殴るぞ

色々と思いっきり話します。

木村翔vs五十嵐俊幸「6年前と何が違ったのか」

 ということで、今更だが大晦日の試合をゆっくりと見返している。
 個人的にまず気になったのは木村翔。北京とロンドンオリンピックで金メダルを獲得したゾウ・シミンからWBOタイトルを獲得した木村は今乗りに乗っている。
 家賃5万円のアパートに住み……というくだりは置いておいても、やはり勝利すれば夢がある。
 一方で五十嵐俊幸は6年前にソニー・ボーイ・ハロからWBC世界フライ級王座を獲得したアマチュアエリート。アテネオリンピックにも出場したことのあるオリンピアンは、スピードとテクニックには定評があるボクサーだ。

結果は9ラウンドTKO勝利だったが、見れば見るほど木村が勝つべくして勝利した試合だったと思う。今回はそこを見ていく前に、一つおさらいしておく試合がある。

五十嵐俊幸vsソニー・ボーイ・ハロ

 この試合は様々トラブルがあったものの、結果として五十嵐が2-1という形で勝利した試合だった。鈍重でスタミナのないハロに対して五十嵐はボディを含めてスピードとテクニック、ゲームメイク力でかき回した。
 しかし、スタミナ切れのハロはラフなフックスタイルで五十嵐に対抗。決してかわせないようなフックではなかった。そこに対して相手へと合わせてしまった五十嵐は大苦戦を強いられる。特に試合終盤にハロが五十嵐の顔面へとヒットしたフックは、レフェリーや場所によっては試合を止められていても何ら不思議ではない程だった。辛くも勝利したとはいえ、世界王座獲得しただけという内容に欠ける試合だったように思える。
 このように五十嵐は総合的に頭のいいボクサーであることに間違いはないのだが、試合途中になると急に本来やるべきでないことをやってしまう悪い癖があるようだ。この弱点を突かれたのかは分からないが、5年前に八重樫東と対決した際には、ことごとく八重樫のパンチを浴びて惨敗している。カッカしてしまう癖があるのか、それとも単純にスタミナが切れて応戦せざるを得なくなったのか。相手からの圧に弱いのか。原因は様々あるだろうが、多分すべてがあるのだと思う。いずれにしても、五十嵐がその悪い癖を解消できたかどうか。
 4年と8か月が経過してWBO世界フライ級1位にランクインした五十嵐が、アップセットを起こした木村に対してどこまでやれるのか。これが注目された。

◆まるで成長していない…。

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 五十嵐の試合を観戦していて率直に感じた感想がこれだった。いや、木村のゾウ・シミンを追い詰めた迫力と圧力は確かに素晴らしいものがあった。序盤からエンジン全開に見せておいて、中盤から終盤にかけては細かいパンチを織り交ぜるなど緩急多彩なパンチで攻め続けた木村のボクシングはこちらも唸るしかない。これを「よけなさい」と言われてすべてよけるのは難しいだろう。
 だが、五十嵐はとうとう圧力負けして打ち合ってしまった。その打ち合いももちろん五十嵐らしい細かいパンチを入れることで成り立つことは成り立つのだが、木村の圧力にはどうしても負けてしまうのだ。負けてしまうのが分かっていて打ち合いに挑むのは決して勇敢とは言わない。無策でしかないのだ。
 どちらかというとこの試合は、五十嵐の勝利が期待されていたのだろうが、五十嵐が木村に対しての何かしらの対策も見えないものであった。ゾウ・シミンに対して積極的に攻めていくことで勝利を収めたのだから、その圧力対策をしなければ自分自身の良さを出すこともできない。6年前にハロの雑なボクシングにお付き合いした瞬間を何度も思い返していた。
 結論から言えば、五十嵐は負けるべくして負けたと言っていいだろう。これで引退するのは残念だが、引退を覚悟した試合でこれはいささか悔いが残る気がしてならない。

◆勝つべくして勝った木村。田中恒成でも比嘉大吾でも面白くなる。

 一方で初の防衛戦で指名挑戦者相手にきっちり勝利を収めた木村は、ゾウ・シミンとの対戦要請もWBOから却下されたようである。ただし、ゾウ・シミンには網膜剝離の疑いもあり、その場合であると治療も行わねばならない。いずれにしても対戦は現実的ではないだろう。
 それを考えると、次に待つのはフライ級へと階級を上げた2階級制覇王者の田中恒成か、WBC世界フライ級王者の比嘉大吾との統一戦を選択することもできる。最も、比嘉が2月に防衛戦を行う関係で日程の調整が必要だ。しかし、それほど遠くない未来に日本人対決を再び見ることができる可能性は大いにあるはずだ。決してテクニックがある男ではないが、ラフでタフに戦う男のファイティングスタイルは、きっと多くのファンを掴むだろう。
 フライ級の戦線に生き残った木村翔。苦労人がスターダムへ上がる姿はメディアも大好きだろう。ここから多くの人に注目され、応援されていくはずだ。それによって知名度も高まるだろう。惑わされることなく、このまま一気に進みあがっていけば、決してすべてを掴むことは夢ではない。
 木村翔。果たしてどこまで進むのか。これからがとても楽しみである。

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