殴るぞ

色々と思いっきり話します。

比嘉大吾の勝利には名トレーナーあり。野木丈司の名を覚えておいて損はない。

 さて、今回の世界戦では村田諒太のことを何度か書いてきたが、新鮮な驚きもあったことは事実だ。比嘉大吾の世界戦は正しく新鮮な驚きであったことは言うまでもないだろう。今時のボクサーらしくない、良くも悪くもとんがった選手。日本にもこんなボクサーがいたのかという驚き。

 そのファイトスタイルは攻めて攻めて、そして攻める超攻撃型のスタイルで、何よりもパンチの威力がフライ級のそれではないのだ。筋肉が相当発達しているので、恐らくはそこに要因があるとは思うのだが、特徴がはっきりしている。

 ボクシング慣れしていない時点で井上尚弥村田諒太が好きな人からしてみれば、比嘉のボクシングは洗練されていない。一方で、とても綺麗な原石を見出したようなそんな感動も密かに覚えたものだった。

 さて、比嘉の所属しているジムは白井具志堅ジム。白井具志堅ジムというと、具志堅用高会長を思い出してしまいがちだが、もう一人忘れてはいけない名トレーナーがいることをボクシングファンであるならばご存知のことだろう。かつて内藤大助を世界王者に導いた野木丈司トレーナーである。野木トレーナーもまた、極めてとんがった経歴の持ち主であることは言うまでもない。

■ボクシングジムの垣根を越えてまでやってくる選手たち

 野木トレーナーの実績は凄い。難攻不落と思われたポンサクレック・ウォンジョンカムを倒した内藤大助の強化を始めとして、八重樫も野木の門下生だ。フィジカルトレーニングを基軸としたトレーニング方法で、他のボクシングトレーナーとも一線を画している人物である。

 ボクシングだけではない。総合格闘技所英男宇野薫HAYATOといった選手たちのトレーナーとして指導した一面もあり、名門である帝拳ジム葛西裕一氏や大橋ジムの松本好二氏らを始めとしてボクシング一筋で鍛え上げてきた人達と比較しても特殊な経歴と実績を持たれていると言われても不思議ではない。

 そんな「野木門下生」の特徴は、「長所を活かす」ことだと思う。内藤大助の変則的かつ強打を活かしたスタイル。高い身体能力を活かして、最後まで諦めず戦い抜く八重樫の激闘。そして、比嘉の強打を活かした攻めのボクシング。野木の特徴は洗練されたボクシングではなく、攻め抜くボクシングを貫かせることにある。得てしてそういうボクサーが世界的に有名になっていくものだ。

 整ったボクサーより、とんがったボクサーを。野木氏はそういう選手たちを育てるのに長けているのかもしれない。

■野木門下生とは野木丈司氏そのものなのかもしれない。

「優秀なトレーナーはたくさんいますが、この人と一緒にやりたい、ついていきたい、と心から思えるのが野木トレーナーなんです」と内藤は野木トレーナーのことを評する。厳しいトレーニングを課すが、それ以上に選手からの信頼も厚い。そして、ジムの垣根を払ってまで多くの選手に指導をするのは、現役時代にジムのトラブルで10年以上も試合をさせてもらえずに引退を決断したからなのか。

 そこでボクシングの道から一度離れても、恩師だった小出義雄監督が高橋尚子さんとオリンピック金メダル獲得を喜んでいたことからまた奮起してボクシングの道へと戻ってきた。野木氏もエリートではなかったのだ。

 決して内藤も比嘉もエリートではない。そんな彼らがリング上で見せる激しいファイトは、人の胸を打つ。己を証明するために、強いということを知らしめるために。彼の門下生たちに、自分の無念を投影しているのかもしれないと思うと、どこか切なくはなるが。

 そう見ても何ら不思議ではない。彼のボクシングとは野木氏そのものと思うと、また訴えかけてくるものも違って見えてくる。

■ジムの選手が世界を取ったことで「エディ・タウンゼント賞」も目の前か?

 そんなボクシング界にはトレーナーに贈られる最高の賞がある。藤猛海老原博幸柴田国明ガッツ石松友利正、そして井岡一翔の叔父にあたる井岡弘樹を世界王者に育て上げた名伯楽、エディ・タウンゼント氏から取られたエディ・タウンゼント賞である。

 エディ氏は他にも沢木耕太郎さんの「一瞬の夏」の主人公で知られるカシアス内藤、タレントとしても有名な赤井英和などを育てたトレーナーとして知られている。1990年からその功績を称え、名トレーナーに贈られる賞として名を冠している。松本氏や葛西氏を始めとして、田中栄民氏に大竹重幸氏、長谷川穂積とパートナーを組んだ山下正人氏に至るまで多くの名トレーナーが受賞してきた。

 しかし、野木氏はそれらとは未だ無縁。賞に興味があるかどうかは分からないが、やはりこれだけの実績を残してきた人なのだから、もっと評価されるべきだと思うのは私だけだろうか。もちろん、内藤も八重樫も所属ジムの選手ではないのだが。

 とするとだ。比嘉の世界王者獲得は、紛れもなくチャンスではないだろうか。野木丈司氏。新王者誕生の影には間違いなくこの男あり。もっともっと、ボクシング界では評価されていい。

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