殴るぞ

色々と思いっきり話します。

本田明彦帝拳ジム会長の発言は、現場で頑張るトレーナーや選手への最大級の侮辱である。

 山中慎介の記事を書き終わった後に出てきた記事に、怒りを覚えた。帝拳ジム本田明彦会長の発言だ。大和心トレーナーがタオルを投げたその判断に対して、「一瞬、魔が差したんだと思う。普通であれば試合を止めていいか聞いてくるはず。頭が真っ白になったんだろう」と大和トレーナーを批判したのだ。記事を読むと陣営の判断では無く大和トレーナー独自の判断だったとある。

 具志堅用高氏のストップが早いように思えたというのは第三者からの意見だからまだしも、ジムの会長が大和トレーナーの判断を腐すような発言をしてはいけないと思う。一番ミットを持ち、練習を共にしてきたパートナーが「これ以上の試合は難しい」と判断したことに対して、試合後に自分の思う判断をしなかったくらいで怒りを爆発させる姿は無様である。

 私が以前話したかったのは、「本田会長は選手のことを駒としか思っていない」ということだ。自分の思ったシナリオ通りに動けば良く、選手たちの命などどうでも良いとさえ思っているのだろう。今日、この記事で本田会長は本性を現した。

 だが、本田会長が本性を見せたのはこれが最初ではないのだ。5年前、本田会長は同じような発言をして尻尾を表していたのだ。

粟生隆寛vsガマリエル・ディアス戦で見せた粟生への怒り

 この試合を前後して、西岡利晃の当時日本では認められていなかったWBOタイトルマッチがアメリカで行われていた。そのすぐ後に、ガマリエル・ディアスとの防衛戦が組まれていた粟生。天才肌でムラがある粟生にとって、田中繊大トレーナーは欠かせないパートナーだった。しかし、西岡の試合のために渡米してしまう。

 大切なパートナーである繊大トレーナーを欠いた粟生は、結局コンディションを取り戻すこともないまま、ディアスに0-3で敗戦を喫してしまう。選手にとって、トレーナーが大事であるということは言うまでもないことだ。白井義男にカーン博士、ガッツ石松エディ・タウンゼント長谷川穂積に山下正人、内藤大助に野木丈司。この組み合わせを理解できぬまま本田会長は繊大トレーナーと粟生を引き離す。

 試合後に本田会長は怒り狂ったそうだが、どこからどう見てもトレーナーとの関係性を見ていなかった本田会長が引き起こした敗戦ではないだろうか。もちろん、粟生自身にも責任はあったのかもしれないが。

 自分にとって不利益になったとき、人は保身に走る。それは人の本能だろう。だが、目に見えて上に居る立場の人間が「悪いのは選手」と言って逃げたのは最低だ。

■本田会長は選手に愛情などないのではないか?

 粟生はその後、体重オーバーかつドーピングした状態で戦っていたレイムンド・ベルトランとの試合でも救済されることなく終わり、目立った活躍を見せていない(後にベルトラン戦はノーコンテストで終わっているが)。今回の判断も大和トレーナー一人のせいにしてまた逃げようとするのだろうか。

「展開は予想通り。2,3度倒れても結果KOで勝つという。コンディションは最高だった」と本田会長は言うが、それは戦法ではなくただの神風特攻隊の発想である。

 実際、帝拳ジムリング禍で選手を一名、亡くしている。辻昌建。彼の名前は山中のトランクスにも刺繍されている。その時にその選手を受け持っていたのは、大和トレーナーだった。大和トレーナーが下した判断は山中慎介というひとりの人間を家族の元へと返す、一つの立派な判断だった。

 本人がまだやれると感じていても、試合の後に来るダメージは相当なものだ。試合終了直後はまだアドレナリンが出ているから良い。しかし、互いを殴り合うこのスポーツが、試合を終わっても健全な状態でいられる保障などない。その大和トレーナーの判断を腐すことが、果たして会長のやることだろうか? また部下や選手たちに責任を押し付けて保身に走ろうとするのか?

 当時は亀田三兄弟というある意味で「仮想敵」がいたから良かったが、今回は誰も守ってはくれない。ただ、みっともない姿を世間に晒すだけである。

帝拳に最初から改革などできないのだ。

 その姿からは「愛」を感じない。普通ならば打たれた山中を心配し、大和トレーナーの判断が仮に早かったとしても、言葉を選ぶことだろう。命と隣り合わせのスポーツであるボクシングを誰よりも理解していなければならない会長が、ファンと同じ目線でどうするのだ。

 私は以前もこう書いた。「帝拳ではボクシング界を変えられない」と。選手に愛を持てないことを証明してしまった会長に、一体全体ボクシングの何を改革できるというのか。むしろ変えてきたのは、ファイティング原田さんがWBC王者へと挑戦したことでWBCも認可され、大橋秀行さんが統一戦やWBOIBF挑戦の機運を作り出し、先日引退した高山勝成さんがIBF王者となった。

 帝拳が日本ボクシング界で変えてきたことは何だろうか? 私の知る限りでは、一つとしてない。それもそうだろう。昨日本田会長が見せた姿は選手や現場を預かるトレーナーへの愛の無さだ。選手も興行も金にしか見えていないのだ。愛のない組織は崩壊するし、金儲けができたとしてもいずれはあぶく銭へと変わる。

 葛西裕一さん、田中繊大さん、大和心さん。退職されたが桑田勇さんに鈴木啓正さん。素晴らしいトレーナーさんたちだ。大場政夫さんや辰吉さんといった優れた方々によって。間違いなく彼らが帝拳の歴史を作ってきた。そして、山中やリナレスのような選手たちも。

 敬意を評さなければならない。だが、トップがそのような判断で、部下や選手たちを腐すようなことをする組織に業界全体の改革など無理だ。ブラック企業と一緒である。

 当然だろう。現場で頑張る人たちへの最大級の侮辱行為を本田明彦会長がやったのだから。

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