殴るぞ

色々と思いっきり話します。

箱根駅伝総括 -shougatsu no owari-

■ハッピーエンドで頼むよ

 ゴールテープを真っ先に切ったのは、青山学院大学だった。序盤でのリードを保ったまま芦ノ湖に、そして大手町に。久保田和真くんや一色恭志くんが高校時代から名前の知れた選手であったという事実を差し引いても、見事すぎるレースだったように思う。

 確かに、前年よりもタイムという点で劣る部分もある。神野大地くんは疲労骨折の影響もあってタイムは3分遅かったし、ひとつ前の全日本ではリードされたら競り合いに弱いという重大な弱点を露呈してしまったのだから。タイム差以上に紙一重、本当に紙一重の戦いだったのだ。

 だからこそ、彼らや原晋監督には敬意を示さねばならないだろう。前回が「ワクワク大作戦」なら今回は「ハッピー大作戦」。それにもちゃんとした理由があった。今大会の青学は大会連覇どころか学生駅伝3冠達成さえ期待されていた。見えないプレッシャーがあったのだろう。出雲で逆転勝利こそ収めたものの、全日本では東洋大学に逃げ切られてしまった。だからこそ、自分たちが楽しんでやらなければいけないと開き直ることができたのかもしれない。結果として作戦は大成功。その先陣を切った久保田くんが金栗四三杯を獲得したのも納得いくものだった。

■満たされてしまった酒井監督

 一方で大誤算とも言えるレースになったのは東洋大学。私はこの大会、東洋か青学のどちらかだろうと考えていた。実は両校ともにスタイルがよく似ている。序盤でリードを作り、中盤と終盤で突き放す。どちらかがトップに立てば、そのまま主導権を握り続けることができるレースを見せるのだ。戦力も揃っていた。服部兄弟と口町亮くん、やや小粒ではあるが全力を尽くして突き放す采配を見せていれば、結果はまた違っていたのかもしれない。

 確かに服部兄弟が「外した」わけではない。1区を任された上村和生くんは7位。この結果は決してブレーキがあったとは言えない。しかし、果たして口町くんが6区に適性があるかどうかは個人的には疑問だ。彼が服部勇馬くんのようなスーパーな選手でないことは知っている。その上で、彼のスピードを活かしてあげられる区間はなかったのかと、ふと疑問に思ってしまったのだ。

 酒井監督には申し訳なく思うが、全日本をとって満たされてしまったところはなかっただろうか。ふと思う。全日本で彼が流した涙は美しかったが、あれで満足しきってしまったのではないかと。挑戦者である東洋ほど恐ろしいチームはないだけに、来年に期待したい。

■「育成の年」と割り切った駒大

 1区の其田健也くんが13位と出遅れながらも、最終的には3位以内に収めた駒澤大学。毎回思うが、大八木監督の整備能力には驚かされる。2年生の工藤有生くんを2区に起用しこれが大当たり。3区の中谷圭佑くん、5区の大塚祥平くんと来季を担う柱が成長した姿を見せたのではないだろうか。

 一方で気になるのは西山雄介くん。区間4位は決して悪い数字ではないが、どうしても物足りない気持ちになってしまう。持っている物からすれば、中谷くんや大塚くんとは何一つ遜色ないだけになおさらだ。

 元々駒大といえば粘り強い駅伝をするチーム。しぶとく勝負できるランナーが育つ傾向がある。中谷くんや西山くんのようなスピードあるランナーがそこに噛み合えばさらにチーム力も向上することだろう。今年は特に西山くんを注視していければと思っている。

 そして、馬場翔大くん。昨年のあの辛い走りからよくぞ復活してくれた。あの山登り以降、陸上競技を辞めようと思ったこともあったそうだ。しかし、そこから思い直して全日本では区間賞を獲得したのは驚いた。卒業後もNTT西日本で競技を続けるとのことだ。彼の今後の健闘を祈るとともに、今回の区間2位をたたえたい。

■予想外と予想通り

 概ねシード権争いも予想通りとなったが、そこに往路を終わって東京国際大学が12位につけるという驚きもあった。日体大が往路は13位も復路で4位と巻き返してシード権を獲得、帝京大学もシード復帰とポジティブな驚きはそれくらい。

 ネガティブな驚きは中央大学明治大学。中央は町澤大雅くんが気持ちの入った走りを見せてくれたものの、徳永照くんがまさかの大誤算。チームも15位に低迷し、シードを逃したことが驚きだ。特に中央は前年度にアンカーまではいい成績を残していただけに、なおさらだった。

 そして明治大学。3区坂口裕之くんと5区の籔下響大くんが区間20位の大ブレーキ。往路17位の結果ではいくら復路で頑張っても挽回ができなかった。坂口くんは臀部に痛みを抱えていた中での強行出場、籔下くんは山の中で脱水症状になってのブレーキだった。エースの横手健くんも不調。色々とチグハグなままだったようだ。しかし、坂口くんも籔下くんも決して実力のないランナーではないことは明らか。特に坂口くんは4年生を除いた5000メートルのタイムはチーム最速。順当に行けば、次回はシードを取ることができるだろう。

■Runner Of the match

一色恭志

 個人的に彼のファンだからというのもあるが、彼が今回の優勝を引き寄せたといってもいいのではないだろうか。その走りと安定感は、既にチームになくてはならないものとなっている。仙台育英高校豊川高校時代から彼は応援しているのだが、彼は「飛び抜けたものがない」と悩んでいるとのこと。

 では今年から彼を徹底して追いかけ、「飛び抜けたもの」を見つけることができるのかどうかを見守っていきたいと思う。個人的に彼は「総合力の高い、オールマイティなランナー」になると確信している。よく考えて欲しい。それもひとつの飛び抜けた才能ではないだろうか。