続・村田諒太が世界王者になれない3つの理由
とうとう、決まった。プロデビューから早くも5年近く経過している中で、村田諒太の世界戦である。デビューしてからここまで無敗の男。しかし、個人的にはこれほどまでに希望も何も持てない世界戦というのも珍しい。八重樫東や井上尚弥、内山高志であれば湧いてくるようなワクワクドキドキ感が何一つとして、ない。
むしろ個人的には、ようやく日本でミドル級の世界レベルの選手を拝めることができるという事実に喜びを感じているくらいだ。ハッサン・ヌダム・ヌジカムがどれほどのファイターなのかを主眼として見たいと思っている。
金メダルというのは、銀に金メッキを付けることで作られるのだという。つまり、純粋な金ではないということだ。村田にはもう、その纏っていたメッキさえ剥がれてしまい、もはや金メダリストであったということが過去の遺物であることを証明しているようなものだ。
はっきり言おう。村田は世界チャンピオンにはなれない。いや、あるとしたら本当に1%くらいの確率ではないだろうか。理由を挙げれば切りがないが、今回は3つ理由を挙げたいと思う。
まず一つ目。「世界に挑戦をする時期が明らかに遅い」ということである。
よく考えて欲しい。ワシル・ロマチェンコはプロ2戦目で世界タイトルに挑戦し、3戦目で獲得している。ゾウ・シミンはプロデビューから2年で世界タイトルに挑戦、昨年11月にWBO世界フライ級王者となっている。アトランタ五輪で銅メダルを獲得した、フロイド・メイウェザー・ジュニアはデビューしたから2年で18試合もの試合をこなしながら実力をつけていった。オスカー・デ・ラ・ホーヤに至っては試合をしてから2週間後にまた、試合をしたことだってある。試合のスパンを短くし、かつ旬が過ぎる前に世界タイトルへと挑むことはごく自然のことだ。
しかし、村田がここまでに要した時間はプロデビューから4年。もちろん、対戦相手との交渉等によって試合の機会が少なくなることは十分に考えられるが、時間がかかりすぎなのだ。
また、村田の懸念材料として挙げられるのが、結局村田諒太のボクシングとは何かというサンプルが少ないこと。それゆえの「圧倒的な実戦経験の不足」。これが二つ目だ。
アマチュア時代に見せたタフなインファイトを捨てて、スタイリッシュなボクシングをしたい気持ちは分かる。それを身につけるために時間がかかるのも分かる。前述の通り、交渉があったということを差し引いても4年間で13試合では少ない。それ相応のトレーニングやスパーリングを積んできたと仮定しても、これでは実戦経験が少なすぎる。
例えば、アンドレ・ウォードは5年間で20連勝というキャリアを積んだ上で、Super Six World Boxing Classicに参戦してS.O.G.の名に恥じない実力を見せつけた。また、デオンテイ・ワイルダーは世界タイトルを取るまでの6年間で32試合の経験をきっちりと積んで世界に挑んだ。村田はどうだろうか。少なくとも、日本人選手と対戦して実力をつけるという方法もあったかもしれないし、トップランクに頼んで海外遠征をするというプランだってあっても良かったはずだ。最も、日本人選手が対戦を拒否していたのか、それともミドル級で戦える選手がいなかったというのなら話は別になるのだが。
結局、村田が果たして強いのか弱いのか、客観的に見て解りづらいというのも難点だ。むしろプロでの経験を積んできた中で「負けるという恐怖心を感じたことが無い」のではないか。これが3点目だ。
井上尚弥は、田口良一との試合でKOを収めることができなかった。もちろん、彼のテクニックの素晴らしさを味わう試合となったわけだが、井上はきっと、あの試合で田口の意地と油断すれば負けるという恐怖心を味わった気がしてならない。八重樫はプロ7戦目でイーグル京和に顎を折られて判定負けを喫した。ローマン・ゴンサレスにも意地を見せたが敗戦した。だが、その経験や負けるという恐怖心は確実に井上や八重樫を強くしていると私は思う。
西岡利晃はウィラポン・ナコンルアンプロモーションに4回もベルト獲得を阻まれた。そんな中でも、ジョニー・ゴンサレスから強烈なKO勝利を奪ってみせた。長谷川穂積は4回戦時代に2回も判定負けを喫した。それでも、強敵と言われたジェス・マーカを破ってウィラポンに挑み、勝利した。
村田にそれだけの恐怖心を味わった試合があるだろうか。もしかしたらあるのかもしれないが、少なくともそのような試合を私は一度も見たことがない。そう、村田諒太のキャリアで、世界王者になるまでの物語を感じたことがないのだ。淡々と進んでいるだけで、さながらどうすればクリアできるかわかっている、パワプロクンポケットのサクセスのようなものなのだ。
思うと、田口は井上の噛ませ犬扱いされながらも、現在はWBA世界ライトフライ級王者になっている。三浦隆司も内山高志との敗戦がなければ、ここまでエキサイティングな選手になることはできなかったかもしれない。コウジ有沢に勝利して世界王者へと駆け上がっていった畑山隆則も、何度も惜しい判定に泣かされた坂田健史も。世界王者となるボクサーにはそれぞれの物語がある。
村田はどうだろうか。アマチュアボクシングで戦っていた時の村田は、もっとぎらついていた。何よりも物語を感じられる男だと思ったのだが、この5年間でその物語もどこか霞んでしまっている気がしてならない。私の期待はずれだった、とするならばそれまでだが。
金メッキは剥がれてしまった。それは村田がこの試合に挑む難しさそのものである。
挑戦の否定はしない。むしろ挑んで欲しい。だが、その壁は余りにも厚いということを村田諒太は果たして自覚しているのだろうか?
もし、それが無いのならば。答えは一つだ。
終わり。ゲームオーバー。
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