殴るぞ

色々と思いっきり話します。

強い相手との試合が決まらなかったことに対して、「逃げた」と安易に表現するの、やめませんか

 私が世の中で嫌いなものはたくさんある。例えば、文字を入力するだけでフリーズするパソコンやヤクルトスワローズ闘莉王イブラヒモヴィッチ。そして、当日になって飲み会に誘ってくるイベンター。あれ絶対ただの人数合わせのためで後でたんまりと金を絞り取るパターンだろうといつも思っている。

 ここ1年ずっとお誘いを受けているのだが、連絡を返したことは1度もないのに、懲りずに連絡してきているので、これからも頑張って無視し続けようと考えている。ブロックすれば一発なのだが。あ、ちなみに皆さん10月16日のトークライブにはぜひ来ていただきたい。

 話を本題に戻そう。私が更に嫌いなのは、強い相手と戦わないからと言ってすぐに「逃げた」という表現を使いたがるボクシングファンが多いことである。いや、もちろん強い相手と戦う選手には確かに魅力がある。八重樫東は井岡やローマン・ゴンサレスと言った強豪に挑んでいく姿で感動させたのは事実だし、マニー・パッキャオもそうやって英雄となったのだから。

 特にその表現を使いたがるのは、ディープなボクシングファンであることが圧倒的に多い。無論、空想はファンの特権なのだから強いもの同士で対決することを夢見ることが悪いと論じているわけでは無い。印象だけで語るというのが好きじゃないのかもしれないが。

■ディープなファンであればあるほど知っているはずの「対戦交渉」

 ボクシングの世界戦はまず、チャンピオンが対戦する相手を選択できる権利がある。各団体によっては、指名挑戦者との対戦義務を負うことが多いが、たいていはチャンピオンが選択する権利を持っている。つまり、チャンピオン陣営は防衛しやすい相手を選んでその後、その相手との交渉によって成立した上で初めて試合ができる仕組みになっている。

 これがテニスとかになると、世界ランキングが明確になるのだが、ボクシングの世界ランクは割といい加減なことも多い。1位だからと言って本当にそれ相応の実力があるかを正確に測ることができない(どこかのブログで1位だから強いと書いていた人も居たが)のである。各団体の総会でランキングを上げてほしいというプロモーターの要望(当然発言力ある人だったり交渉能力の高さが重要となる)や、指名試合についての議論などが行われることとなっており、どのような形でランキングが上下するのかも明確でないことが多いのだ。

 かつてWBA世界スーパーフライ級に挑戦した清水智信ウーゴ・カサレス戦を前にして、WBAランキングに入っていないことが判明した経緯がある。もちろんそのままでは世界戦ができないので、試合直前でWBA7位に入ったという経緯もあった。それだけいい加減なのだ。

 さて、対戦義務が生じる指名試合だからと言って選手たちが受ける必要もない、というのをご存知だろうか。対戦相手やチャンピオン陣営が「No」と言えば交渉は決裂する。特に交渉決裂したことによって、指名試合が回避されたケースもある。つまり、試合直前までは完全にビジネスの世界なのだ。それを知らないディープなファンはいないはずなのだが。

■競技に集中してほしいという気持ちも分からないでもない

 それがボクシングの醍醐味かと言われれば当然疑問は生じるが、複雑な事情が絡み合って結局実現できなかったというケースもある。もちろんそこには純粋に「強いから」という理由もあるだろうが、その理由が明確になっていないのに「逃げた」と発言するのはいささか違和感を覚える。

 例えば、ナジーム・ハメドWBOの指名挑戦者であったファン・マヌエル・マルケスから22か月間もの間指名試合をせずにマルケスから逃げ回っていたわけだが、これにはマルケスが対戦交渉ができなかったという事情もあった。アイク・クォーティはオスカー・デ・ラ・ホーヤと対決することを優先するあまり、WBA世界ウェルター級王座を追われた。WBA王座に挑戦する選手たちから「逃げていた」ことになる。

 上の事例は極端な例であるが、それを選手たちやプロモーターばかりに責任を負わせることに違和感を覚える。むしろ冷静に考えてそれを統括しなければならないのは世界王者のベルトを持っている各団体の責任の方がもっと重大ではないだろうか。選手やプロモーターの権限が強すぎる以上、これからも「逃げる」人は増えていくばかりだと私は思う。

 もちろん、選手たちはスポーツ選手であってビジネスマンではないのだから、プレーに集中してほしい気持ちも分からないではないのだが。

■例えば、リナレスはガルシアから逃げたのか?

 最後に事例だけ紹介しよう。ホルヘ・リナレスとミゲール・アンヘル・ガルシアはそれぞれWBC世界ライト級の王者である。日本のボクシングファンにも馴染み深いリナレスはWBCの休養王者からアンソニー・クローラの持つWBA王座を獲得したことを機に、WBCダイヤモンドベルトを獲得した。一方で、ガルシアはデヤン・ズラチカニンとの対戦でWBC王座を獲得した。

 通常では、休養王者となった後には正規王者との対戦義務が生じる。だが、休養王者復帰から1年経過した現在も、ガルシアとの対戦が実現されていない。果たして、どちらが逃げたのだろうか。

 交渉が上手く行っていないというのもあるかもしれないが、リナレスへもガルシアへも「逃げた」という風潮が見えない。本当はファンだってわかっているのではないだろうか。試合実現のためには交渉が必要である、ということを。

 よしんば本当に逃げているということが事実だったとして、その逃げる余地を与えている各競技団体のダブルスタンダードな状態は、いつまで続くのか。本質的な問題を考えなければ、いつまでも選手たちは逃げ続けることになるのだが。

■お知らせ■

10/16にトークライブを行うことになりました。

20:00からで場所は阿佐ヶ谷駅から徒歩1分の「ろまんしゃ」というバーで行います。

喋る内容はミドル級について。月曜日という時間ではございますが、ぜひ足を運んでいただければ幸いです。

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