそのスタイルと顔をガラッと変えている。

 つまり、今の代表は単純に黄金期の終焉を迎えてしまっただけということなのだ。新たなサイクルをここから始めなければならないわけで、始めなければ痛い目にあうことを思い知ったのが今回の予選だったわけだ。

 今更過ぎたことを論じていても、何も生まれない。次の大会でなでしこが世界一になるならば話は別だが。フォーメーションはどうだったのか、システムに問題はなかったか。そこの分析は私よりも優秀な人物がいると思われるのでそれはその人にお任せしたい。問題なのは、未来への身の振り方であって新たなる選手たちの台頭だ。

 改革には大きな痛みが伴う。20代後半から30代前半までを多くの選手が占めていたなでしこ。大きな転換を行う際に、2015年のアルガルヴェカップで痛い目を見たことを忘れてはいけない。若手主体となって戦うと、今まで通りに勝利が出来なくなってしまう可能性も十分に考えられる。澤という強大な存在が、チームの穴となって広がり続けていく可能性もあるからだ。

 しかし、尻込みしていては何も変わらない。これは事実だ。それが身を切るような改革であったとしても、時としてそれに頼らねばならない時がやってくるのだ。マジック・マジャールはその後「ハンガリー動乱」という政治的な事情によりチームが崩壊してしまう。プスカシュ・フェレンツらが亡命したことにより、中心選手が多く抜けてしまったためだ。それからハンガリーという国家からサッカーの話題を聴くまでに実に30年は要することとなった。今年のことである。なでしこがマジック・マジャールのようになりたいというのなら話は別だが、目指しているのは「恒久的な強化」である。

 これからのなでしこは、強化のためにさらなる努力が必要となるだろう。テクニカルレポートの提出、見直し、そしてクラブチームの強化。若手を起用する勇気も新監督には要求されているのだ。監督や教会の努力なくして、なでしこの未来はない。

 しかし、何も試されるのは協会と首脳陣だけではない。クラブは言うまでもない。何よりも試されているのは私たち、サポーターだ。

 ファンのいないところに強い選手は生まれない。もっと言うならスターなど生まれるはずもない。仮に勝てない冬の時代がやって来た時に、選手はサポーターの声によって励まされるかもしれない。そんな時代があるからこそ、喜びも悲しみも全て分かち合えるのではないだろうか。一過性で終わらせないためにも、私たちができることは応援することだ。

 だからこそ、願いたい。ここからが大切なのだと。このままなでしこという世界でも偉大なチームが強豪として続いていくために。悲しい結果がいつか大きな糧になるように。どうか見捨てないでほしいのだ。新しい明日へと向かうためにも。