殴るぞ

色々と思いっきり話します。

帝拳ボクシングジムでは、日本のボクシングを変えられない

 この記事は書くかどうかですごく悩んだ。そう。時間にして20分くらいだろうか。誰かが書かなければならないだろう。そう思って、私はこの文章を書くこととしよう。

 田口良一の世界戦を深夜に見ながら、とてつもなく豪華なゲスト解説に驚いたものだ。長谷川穂積内山高志、そして亀田興毅。言わずと知れたボクシングを多少知っている方ならば聴いたことがある世界王者たちだ。そして、あることに気がついた。田口良一とおそらく年末にぶつかるであろう田中恒成、初の日本人同士で統一戦を行った井岡一翔八重樫東。ボクシング界において、その道のパイオニアと呼ばれた男たちは全てある部分に共通している。

 帝拳ボクシングジムの所属選手でないということだ。

 とてつもなくどうでも良いことかもしれない。だが、日本のボクシング界において帝拳ジムは黎明期から存在している日本で2番目に古いボクシングジムだ。そんなボクシングジムがボクシング界のパイオニアでないというのはいささかおかしな話だとは思わないだろうか。大場政夫を始めとする名王者たちを輩出してきた名門ジムが、である。

◆日本人初の世界王者は白井義男。彼は無所属だった。

 意外とボクシングファンでない人はご存じないことかもしれないが、日本人初の世界チャンピオンはボクシングジムに所属していなかった。故・白井義男氏はGHQ職員だったカーン博士の下で科学的トレーニングとボクシングスタイルの矯正を施されてダド・マリノから勝利を奪った。

 何でも、厳密な日本国籍を持っている人となるとファイティング原田氏を待つことになるのだが(これは知り合いから聴いた話なのだが、白井氏は在日韓国人だったのだそうだ)、彼が日本のボクシングジム所属選手で初めて世界王者となった選手である。原田氏の活躍により、日本人が初めて複数階級を制覇し、後にWBAWBCに団体が分裂してからというもの、彼が敵地でWBC王座に挑戦するということをきっかけにしてWBAだけでなくWBCも認めるという流れになった。

 つまり、近代ボクシング界のパイオニアは白井氏であり原田氏だったということになる。唯一パイオニアと呼べるとしたら、渡辺二郎氏のWBAWBCの王座統一戦だったのかもしれないが、これがボクシング界を変えたかと言われると疑問が残る。後に誰も続かなかったからだとは思うのだが。

 海外での防衛も渡辺二郎氏が最初に成功させたものだったが、これ以降の海外防衛は徳山昌守氏が2002年に行うまで17年以上も待つこととなる。そこから西岡利晃氏と三浦隆司が海外防衛を達成したのはもちろん素晴らしいことではあるのだが。

◆いつだって、ボクシングの歴史を切り拓いてきたのは「帝拳」では無かったという事実。

 確かに帝拳ジムは素晴らしい設備、環境、選手たちがいる。だが、率先して何か新しいことをやろうとする気概をいつも感じない。これほどまでに日本で大きな影響を与えているジムは存在しないにもかかわらずだ。確かに西岡も三浦も素晴らしい選手ではある。だが、彼らがパイオニアかと聴かれると首をかしげざるを得ない。

 海外でも日本人が戦えるということを初めて証明したのは、石田順裕であり高山勝成であり、荒川仁人だった。事実ベースで言うなら3階級の制覇を達成したのは亀田が初めてだったし、他団体の統一戦で戦おうという機運を高めたのは長谷川穂積だった(プロモートは帝拳だが)。日本人で初めての統一戦を行ったのは井岡一翔八重樫東だった。日本人選手も実力があるということを真っ先に証明したのは内山高志だったではないか。

 それっぽいことをしている印象にしか見えないのだ。西岡がラスベガスのメインイベントを張ったといっても、あの華やかなMGMではなく小さなアリーナだったし、三浦も決して期待されていたわけでは無かった。そもそも、帝拳は期待している選手にあれほど危険な防衛戦をさせることはない。西岡もあれほど新型インフルエンザで危機的な状況だったメキシコで防衛戦などさせるわけがない。ある意味で乗っかるのが上手い。それは「商売としてはうまい」だけであって、「目新しさ」ではない。華やかなメインイベントで言ったら木村章司クリス・ジョンと対戦しているのだから、別に最初というわけでもない。

 だから統一戦もやらないのだろうし、それっぽい試合をしてお茶を濁すだけなのだ。おそらくは、今後も山中慎介がどれだけ素晴らしい試合をしようとも他階級の統一戦をやれる訳がないのだ。本田会長にそんなリスクを負えるはずもないだろうから。

◆日本のボクシングの未来は帝拳にはない!

 今、世界王者が再び増えてきている。それだけ選手のレベルも向上している証拠だろう。ひとえに、優れた才能とその才能を育てるトレーナーたちの努力の賜物だと思う。本当にそう思うのだ。帝拳ジムは何度も言うように環境はとてつもなく素晴らしい環境にある。そして、帝拳プロモーションは優れた選手もプロモートしている。間違いなく日本ボクシング界のリードカンパニーだろう。

 だが、帝拳がやろうとしていることは「ボクシングへの貢献」ではなく、「自分たちだけの勝ち逃げ」にしか見えない。エキサイトマッチや、山中の世界戦。村田諒太という新たなるスター。確かに素晴らしい。だが、帝拳は決して他のジムと交わろうとはしない。一度として帝拳が大橋ジムや協栄ジムと連携を取ったことがあるだろうか。取る必要もないのかもしれないが、スポーツを普及させるための活動としてはあまりにもぶっきらぼうすぎる。

 いや、帝拳に期待する方が無駄なのかもしれない。というよりも、彼らにそれを求めることは決してフェアではないのだろう。

 日本からボクシングが消えてしまうかもしれないという危機の中で、今本質的な部分が試されている。この文章を書いている私だってそうなのだ。そのためにはボクシングに携わる人たちが盛り上げていかなければならない。本来ならば、それを率先して行うべきは帝拳ジムなのではないか、と思うのだが。どうやら私の期待はずれだったようである。

 いつもそうだ。私がいい方向に描いた予想は大抵外れる。

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