殴るぞ

色々と思いっきり話します。

ブローナーとフィゲロアが対戦するという報道は良いんですが、その前に逮捕されるって何のコントですか。

 ということで、表題の通りである。アミール・カーンと対決するといった噂が流れていたエイドリアン・ブローナーは、WBC世界スーパーライト級挑戦者決定戦でオマール・フィゲロアと対決する事となっていた……らしいのだが、ここにきて4月21日に行われるこの試合が危ぶまれているのだという。

 その理由は、二人が逮捕されたからである。ブローナーはアトランタにて性的暴行容疑で逮捕され、フィゲロアフィゲロアで飲酒運転でしょっ引かれるというお騒がせコンビがまたもややらかしたという流れになっている。同じ1989年生まれの才能あふれるボクサー二人であることも、述べておこう。

 それでも、この試合は両者にとって負けられない戦いの一つである事に間違いはないし、だからこそ命を賭してリングへと上がるべき試合の一つなのである。文字通り、ボクサーとしての人生が懸っていると言っても良いだろう。

 最早アスリートが何かをやらかしても誰も何も驚かなくなっている昨今だが、殊にボクシングではその様なトラブルが大変多く感じる。日本では京口竜人のように、過ちを犯した者は即座に淘汰されるのだが……。

◆オマール・フィゲロアとは何者か?

 ボクシングの本場、アメリカで生まれ育ったフィゲロアは文字通り5年前は「トッププロスペクト」に入る、将来有望な選手であった。日本人にも非常になじみ深いのは、2013年に当時WBC世界ライト級1位に入っていた荒川仁人との対戦経験があったからではないだろうか。

 ブローナーがWBA世界ウェルター級に挑戦する為に、長期空位になることが予想されて行われたWBC世界ライト級暫定王座決定戦で拳を交えた両者。試合はフィゲロアの圧勝だったわけだが、荒川も終盤に粘ったことによって「ジャパニーズ・ロッキー」という愛称を授かることとなった。この試合は年間最高試合の一つになるのではとまで言われ、荒川はダメージを懸念されながらも後の3階級王者であるホルヘ・リナレスとも対決している。

 回転力溢れる連打とスイッチ、ディフェンスにはやや難点があるが攻撃力に長けたフィゲロアに付けられた愛称は「パンテリータ」。小さな豹の異名と共に、その将来は明るいものと思われていた。1年後に怪我で休養王者となるまでは。

 その後、飲酒運転の逮捕と計量の体重超過。王座剥奪から2年経過した現在、その才能は果たして荒川を倒したあの試合から錆びついていないだろうか。アスリートにおいて才能の浪費はしばしば語られる所である。清原和博ニクラス・ベントナー、ニック・キリオス。その悪い流れから、彼は帰って来られるだろうか?

◆マネー・メイウェザーの真似をして潰れつつあるブローナー

 一方で、エイドリアン・ブローナーは最早問題行動というよりもただの奇行に近い。ひとたび行動すれば、彼の周りにはトラブルしか舞い込まない。着いたあだ名は「プロブレム」。それでも持って生まれた反射神経と攻撃力の高さは素晴らしく、その才能は間違いなく、マネーことフロイド・メイウェザー・ジュニア引退後にボクシング界を背負って立つだろうと私は思っていた。

 だが、彼は2018年現在ボクシング界を背負って立ってはいない。今、背負っているのはゲンナジー・ゴロフキンであり、ワシル・ロマチェンコであり、アンソニー・ジョシュアである。井上尚弥もそのうち入るかもしれないが、少なくともボクシングの将来を背負う男の中にエイドリアン・ブローナーの名前を推す人間は一人も出てこないだろう。

 彼自身、元々問題行動の多い人間だったとはいうものの、恐らくは不世出の大スターであるメイウェザーと比べられる事そのものがプレッシャーだったのかもしれないし、それが却って彼自身を孤独にさせたのかもしれない。実際に、チャンピオンになると問題行動がクローズアップされてしまうのは、そう言うことなのだろう。

 だが、だからと言ってそれらが許されるという事は断じて考えられないし、仮にそうだったとしても導くことができなかった周囲の人間の罪は想像以上に重い。結局、「マネー」の幻影を追いかけて潰されたに過ぎないのだから。

◆本当に後がない二人。二人の問題行動は最早「コント」だ。

 結局二人は才能がある故にそれらを有り余らせているだけなのかもしれないし、私達がアスリートに対して人間性まで求めすぎているだけなのかもしれない。あのマイケル・ジョーダンだっていくら崇め奉っても、中身は人間なのだ。オスカー・デ・ラ・ホーヤも、タイガー・ウッズも。それらに苦しみ、結局苦しみから逃れることしかできなかった。ブローナーもフィゲロアもそうなのだろう。

 結局彼らがやってきた振る舞いは、自分自身の首を絞めているだけに過ぎない。そうとしか言いようがないのだ。あのメイウェザーも多くの問題行動こそあったが、非常に自己管理の厳しい選手として有名だった。それは、自分自身が負けることを恐れてが故であったのかもしれないが。

 本当に二人には後がない。ここで負けるようなことがあれば、再浮上のチャンスはそうそうないだろう。ただの噛ませ犬として生きるだけになるかもしれないし、勝ち残ればスポットライトを浴びる世界へと返ってくることができる。All or Nothing。リングには常に二人の欲望を満たすだけのものが詰まっているのだ。それなのに。

 お互いが刑務所の中で、リングに上がれないなんて。この壮大な「コント」を笑いに変えられる自信は一つもない。よしんばコントでないとしても。ただただ、私達は失望するしかないのだろう。

■お知らせ■

LINE@登録者には、限定でブログとウェブサイトの更新情報の配信を行っております。 また、ご意見ご感想も承っております。出来る限り丁寧にお返事も書いていきたいと思っておりますので、是非ご登録いただければ幸いです。

 友だち追加