殴るぞ

色々と思いっきり話します。

人間の限界とマラソンというレース

 マラソンの高速化が進んでいる。日本記録どころか、2時間6分台のタイムが記録されなくなって早くも15年経過するが、その間に世界では2時間5分はおろか2時間3分台の記録も破り2時間2分に到達している。

 先日、東京マラソンでウィルソン・キプサングが2時間3分を日本国内のレースで初めて記録し話題となったが、日本人は3分台どころか2時間7分を記録するのがやっとの状態となっている。かつて団体で獲得したメダルさえも遠のき、名ランナーたちと比較してトラック競技での成績は向上したがロードでは今ひとつ結果を出すに至っていない。

 かつてお家芸とまで呼ばれたマラソンがここまで低迷するとは。日本陸連の方々も予想外だったのではないだろうか。いずれにしても何かしらの改善が必要で、あれこれ手を打とうとする陸連の姿勢は見えるのだが、どうにも決め手に欠けてしまう。

 そうこうしているうちに、マラソン好きとしては大変興味深いプロジェクトを聞いた。5月6日、イタリアのモンツァ・サーキットでマラソン2時間切りプロジェクトが行われたのだという。IAAFから記録は公認されることはなかったようだが、とにかく2時間を切るというタイムトライアルが行われたそうだ。

 結果は2時間0分25秒。リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得したキプチョゲが2時間0分台の世界に到達した。結果として2時間切りは達成できなかったようだが、いよいよマラソンの高速化も来るところまで来ているというのが証明された形だ。

 ただし、今回はフラットで気象条件にも恵まれている場所、給水でのタイムロスもなく、ペースメーカーが立ち替わり入れ替わりで走行する。シューズも特殊なものだった(といってもマラソンの場合シューズの規定が曖昧なのは考慮すべきである)。このような、特殊な環境において一定条件が整っていたということは十分考慮に入れておくべきだろう。

 その上でもだ。人間が作り出してきた限界を突破する瞬間というのは個人的にとても興味深い。陸上とは至ってシンプルな競技であって、その中でもマラソンというのは原点でもある。100メートル走とはまた違った、ワクワク感とスリルを味わえるところにとても魅力を感じるものだ。

 アフリカ人選手が独占(主にケニアエチオピアだが)している世界のマラソン界で、それでも日本人選手たちは敢然と立ち向かっていかなければならない。確かに彼らはすごい。しかし、勝負の世界は必ずしもタイムだけで決まるわけではないから面白いのではないだろうか。すごい奴らに勝ったら、すごいのだ。

 アメリカのミネソタ州にあるメイヨー・クリニックのマイケル・ジョイナー医師は最終的に「人間は1時間57分58秒でマラソンを走る可能性がある」と1991年の時点で発言している。当時世界記録を持っていたベライン・デンシモは2時間6分50秒。おおよそ10分以上も速く走れる可能性を人は秘めているということだ。

 どんどん日本人が世界から遠ざかっていっている、と感じるかもしれない。確かに、アフリカ人選手の恐るべきポテンシャルの高さは凄まじいものがあることは事実である。純粋な身体能力だけでは、勝てないだろう。もちろん同じことをやっても勝てるわけではない。多分、同じ2時間切りプロジェクトをやっても、途中でガス欠するか、筋肉系のアクシデントが発生してしまうことだろう。

 世界のスピードを知ることはもちろん大切だが、そのスピードに打ち勝つためにどのようなアプローチをするのか。選手や実業団ごとに任せるのではなく、ぜひ瀬古利彦さんらを始めとするプロジェクトメンバーからの意見を聞いてみたいし、世界と戦って勝利してきた人たちの経験を活かすチャンスではないか。

 ここで言いたいのは「昔はこうだった」というありきたりな考えではなく、「昔はこうだったが、今にどう活用できるだろうか」という考え方だ。実際、距離を踏むということは論理として間違っているわけではない。事実、青山学院大学東洋大学では距離を踏むトレーニングを積極的に行っているのだから。それは駅伝を見ても効果は明らかだろう。

 その上で、怪我をしないために現代的なアプローチも採り入れていることは周知の通り。「青トレ」という本が出版されているように、ストレッチやバランスボールでのトレーニングを行うことで故障も防いでいる。また、早稲田大学でも故障しない身体作りから行うことで、昨年は青学の日本一を阻止しかけたことも記憶に新しい。

 当然、世界の陸上は進化を続けている。シューズ然り、ウェア然り。そして、選手たちの身体作り然り。だからこそ、こちらも負けじと進化していかなければならないのだ。特に最近は選手たちの向上心も素晴らしい。

 これからマラソンはもっと面白くなっていくだろう。1時間の世界まであと26秒。それでもそんな持ちタイムさえ関係ないからこそ、いつだってレースは面白いのだから。

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