殴るぞ

色々と思いっきり話します。

昭和92年のスポーツ

 私は「プロ野球死亡遊戯」というブログが大好きで、しばしば覗かせていただいているのだが、あれは2年前だろうか。野球賭博読売ジャイアンツの選手3人が無期限の失格選手(つまり事実上の永久追放)になってしまった件でのエントリーを読んだ時だった。

「昭和90年問題によって起きた事件だった」という記事の内容と、「子どもの夢を裏切ったなんて屁みたいなロジックは聞き飽きた」という文章。私は中溝康隆という一人のライターに勝てないと思った。同時にお会いしたいとさえ思った。2年前のあの日、私は無職だった。今もフリーターのようなものだから、大して変わらないのかもしれないけれど。

 相撲は人気低迷していた危機的状況から何とか盛り返し、読売ジャイアンツは今も変わらず多くのファンが東京ドームへと足を運ぶ。同じ国に2つのトップリーグが存在していたバスケットボールは外部からの圧力という結果はあったが、Bリーグという形で何とか成立させることに成功した。バレーボールも同じようなことを繰り返していてはいけないという風潮がある。

 羨ましいとさえ思う。ボクシングはコミッションも、ファンも。危機感を抱いているようには思えないからだ。

■岩佐亮佑・小國以載・田中恒成・和氣慎吾。日本人トップクラスの選手が出てきても埋まらない観客席。

 京口竜人が飲酒運転で逮捕された後、「子どもの夢を裏切った」というロジックを一つとして私は聴いたことがなかった。Jリーグで徳島の馬渡や浦和の森脇が騒動を起こした際には同じような言葉を何度も聴いたのに。

 多くの人は世界王者の名前さえ知らない。ファンの間ではあれだけ有名だった内山高志の名前さえ知らず、八重樫東井上尚弥という名前さえ知っているのが一部のファンだけだ。多くの人は西岡利晃という人間さえ知らないだろうし、精々知っている名前は亀田三兄弟だけだ。これが事実なのだ。

 9月に大阪で行われた世界戦を見てきた。和氣慎吾選手の応援について行ったのだが、メインイベントになる頃には埋まるだろうと感じていた観客席が一つとして埋まる気配を見せない。とうとう世界戦が始まる頃には田中恒成の応援団が大きな声を出しているのが印象的なほどで、メインイベントでも席はガラガラで、指定席とは違う席で見ていても誰にも怒られず、当日券自由席で見たほうがはっきり言って良かったくらいだったのだ。

 つまりこの突き付けられた現実から私たちは未だに目を背けている。ボクシングはもう、人気競技ではない。箱の大きな張りぼてであることをいい加減にファンもコミッションも自覚するべきだろう。

■「平成のスポーツ」に押されている「昭和のスポーツ」

 ボクシングは昭和のスポーツである。否、正しく言うならば昭和の時代で日本のボクシングは時間が止まってしまっている。その証拠が日本ボクシングコミッション事件と言われる安河内剛氏の解任から始まるくだらない権力闘争だった。

 中には一部の選手たちにまで被害が及び、嘘八百によって亀田三兄弟は一時的に国外へ追われた。日本のスポーツは大抵、このような権力闘争から競技力そのものを後退させているという事例がある。これは語らなくても歴史がそれを証明している。後はトップが単純にやる気が無いだけだ。

 興業そのものも打ちづらくなっているしジムを経営するのにも楽ではない。ファイトマネーは基本的に現物支給である上に、チケット代は高い。どこかで仕組みを変えなければならないのだが、その仕組みを変える力さえJBCには残されていない。ジムがJBCへと収める「上納金」は必ずしも選手やジムへと還元はされないのだから。

 バスケは強引に変化したが、それでも2年目を迎えるBリーグは活気に満ちている上に、さらに上を求めて努力を重ねている。プロ野球Jリーグも。それぞれがそれぞれのステージでどうにかしようとする努力を重ねている。そのような方々には、敬意を表さなければならない。

 ボクシングに携わる人たちが努力していないとは言わない。だが、歴史は繰り返す。このままでは本当にボクシングが危ないのだ。だが、バスケのように上からの圧力で変化させることは未だできない。このままでは「昭和のスポーツ」としてどんどん追いやられていくだけだろう。

■それでも私がボクシングが好きだから、伝え続けるのだ。

 それでも私がボクシングが好きなのは、友人から見せてもらった「オスカー・デ・ラ・ホーヤ対アイク・クォーティ戦」がすごく格好良く見えたからだ。徳山昌守はいつでも格好が良かった。「はじめの一歩」はなんでこんなに面白いんだろうとアニメまで見た。

 21歳、学生新聞を作っているときにも一人でボクシングを見ていた。そこにはボクシングにしかない格好良さがあったからだ。八重樫対ポンサワンで八重樫の右ストレート3連発で泣き崩れそうになったし、内山高志対ホルヘ・ソリス戦では徐々に相手を追い詰める内山にただただ感動していた。

 ボクシングには物語がある。それをくだらない権力闘争によって潰すことはあってはならないし、何かしらの解決策があると私は今も信じている。そうであっても頭を悩ませるわけなのだが。私はそれが好きなのだ。

 私が今ここで言える事は、誰か一人でも良いので後楽園ホールなどに足を運んでもらい、チケットを買ってボクシングを見に行ってくれる人が一人でも増えてほしい。本当にそれだけなのだ。

 ボクシングを知らない皆様へ。ボクシングは良いよ。面白いよ。怖いかもしれないけれど、一度見に行ってみてください。

■お知らせ■

10/16にトークライブを行うことになりました。

20:00からで場所は阿佐ヶ谷駅から徒歩1分の「ろまんしゃ」というバーで行います。

喋る内容はミドル級について。月曜日という時間ではございますが、ぜひ足を運んでいただければ幸いです。

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