殴るぞ

色々と思いっきり話します。

【浦和レッズ】ブランコ・イリッチ「窓際の席のサトウさん」

 昨日書いたエントリーで、「イリッチっていたのかよと突っ込みたくなる」という一文を記載した。それが影響したとは言い切れないが(99.9%ないだろうと信じたい)、ブランコ・イリッチの退団が決定した。新たな新天地は母国スロベニアの強豪クラブであるオリンピアリュブリャナ。ヨーロッパや中央アジア、ロシアといった様々な国でプレーした貴重なバックアッパーは、とうとうその能力を発揮することができないまま故郷に帰ることとなってしまった。

 Jリーグでも活躍したズラタン・リュビヤンキッチミリヴォイェ・ノヴァコヴィッチとは、南アフリカで国を背負って戦った仲として知られる。来日前も浦和で同僚となるズィライオから日本についての知識を吸収するなど、意欲も豊富だったスロベニア人。

 でも、多くのサポーターさんからしてみれば「あいつ誰だよ」状態である現状。来日してからケガがちでリーグ戦での出場は0試合。これでは誰にも覚えてもらえないだろう。というか、逆に新鮮で覚えている人も多いような気がする。

 さて、結果としてイルハン王子真っ青の結果となってしまったイリッチ。いつだって外国人選手は活躍するかどうかは一種の賭けとなる。セレッソ大阪ディエゴ・フォルランを獲得してもうまくいかなかったように、サッカーのスタイルやチームの状況。本人の性格やコンディション、結局フィットしないまま終わってしまうケースだってある。特に外国人選手の場合は特別扱いになってしまったり、活躍しなければすぐにやり玉にあがったりと何かとストレスも多いはずだ。だからこそ、外れるかどうかを度外視するよりもまずは温かい目で見てあげることも肝要なのだろう。

 そして、思うのだ。これって、転校生の扱いに良く似ていると。

 転校生はまず、ちやほやされる。「どこから来たの?」、「前の学校はどうだった?」

、「好きな食べ物は?」、「趣味は何?」話は尽きないものなのだ。最初の数週間は、それこそ助っ人外国人張りに大切に扱われる「お客さん」として、もてなされる。

 そのうちに溶け込んでいけば、なんてことはないただの友人となるわけだが、時たま馴染むことができなかったり疎外されたりする。ところで何の話かって言われると、これはサッカーの話である。そう、つまりは外国人選手をはじめとして移籍してきた選手は転校生のようであるということだ。なぜか。そこには知らない情報がたくさんあふれているからだ。

 今から15年以上も前のことだ。小学生の時にサトウさんというかわいい女の子が転校してきた。直接話した機会はないし、どういう子だったのかはすっかり頭の中から消えてしまっているのだが、窓側の席に座っていた印象がある。イリッチからはそんな印象を受ける。

 我々からすればカザフスタンスロベニアもよくわからない未知の国。そもそも、スロベニアで知っているのはコレンとズラタンノヴァコヴィッチハンダノヴィッチくらいなものだ(それだけ知っていれば、充分か?)。そんなところからやってきて、結局最後まで分からないままいなくなっていた。サトウさんもそんな感じだったなあ、なんて思うのだ。結局彼女は1学期の終わりに転校してしまい、さようならも言えないまま彼女は学校を去ってしまったのだった。

 彼女の行方は、知らない。イリッチは、故郷へ帰ることとなった。サトウさんとイリッチは全然関係ない。というか、彼女がサッカー好きだったかどうかというのも一切分からない。

 でもこれ、割とレッズには痛いニュースであると思う。ただでさえ貴重なCBのバックアッパーがこのタイミングで退団してしまうのは、余りにも痛い。ケガがあったことと30半ばという年齢があったとはいえ、浦和のCBは層が薄すぎるのだ。宇賀神や阿部が一応は務められるとはいえ、やはりここでは本職の選手がいてくれた方が安心するというもの。

 そして思うのだ。イリッチがいたこの1年間、彼がいたからこそ浦和は幸せでいられたのではないかと。永田充加賀健一という保険があったからというのもあるが、何よりもスロベニア代表という神秘的なベールに包まれた外国人選手が、その真の実力を見せないというストーリー。「新しく来る転校生はどんな子かな?」と、そわそわしながら待つ朝のホームルーム前。

 つまり、イリッチとは転校生であり、さようならを言えずに去って行ったサトウさんだったのである。彼が怪我することなくプレーできていれば、彼は故郷へと帰ることはなかったかもしれない。悲しいかな、運命は微笑まなかった。結局私たちはイリッチのこともサトウさんのこともよくわからないまま、共に過ごした時を終わらせることとなってしまったのである(サトウさんのことを知らないのは当たり前である)。

 力になれず申し訳ないと最後にコメントしたイリッチ。最後にさようならを言えたことは、良かったと思っている。

 サッカーという競技は、野球と比較しても移籍市場が大きく動く。もちろん規模が大きいからだが、それだけ出会いと別れが多くあるということだ。私はちなみに転校も引っ越しもしたことがない。

 だからこそ、別れのときにはどうしても感傷的になってしまうのかもしれない。最後の最後までその魅力を伝えることなく去って行ったイリッチは、さぞ無念だったことだろうと。もちろん、それがプロスポーツであるということはわかってはいるのだが。

 CBの層に関する不安は言われなくとも分かっているから良いとして、今はとにかく別れを惜しもうと思う。グッドラック、イリッチ。サトウさんによろしく。

 って、知ってるわけないか。サトウさん、お元気ですか。

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