殴るぞ

色々と思いっきり話します。

今日もいい笑顔

 いつだって彼は、ぼくらに笑いをもたらしてくれる。大田泰示のことだ。

 おっちょこちょいなプレーで時折笑わせたり、どうしようもない理由で教育リーグのメンバーから外されたり。あまりにもうだつが上がらなくて、阿部慎之助の自主トレメンバーからも外されてしまった時はちょっと笑えなかったけれど。

 それでも、彼は実にいい顔でプレーをする。打つときも走るときも守るときも。いい顔でプレーしているのを見ると、なんだかこちらまで笑顔になってしまうものだ。大きな体に秘めた身体能力は一級品。根が真面目で、一生懸命にプレーする姿に反映されているのがわかる。

 身長188センチで体重が100キロを超える彼の体格は、明らかにそのポテンシャルに見合った成績を残してきているとは言い難かった。同い年で誕生日も2日違いの彼をぼく自身も歯がゆく、それでも期待してしまっていたのだ。空振り三振でデビューした時も、プロ初ヒットを決めた時も。低反発球で特大ホームランをかっ飛ばした時も。翌年に出番がなくなった時、中井大介が台頭してきた時でさえも。彼のことを応援せずにはいられなかった。

 やっとそれに見合った成績を残し始めたのが、去年シーズン終盤。それもリーグ優勝に絡む活躍を見せた時からだった。そして今年は、主力としての活躍が求められる時期になった。2012年の終盤も同じように活躍が期待されていた。しかし、それに答えることができなかった。ファンの期待を裏切ってしまっている。25歳、プロ7年目。もう後戻りはできない。今年こそ勝負の年となる中で、肉離れで出遅れてしまった。

 それでも復帰戦2試合で長打が3本。前年活躍したのは決してフロックではない。けがから戻ってきたらすべての感覚を忘れてしまう選手もいる中で、彼がその感覚を忘れることはなかった。

 どれだけすごいポテンシャルを持っていたとしても、それ以上に華のある選手というのはその人物の持つ「人間性」にゆだねられる部分が大きい。彼がどのような環境で育ってきたのかを詳しくは知らないが、見るからに人懐っこく笑顔を絶やさないその振る舞いは時としてチームの流れをがらりと変えることもできる。何より、出場した2試合で決勝点に絡む活躍を見せているのだから、存在感も大きくなってきているということの裏返しでもある。

 今年の巨人は阿部を一塁にコンバートし(結局元に戻ったが)、坂本がキャプテンに就任したは良いものの、その二人を負傷で欠くという状況。柱になるべき長野の調子が今一つで、坂本のバックアップが守備範囲が狭くなっている井端では厳しい。とっかえひっかえヒーローが出てきているところはさすがだが、それには大きな大黒柱がいないことにはいつか破綻してしまう。

 大田は今年で25になる。それほど若くはないのは事実だ。だが、彼は昨年終盤にやっと柱になりそうな兆しを見せた。一歩一歩のし上がってきた。2歳年上の坂本がチームに帯同できない状況の中、彼が中心となって勝利を目指さなければいけない。現にそれだけの力があり、ポテンシャルを認めているからこそ原監督は4番打者として起用しているのだろう。

 思えば、彼が過大評価とも言われるほどに批判を受けていたのと、現役時代の原監督への批判はどこか似ている。その根底にあるのは「過剰な期待」と「何かをやってくれる力」があるからなのだと思う。それをパワーに変えて、原監督はここ一番でホームランを打ち続けてきた。その過剰なまでの期待と批判に耐えられるだけの人格を大田に見出して、重ねているのかもしれない。

 ちなみにだが、原監督はぼくの母と同い年。こんな偶然、あるだろうか。